相続放棄で注意したい5つのこと
相続対策は一般的に「相続税対策」・「節税対策」・「争族対策」に大まかに分けられます。
最も大切なのは「争族対策」であると私は考えますが、今日ご紹介する「養子縁組」は「節税対策」の一つとして取り上げられているものの一つです。
養子縁組制度はどんな制度?
養子縁組というと、婿養子や再婚した妻の連れ子を養子にするといったイメージが一般的でしょうか。
実は養子縁組は、「普通養子縁組」と「特別養子縁組」という二つの制度の分かれています。
特別養子縁組は耳慣れないかもしれませんが、虐待や親の病気、経済的理由などで生みの親と一緒に暮らせないといったような事情を抱える、原則6歳未満の子について、その「子供の福祉を守るため」という目的があります。
これに対して普通養子縁組は、「家」の存続のためというのが主な目的です。
これら二つの養子縁組ですが、目的の他にも大きな違いがあります。
それは相続の権利と縁組のための手続き方法です。
相続の権利の違いは?
普通養子縁組 : 養父母と実親双方から相続する権利がある
特別養子縁組 : 実親から相続する権利は無くなる
縁組のための手続き方法の違いは?
普通養子縁組 : 当事者の合意(契約)により成立
特別養子縁組 : 6ヶ月の試験養育期間と家庭裁判所による審判が必要
相続対策で用いられるのは普通養子縁組。その条件とは?
相続対策で行われる養子縁組は普通養子縁組です。
その根本にある考え方は「相続人を増やす」という考え方で、お孫さんや子供の配偶者を養子にするという方が多いと思われます。
未成年者の養子縁組も可能ですが、一定の条件があります。
未成年者を養子に迎える側の条件
(1)原則、未成年者を養子とする場合は、家庭裁判所の許可が必要
(2)自分の子や孫、配偶者子や孫などを養子とする場合は、家庭裁判所の許可は必要なし
養子に入る未成年者側の条件
(1)未成年者であっても15歳以上であれば実父母の承諾を得ることなく単独の意思で養子になれます
(2)15歳未満の場合には実親の承諾が必要となります
なお、叔父や叔母といった尊属(養親となろうとする者より上の世代の血族)は養子になる(する)ことはできません
普通養子縁組の手続きは?
養子縁組の手続きは、手続き書類が各市町村役場に備え付けられていますので、比較的簡単に手続きが可能です。
ただし、養親になる人、養子になる人、証人2名の署名押印が必要です。
証人は、養子縁組の事実を知っている 20 歳以上の人であれば家族でなくとも知人・友人など誰でも構いません。
養子縁組による節税効果
相続税に関して一番初めに気にするところは基礎控除の部分でしょう。
現在の基礎控除は『3000 万円+(600 万円×法定相続人の数)』となっています。
養子縁組により「法定相続人の数」が増えることで、基礎控除額が600万円増加することになります。
養子縁組はその他に、死亡保険金や死亡退職金の非課税限度額計算にも効果があります。
死亡保険金・死亡退職金の非課税限度額 : 500万円×法定相続人の数
こちらの場合は、非課税限度額が500万円増加することになります。
ただし、実子がいる場合には、養子が何人いても基礎控除や非課税枠の計算に加えられる養子の数は 1 人だけです。
実子がいない場合であれば、2 人まで加えられるます。
また、養子が相続税を納付する場合、相続税の計算上、相続税が2割加算になるので注意が必要です。
養子縁組は慎重に!
養子縁組に節税効果があるからといって、安易にその制度を使うことには慎重になるべきでしょう。
なぜなら、あたり前の話しですが養子縁組は節税のためにある制度ではないからです。
そもそも養子縁組には目的や理由が必要です。
大雑把に言えば、
・自分と一緒に暮らしてくれている孫が実の子供のようにかわいい、とか、
・将来お墓を守ってくれる孫に自分の財産を残したいとか、
・自分の面倒を見てくれている長男の妻に少しでも報いてあげたい
などといった、社会通念上当然考えらる感情であろう、と思えるものだと言われています。
また、節税ができるからといって養子縁組を行なって相続人を増やすことで、実子との相続争いになる可能性も生まれてきます。
いずれにしましても、相続対策として養子縁組をご検討される場合には、必ず我々のような専門家にご相談ください。