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松木前議員に偽装献金=親族企業が2億円所得隠し―国税調査

2014年1月15日

テーマ:脱税を斬る

コラムカテゴリ:法律関連

参考リンク1:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140112-00000046-jij-soci
参考リンク2:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140111-00001196-yom-soci

参考リンクのニュースは民主党の元農水政務官松本謙公前衆議院議員に偽装献金疑惑というニュース。
私が取り上げたいのは、偽装献金の方よりも、松本前議員の親族企業にされた追徴課税について。
この所得隠しのスキームは、まず、松本前議員の親族の企業グループが、①その役員に役員報酬を出す、②その役員報酬の一部をプールする、③そのプールした資金を他人の名義を借りて松本前議員の政治団体に寄附をする、④一部の名義を借りられた人が、所得税の寄附金控除の申告をして還付を受け取る、というもの。
なぜ、このようなことをしたかといえば、個人の献金額には上限があるから。だから他人の名義を借りて献金する必要があったんですよね。でも、他人に寄附をしてくれといってもお金が必要です。そのため、お金は松本前議員の側が出すからということになったんでしょうね。
松本前議員は、政治資金規正法に抵触するようなことはないといっています。まぁそのあたりも前提にして、このスキームの課税問題を整理してみます。
今回の所得隠しに対する追徴課税については、役員報酬の否認ということになります。すなわち役員報酬として処理された金員は役員報酬でなかったということ。では、なんなのか?記事からは詳細はわかりませんので、ここから先は私が考える可能性についてです。
まず、本件では役員報酬が否認されていることは間違いなさそうです。役員報酬でなかったとしたら、なんの可能性があるのか?
一つの目可能性は、役員に対する貸付金です。でも、この資金は最終的に松本前議員の政治団体に寄附されていますので、その資金の使途の性質からいえば、役員への貸付金という可能性は低いように感じます。
二つ目は、寄附の名義人に対する法人からの贈与です。法人が支出した役員報酬は、実は役員報酬ではなく、松本前議員の政治団体に寄附をされた方達に対する法人からの贈与だったという認定。この場合には法人から個人への贈与になり、法人税法上は寄附金として扱わます。したがって寄附金の損金参入限度額計算が行われて、限度超過額については損金にならなくなるということになります。このスキームの場合は、法人が役員報酬として処理していた金員が実は役員報酬ではなく、寄附をした名義人への寄附だったという認定ですから、この寄附された金員の帰属は各寄附をした名義人ということになり、偽装献金ではないということになります。でも、贈与というのは、「あげます」→「もらいます」という意思のもと行われるものですから、記事を見る限り、寄附自体も知らなかったということからすれば、こういう認定がされる可能性は極めて薄いということになります。
三つ目の可能性は、法人が松本前議員の政治団体に対しての寄附です。すなわち役員報酬として処理されていた本件の支出については、役員報酬ではなく、松本前議員の政治団体に対する寄附金であったという認定です。そうすると、法人税法上の扱いとしては、一般の寄附金として寄附金の損金参入限度額計算が行われることとなります。本件スキームは、この可能性が一番高いのではないかと思います。
そうすると、この寄附により寄附金控除を受けた寄附の名義人も、不正還付を受けたということになります。これも重加算税の対象ですね。
本件スキームは、おそらくは三つ目のケースでしょうね。そうすると、法人税での所得隠しと、偽装献金、それからこの寄附の名義を貸した人たちの不正還付という3つに当てはまる可能性があるということになります。
この記事では、所得隠しについては書かれていますが、偽装献金と不正還付については確定的なことは書かれていません。今後、偽装献金についてはニュースで出てくる可能性はありますが、不正還付については出てくるかなぁ。
このスキームの動機は、脱税というよりも、むしろ政治献金。おそらく役員報酬で処理された金員については、源泉所得税を納めているでしょうしね。

この記事を書いたプロ

久乗哲

経営改善・金融交渉を支援するプロ

久乗哲(税理士法人りたっくす)

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