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「休眠預金」を公的事業に 与党が議員立法へ  銀行も容認姿勢、使い道は定まらず

2014年1月21日

テーマ:経済・経営雑感

コラムカテゴリ:法律関連

参考リンク1:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140119-00000979-yom-pol
参考リンク2:http://www.nikkei.com/article/DGXNASGC2000J_Q4A120C1EE8000/?dg=1

民間金融機関に存在する休眠預金を活用するというニュースです。
この話、以前にも出ていたんですが、また出てきたという感じですね。今度は議員立法にすると。
Wikipediaによると休眠預金とは「一般に、金融機関に預金として預け入れたまま、長期間その口座へ預金者側から入出金などの取引が行われなくなり、金融機関側から預金者への連絡も取れなくなった状態の預金口座のことである」とのこと。すなわちほったらかされている預金口座ということですね。
記事では10年出し入れがされていない預金を休眠預金として、公的な使い道に活用するという案が示されています。休眠預金の活用については諸外国でも実例があるんですね。米国では3年間で州の予算に、フランスでは10年で国の予算に、英国では15年で各地域の社会・環境目的に、韓国では5年で福祉事業者への貸付支援に使われています。休眠期間についてはさまざまなんですよね。
で、今回の案は休眠期間10年。これについては理由があるんですよね。日本の場合、銀行の預金については商法上の消滅時効が適用されます。消滅時効は5年。5年間権利行使がなかったら権利消滅します。そして、信用金庫の預金については民法上の消滅時効が適用されます。民法上の消滅時効が10年。こちらも10年間権利行使がなかったら権利消滅します。すなわち銀行であれ、信用金庫であれ10年間ほっておいたら時効によって権利は消滅してしまうんですよね。だから今回の休眠期間の案は10年になっているわけですね。
今までは、10年を超えても金融機関は時効の援用をせず、預金者からの請求があれば払い出しをしている状況ですね。でもこれは金融機関が時効の援用をしていないから。今までも金融機関が時効の援用をすれば、その預金は時効によって金融機関のモノになっていた訳なんですよね。そこまでよくわかっていない預金者がほっとおいた預金を金融機関に取られたと騒がれたら大変だからそのままにしているんでしょうね。
この消滅時効によって休眠預金を活用する。まぁわからないでもないですが、この休眠預金の帰属については、金融機関ですよね。それを活用するというのであれば、流れとしては、金融機関が休眠預金について時効の援用をし、そして国に寄附をするという流れになるんでしょうね。国への寄附は原則的には損金ですからね。本来であれば、寄附するかどうかは金融機関の勝手ということになりますが、それを制度として寄附しなければならないことにするということですね。
問題は使途。記事では、何に使うかが決まっていないということですが、何に使うかなんて検討しなくても、国の財政が赤字なんだから、その赤字を少しでも埋める資金に使えばいいのではないかと思います。何かに使うなんて話になると、「誰が」や「どこに」や「何に」という利権が発生します。まぁ政治家や官僚にすればそれこそがうま味なんでしょうけど、そんな制度設計にしなくても、国の予算に組み込めばいい。それでも予算配分の話がついて回るようであれば、国債償還費や国債利払いに使えばいいのではないかと思います。今回の制度によって、新たな利権を生まないように。

この記事を書いたプロ

久乗哲

経営改善・金融交渉を支援するプロ

久乗哲(税理士法人りたっくす)

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