空き家をゲストハウスに活用できる?事業を始める前に確認したい7つの条件
親が亡くなり、兄弟姉妹で実家を相続することになった場合、
「とりあえず全員の共有名義にしておこう」
「売却するか決まってから考えればよい」
「平等に持分を分けた方が揉めない」
と考えることがあります。
しかし、利用する予定のない実家を兄弟姉妹の共有名義にすると、売却、賃貸、解体、修繕などの場面で意見がまとまらず、空き家のまま長期間放置される可能性があります。
相続開始後、遺産分割が行われていない不動産は、原則として相続人が法定相続分に応じて共有している状態になります。遺産分割協議によって、誰が実家を取得するのかを決めることができます。
今回は、兄弟姉妹で相続した空き家を共有名義にした場合に起こりやすい問題と、共有状態を長期化させないための考え方を解説します。
1.実家全体を売却するには共有者の合意が必要
共有名義の不動産について、共有者の一人が自分の判断だけで建物と土地の全体を売却することはできません。
共有物全体を売却することは処分に当たるため、原則として共有者全員の同意が必要です。共有物の変更や処分には全員の同意が必要である一方、管理に関する事項は持分価格の過半数、保存行為は各共有者が単独で行えるという基本的な区分があります。
例えば、兄弟3人で共有している実家を売却したい場合、2人が賛成していても、残りの1人が反対すれば、そのまま不動産全体を売却することは困難です。
反対する理由は、必ずしも金銭面だけではありません。
* 親との思い出が残っている
* 将来自分や子どもが使うかもしれない
* 提示された売却価格に納得できない
* 売却代金の分配方法に不満がある
* 他の兄弟との関係が悪化している
こうした感情や事情が絡むと、売却条件を調整するだけでは解決できないことがあります。
2.管理費や修繕費の負担で揉めやすい
空き家を所有していると、利用していなくても費用が発生します。
主な費用には、次のようなものがあります。
* 固定資産税、都市計画税
* 火災保険料
* 庭木や雑草の管理費
* 建物の修繕費
* 水道や電気の基本料金
* 遠方から確認に行く交通費
* 家財や残置物の処分費
* 将来的な解体費
兄弟3人が同じ持分であれば、費用も3分の1ずつ負担するという考え方があります。
しかし、実際には、
「自分は実家を使っていないので払いたくない」
「近くに住んでいる人が管理すればよい」
「売却に反対している人が負担すべきだ」
「長男が実家を引き継ぐものだと思っていた」
といった意見が出ることがあります。
一人が税金や修繕費を立て替え続けても、他の共有者から確実に回収できるとは限りません。
誰が、どの費用を、どの割合で負担するのかを決めないまま共有状態を続けると、不公平感が蓄積しやすくなります。
3.修繕、賃貸、解体の判断が進まない
共有不動産では、行為の内容によって必要となる同意の範囲が異なります。
建物の状態を維持するための緊急修繕など、保存行為に当たるものは、一人の共有者でも行える場合があります。
一方で、大規模な改修、用途変更、長期間の賃貸、建物の解体などは、内容によって共有者全員の合意が必要になる可能性があります。
例えば、一人が、
「修繕して賃貸住宅として貸したい」
と考えても、別の共有者が、
「費用をかけず、現状のまま売却したい」
と考えていれば、計画は進みません。
話し合いに時間がかかる間にも、建物の劣化は進みます。
雨漏りや外壁の破損を放置した結果、当初は小規模な修繕で済んだものが、大規模な工事を必要とする状態になることもあります。
4.一部の共有者だけが利用すると不公平感が生じる
相続後、一人の兄弟だけが実家に住み続けたり、物置として使用したりするケースがあります。
この場合、利用していない共有者から、
「一人だけが無償で使用している」
「家賃相当額を支払ってほしい」
「固定資産税や修繕費は使用している人が負担すべきだ」
という不満が出ることがあります。
反対に、実家を使用している人からは、
「自分が建物を管理している」
「修繕や庭の手入れを負担している」
「親の介護も自分が行っていた」
という主張が出るかもしれません。
家族間では、利用料や管理費について正式な取り決めをせずに使用を始めることが多いため、後から金銭問題へ発展しやすくなります。
共有者の一人が使用する場合は、使用期間、費用負担、修繕、退去条件などをあらかじめ書面で整理しておくことが重要です。
5.共有持分だけを第三者へ売却される可能性がある
共有者は、原則として自分が所有する共有持分を処分できます。
そのため、兄弟の一人が資金を必要としている場合や、相続問題から早く離れたい場合、自分の共有持分だけを第三者へ譲渡する可能性があります。法務省の共有制度に関する資料でも、共有者による持分の譲渡や持分移転登記が想定されています。
共有持分だけを購入する一般の個人は多くありませんが、共有持分を専門的に扱う事業者へ売却されるケースがあります。
第三者が共有者になると、家族内の話し合いではなく、経済的な交渉として対応しなければならなくなる可能性があります。
持分の買取りや不動産全体の売却、共有物分割などを求められ、残った兄弟が想定していなかった対応を迫られることもあります。
「兄弟だから勝手に売ることはない」と考えず、共有状態をどの程度の期間続けるのかを決めておくべきです。
6.共有者が亡くなると権利関係がさらに複雑になる
兄弟姉妹による共有状態を長期間続けている間に、共有者の一人が亡くなることがあります。
その共有持分が配偶者や子どもへ相続されると、共有者の人数がさらに増えます。
当初は兄弟3人だけで話し合えばよかったものが、次の世代では5人、10人と増える可能性があります。
共有者が増えるほど、
* 連絡先が分からない
* 遠方や海外に住んでいる
* 面識のない相続人がいる
* 意見を確認できない
* 売却条件に合意できない
といった問題が起こりやすくなります。
相続登記が行われないまま相続が繰り返されることは、所有者不明土地が発生する原因の一つとされています。相続登記は2024年4月1日から義務化されており、不動産を相続したことを知った日から3年以内の申請が原則です。
共有関係は、時間が経過するほど自然に解決するのではなく、複雑になる可能性が高い問題です。
7.共有名義にしても問題を先送りしただけになる
兄弟間で結論が出ないため、とりあえず共有名義にすることがあります。
しかし、共有名義にしても、実家を今後どうするのかという問題が解決したわけではありません。
次の判断を将来へ先送りした状態です。
* 誰が実家を使用するのか
* 誰が管理するのか
* 費用を誰が負担するのか
* 売却するのか
* 賃貸や事業に活用するのか
* 解体するのか
* いつまで共有状態を続けるのか
相続時には関係が良好でも、結婚、転居、退職、病気、死亡などによって、それぞれの事情は変わります。
共有名義を選択する場合でも、期限や出口を決めておく必要があります。
共有状態を解消する主な方法
兄弟姉妹で共有している空き家については、主に次の方法が考えられます。
一人が実家を取得する
実家を利用したい相続人が単独で取得し、他の相続人には預貯金などの別の財産を配分する方法があります。
他に十分な相続財産がない場合は、実家を取得する人が、他の相続人へ代償金を支払う方法も考えられます。
ただし、代償金を支払う資金が必要です。
不動産全体を売却して代金を分ける
共有者全員が売却に合意し、売却後の代金を持分や合意内容に応じて分配する方法です。
誰も実家を利用する予定がない場合は、比較的整理しやすい方法です。
売却価格、残置物処分、測量、解体、仲介手数料などの費用負担も事前に決めておきます。
土地や建物を分ける
土地の広さ、接道、建物の配置などによっては、土地を分筆して、それぞれが取得する方法もあります。
ただし、分筆によって土地が使いにくくなったり、資産価値が下がったりする可能性があります。
すべての不動産で利用できる方法ではありません。
共有持分を他の共有者へ譲渡する
共有者の一人が、自分の持分を他の兄弟へ売却または贈与し、所有者を集約する方法です。
譲渡価格、贈与税、譲渡所得税、登録免許税などの確認が必要になる場合があります。
裁判所を通じて共有関係を解消する
話し合いで共有関係を解消できない場合、共有物分割請求を検討することがあります。
民法上、共有者は原則として共有物の分割を請求できる仕組みになっています。
ただし、裁判手続きには時間と費用がかかり、兄弟間の関係にも大きな影響を与えます。
最初から裁判を前提にするのではなく、まずは弁護士などを交えて協議することが必要です。
相続時に決めておきたいこと
共有名義を避けるためには、相続が発生した時点で、次の事項を整理します。
1. 実家を利用したい相続人がいるか
2. 売却する場合の想定価格はいくらか
3. 建物に修繕や解体が必要か
4. 固定資産税や管理費はいくらか
5. 家財を誰が整理するか
6. 単独で取得する人に代償金を支払う能力があるか
7. 賃貸や事業利用の可能性があるか
8. いつまでに方針を決めるか
相続登記については、不動産を取得したことを知った日から3年以内の申請が必要です。また、遺産分割成立後に取得者が決まった場合は、遺産分割成立日から3年以内に、その内容を反映した登記を申請する義務があります。
期限内に遺産分割がまとまらない場合には、相続人申告登記によって基本的な申請義務を履行する制度もあります。ただし、相続人申告登記だけでは不動産の売却や抵当権設定はできず、別途、相続登記が必要です。
まとめ
兄弟姉妹で実家を共有名義にすると、平等に相続したように見えます。
しかし、実際には売却、賃貸、改修、解体、費用負担などの判断に複数人の意向が関わるため、空き家問題が長期化しやすくなります。
特に注意したいのは、次の7点です。
1. 不動産全体の売却には共有者の合意が必要
2. 管理費や修繕費の負担で揉めやすい
3. 賃貸、改修、解体の判断が進まない
4. 一部の共有者だけが利用すると不公平感が生じる
5. 共有持分が第三者へ譲渡される可能性がある
6. 相続が繰り返されると共有者が増える
7. 問題を将来へ先送りしやすい
誰も実家を利用する予定がない場合は、安易に共有名義を選択するのではなく、売却、単独取得、賃貸、活用、解体などを比較したうえで、所有者をできるだけ集約することが重要です。
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※本コラムは、相続不動産や共有名義に関する一般的な情報をまとめたものです。必要な同意、税務、登記、遺産分割、共有物分割などの判断は、個別の権利関係や行為の内容によって異なります。具体的な手続きについては、弁護士、司法書士、税理士などへご確認ください。


