肥満は万病のもと (生活習慣病の引き金 肥満 その1)
よく人間ドックやテレビなどでも耳にするメタボですが、肥満症と同じなのでしょうか?実は、肥満症とメタボは、どちらも肥満のために起こる病気で、重なりある部分も多いですが、少し異なっています。
肥満症って?
“肥満”は、脂肪組織が過剰に蓄積した状態であって、疾患を意味するものではありません。一方、“肥満症”は、BMIが25以上で、肥満に起因あるいは、肥満による健康への悪影響があるか、そうした障害が予想される内臓脂肪が過剰に蓄積したケースのことを言います。この場合、減量治療を必要とします。肥満は、疾患ではありませんが、肥満症は疾患であり、医学的に治療が必要となります。
肥満による健康への悪影響とは?
肥満は、睡眠時無呼吸症候群、高血圧症、脂肪肝、胆嚢疾患、膵炎、変形性膝関節症、腰痛症、脳血管障害、心肥大、心不全、心臓血管障害、乳癌、2型糖尿病、高脂血症、痛風、大腸癌、卵巣機能障害、子宮体癌、月経異常などの病気の原因になっています。
メタボと肥満は、違うの?
メタボは、メタボリックシンドロームの略で、肥満症の1つで、別名を内臓脂肪症候群とも呼ばれます。特徴としておなかの出っ張りがあり、中年男性によくみられます。内臓脂肪が多くて糖尿病をはじめとする生活習慣病になりやすく、心臓病や脳などの血管の病気につながりやすい状況をいいます。ただ太っているだけでは、メタボリックシンドロームとは呼びれません。
メタボの診断基準
診断には、内臓脂肪面積が100cm²以上(腹部CTで内臓面積)のときに内臓脂肪型肥満と診断されます。一般的には臍の高さで腹囲で代用され、男性は85cm以上、女性は90cm以上あることが内臓肥満の指標となります。
内臓脂肪面積が100cm²以上加え、下記①から③の基準のうちいずれか2つ以上が当てはまると、メタボリックシンドロームと診断にされます。
①血圧(収縮期130mmHg以上かつ(または)拡張期血圧85mmHg以上)
②空腹時血糖値 110mg/dl以上
③脂質(中性脂肪150mg/dl以上かつ(または)HDLコレステロール40mg/dl未満)
これは、内臓脂肪が多くて糖尿病をはじめとする生活習慣病になりやすく、心臓病や脳などの血管の病気につながりやすい状況をいいます。
肥満症とメタボの違いは?
肥満症は、肥満に伴って生じる病気として治療の対象になります。具体的には、糖尿病や高脂血症や高血圧や動脈硬化、動脈硬化による心臓病・脳卒中などが合併した場合が治療すべき主な対象ですが、それに加えて、高尿酸血症、脂肪肝、関節症、腰痛症、睡眠時無呼吸症候群、女性における月経異常などが合併した場合も含まれます。これらの病気は、内臓脂肪だけでなく、むしろ皮下脂肪が過剰に溜まっていることが、大きな影響を及ぼしていることが多くあります。ですから、皮下脂肪型肥満も含めた「肥満」を見つけるのに役立つBMIが優先されます。
一方、メタボリックシンドロームの治療は、動脈硬化の進行を抑えて心筋梗塞や脳梗塞を防ぐことです。動脈硬化の進行とより密接に関係している内臓脂肪型肥満を見つけるための腹囲(ウエストサイズ)が判定として優先されます。
肥満症もメタボリックシンドロームも医学的には疾患(病気)に該当します。つまり、単に‘太っている’では済まされずに、治療が必要な状態です。
メタボリックシンドロームの人は、どんな病気につながるの
メタボリックシンドロームの方は、そうでない人と比べて、2型糖尿病になるケースが3〜6倍、心血管疾患とそれによる死亡のリスクが1.5〜2倍になると言われています。また、非アルコール性脂肪肝、抗尿酸血症、腎臓病、睡眠時無呼吸症候群といった病気にもつながります。自覚症状がないことが多いですが、放置しておいてよい状態ではなく、適切な運動や食事療法による体重管理・血圧や血中脂質、血糖値のコントロールを行うことが必要です。
5~10%の体重減少でも、メタボリックシンドロームに伴う状態(高血圧・脂質異常・高血糖)を改善させたり、糖尿病の発症を予防したりします。ダイエットは有効です。
また、タバコは動脈硬化を進行させ、心臓・血管の病気をおこしやすくします。禁煙もとても重要です。一方で、必要な場合は、薬による治療を適切な時期に開始し、危険因子を管理することも大切です。
生活習慣病以外で鍼灸治療は、どのような疾患(症状)に効果があるの?