事前準備が技術者を支える

葛井信行

葛井信行

テーマ:技術、設計、業務

営業から「客先に同行してほしい」と頼まれ、大いに困ったことがあります。
私にとっては初めて訪問する顧客です。しかも、何の件名で訪問するのかさえ分かりません。
依頼してきた営業マンに尋ねても、「とりあえず来てください。顔見せでいいので」という返事しかありませんでした。
仕方がないので、ほとんど何も分からないまま訪問することになりました。

■ 客先で待っていたのは、詳細な技術の話

ところが、実際に客先へ行ってみると、話は「顔見せ」どころではありません。
顧客からは、具体的な仕様や技術的な内容について、かなり詳細な話が出てきました。
しかし、こちらは案件の全体像を把握していません。
何か質問をされても答えようがない。というより、こちらが分からないことだらけなのです。
顧客からすれば、営業と技術の両方がそろって訪問しているのですから、「その場で技術的な回答をもらえる」「具体的な検討や打ち合わせができる」と考えるのは当然です。
営業だけの訪問であれば、「技術的な部分については、社内で確認して後日回答します」と言うことができます。
逆に技術者だけの訪問であれば、「費用の問題もありますので、実現可能かどうかは社内で検討してから回答します」と、即答を避けることもできます。
しかし、営業と技術がそろって訪問すれば、そう簡単にはいきません。
その場で回答を求められる場面が増えるからです。

■ 技術者として訪問するなら、準備が必要

技術者が客先へ同行するのであれば、少なくとも訪問前に、その案件についてある程度の情報を共有してもらう必要があります。
例えば、
  • 今回の訪問の目的は何なのか
  • 顧客は何を求めているのか
  • どのような製品・技術が対象なのか
  • おおよその費用はどの程度を想定しているのか
  • 納期やスケジュールはどうなっているのか
  • 技術的に問題になりそうな点は何か
  • こちらから提案できることは何か
といったことです。
もちろん、事前にすべてを把握することはできません。客先で初めて分かることもあります。
それでも、「何も分からない状態で行く」のと、「分かっている範囲を整理してから行く」のとでは、結果が大きく違います。

■ 技術的な打ち合わせは「戦い」でもある

技術者にとって、顧客との仕様打ち合わせは単なる情報交換ではありません。
顧客の要望を聞き、それを実現する方法を考える。一方で、顧客の要求をそのまま受け入れるのではなく、コストや納期、技術的なリスクなどを考慮しながら、こちらにとっても無理のない方法へ導いていくことが必要です。
顧客の意向を尊重しながら、こちらが希望する方法で進められれば理想的です。
その意味では、技術的な仕様打ち合わせは、ある意味「戦い」なのかもしれません。
だからこそ、何の準備もせず、丸腰で出かけてはいけない。
相手がどのような要求をしてくるのかを想定し、それに対する回答や代替案を準備しておく。
必要であれば、こちらから質問する内容も整理しておく。
そうして初めて、対等な立場で打ち合わせを進めることができます。

■ 「とりあえず行く」ではなく「準備して行く」

営業にとっては、「まずは顔を出して、話を聞いてみよう」という訪問もあるでしょう。
しかし、技術者が同行するのであれば、それだけでは済まない場合があります。
技術者が参加することで、顧客の期待値も上がります。
「技術担当者が来ているのだから、その場で話が進むだろう」と考えるからです。
だからこそ、営業と技術の間で事前に情報を共有し、訪問の目的を明確にしておくことが大切です。
これは客先に対する礼儀というだけではありません。技術者自身が、自分の力を十分に発揮するためにも必要なことです。
経験を積んだ技術者であっても、何の情報もなく突然質問をされれば、適切な回答はできません。
「事前準備」というと、資料を用意したり、技術的な検討をしたりすることを思い浮かべます。
しかし、本当の事前準備とは、「何のために、その場へ行くのか」を理解することから始まるのではないでしょうか。

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Mybestpro Members

葛井信行
専門家

葛井信行(電気技術コンサルタント)

オフィスKZI

ファクスのメンテナンスやセキュリティー機器、エンクロージャーなどの設計業務に45年従事。培った電気技術の知見を研修やコンサルティングで中小企業や個人事業主に還元し、社員教育や新規事業立ち上げを支援する

葛井信行プロは三重テレビ放送が厳正なる審査をした登録専門家です

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