法律上の争訟性
お寺さんや神社さんなどの宗教法人のお仕事をさせていただいていることが
僕の業務の特徴の一つである。
「宗教法人の仕事って、どんな仕事だ?」と思われたかもしれない。
宗教法人に関わるお仕事というのは、種々様々考えられ
「弁護士の仕事といえば裁判」という観点からは、訴訟事件ももちろんある。
訴訟事件では、これまで
お寺の住職が無権限であるとして本山から明渡請求を受けた事件
本山が選任した責任役員や総代の地位不存在を争った事件
反対に、門徒だと主張する者らから責任役員や総代の地位不存在を争われた事件
少し変わったところでは、神社の構造物の著作権が争われた事件
神社に対する名誉毀損・信用毀損を争った事件
などさせていただいてきた。
もっとも、宗教法人に関わるお仕事は、訴訟事件にとどまらない。
その中の一つとして、宗教法人の設立や規則変更などの、宗教法人の規則に関するものがある。
宗教活動をしている団体は、それだけでは法律上の能力はない。
宗教法人の規則を作成し、所轄庁からその規則の認証を受け登記して初めて、法律上の能力を得ることができる。
宗教法人法は、第1条で「宗教団体が、礼拝の施設その他の財産を所有し、これを維持運用し、その他その目的のための業務及び事業を運営することに資するため、宗教団体に法律上の能力を与えることを目的とする。」と定めている。
宗教団体に法律上の能力を与えるのは、宗教団体の目的達成のための業務・事業を運営することに資するから、ということである。
宗教法人となっていない場合は、宗教団体の活動が、そもそも宗教活動として信仰の自由の観点から保護されるべきものなのかどうか、あるいは、団体の活動として保護すべきものなのか、単に個人の活動に過ぎないのか、客観的に不明確である。
そうすると、当該宗教団体の活動は、宗教活動ではないと判断されたり、単なる個人的活動に過ぎないと判断されてしまう可能性がある。
当該宗教団体としては、個人の活動と切り離された団体としての宗教活動だといくら思っていても、である。
そこで、宗教法人となる必要が生じるわけである。
宗教法人となるためには、上にも書いたとおり、規則を作成し、所轄庁から規則の認証を受け、登記する必要がある。
宗教法人の規則に定めるべき事項は宗教法人法に定められており(12条)、また、所轄庁で雛型を作ってある。
写真の文化庁作成の「宗教法人の規則」の中にも詳しい解説がある。
とはいえ、宗教団体によっては、特色というか独自性がある場合もあり、法律や所轄庁の扱いに反しない範囲で、規則に色を出すことが必要な場合もある。
ちなみに、神社さんの包括法人である神社本庁は、規則の定め方については細かい文言も含めて定めていて、その通りの規則にする必要がある。
規則を作成したからといって、すぐに所轄庁から認証を受けられるわけではなく、規則に基づいた宗教活動を、少なくとも3年間所轄庁に報告し、確認してもらう必要がある。
3年間という期間は恐らく全国共通かと思う。
僕が担当させていただいたケースでは、ご依頼者が宗教団体としての宗教活動を古くから(ルーツは和同4年、現状の形では明治初期)続けてきていたことが明らかということで、2年半で認証を受けることができた。
このとき重要であるのは、所轄庁の担当者とよい関係を築くことだ。
認証してもらうからという打算的な観点からではなく、所轄庁ごとに一定程度運用に色や幅があるため、それを教えてもらいながら進めることが最短ルートでゴールにたどり着く方法だからである。
これは、規則変更のときも同じだ。
規則変更したいこちら側の意図を所轄庁の担当者に理解してもらっておれば、進め方についての示唆をもらえる場合もある。
先日、ご依頼いただいている九州の宗教法人で、包括・被包括関係を解消する(いわゆる離脱)規則変更を行ったが、当然僕は、九州まで足を運び、所轄庁の担当者と顔を合わせて規則変更の意図を伝えながら進めた。
結果、無事規則変更の認証を受けることができた。
登記期間が2週間と短いこともあり、説明するより自分でした方が早いので、登記手続きまで自分で行った。
このように、訴訟案件だけではなく
宗教法人の組織そのものに関わることも、宗教法人のお仕事の一つである。
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弁護士西村友彦(にしむらともひこ)
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