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コラム

宗教法人における規則変更の必要性

2022年2月25日

テーマ:宗教法人関係

コラムカテゴリ:法律関連

以前にも書いたが(「宗教法人に関わる仕事について」)
宗教法人には「規則」というものがある。

これは、株式会社では定款に相当するもので
法人の目的や組織の在り方の基本原則が記されたものである。

宗教法人の規則の必要的記載事項は宗教法人法に定められており(12条)

①目的
②名称
③所在地
④包括する宗教団体がある場合には、その名称及び宗教法人非宗教法人の別
⑤代表役員、責任役員、代務者、仮代表役員及び仮責任役員の呼称、資格及び任免並びに代表役員についてはその任期及び職務権限、責任役員についてはその員数、任期及び職務権限、代務者についてはその職務権限に関する事項
⑥⑤に掲げるもののほか、議決、諮問、監査その他の機関がある場合には、その機関に関する事項
⑦公益事業や収益事業を行う場合には、その種類及び管理運営(収益処分方法)に関する事項
⑧基本財産、宝物その他の財産の設定、管理及び処分、予算、決算及び会計その他の財務に関する事項
⑨規則の変更に関する事項
⑩解散の事由、清算人の選任及び残余財産の帰属に関する事項を定めた場合には、その事項
⑪公告の方法
⑫⑤から⑪までに掲げる事項について、他の宗教団体を制約し、又は他の宗教団体によって制約される事項を定めた場合には、その事項
⑬以上に掲げる事項に関連する事項を定めた場合には、その事項

となっている。


このうち、実務的に問題となることが多いことの一つは

⑤責任役員に関わること
⑥その他の機関(通常「総代会」)
に関するものであろう。

どのように問題となるかというと
・規則で定められている責任役員の員数(人数)を確保することが難しい
・責任役員が固定化されており、新しい意見や多様な意見が入ってきにくい
・責任役員と総代を同じ者に務めてもらっている
などが考えられる。


日本人はまだまだ信心深いと思われるものの
昔に比べれば、地域の神社さん、お寺さんを地域で支えていくという考え方は薄まっており
人の移動も活発になっている結果、若い世代が地域から出ていってしまうことが
至る所で生じている現象ではないだろうか。

結果、親世代は氏子だった神社、檀家だったお寺を支える若い世代は少なくなり
責任役員や総代の成り手が減っている所が多いと思われる。

責任役員と総代を同じ者が務めることは、法律上は制限されてはいない。
(総代会が規則上の機関と定められている場合には問題があると考えられる。)
しかし、総代会が規則上の機関でない場合にも
規則で、重要な意思決定に対しては、責任役員会の議決の他に、総代会の議決や同意が必要
と定められるのが通常であるから、基本的には、責任役員と総代を同じ者が兼ねることは
組織として望ましいことではない。


そうすると
責任役員は、多くの場合、代表役員の外2~3名、総代は3~6名程度であるから
氏子や檀家から、5~9名程度の責任役員や総代を出さなければならない、ということが起こり得る。

それを、任期が切れる3~4年に一度行わなければならないわけである。
これは、氏子や檀家からすると、相当な負担なはずである。


その対処方法として考えられるのが
規則変更を行い、責任役員の数が代表役員の外に3名とされておれば、2名に減らす
総代の数も、3,4名より多ければ、減らすということである。

総代は、氏子や檀家の意見を汲み上げて法人に伝える重要な役割を担っているし
責任役員は、代表役員の専横的な支配を防ぐ、という使命を負っているから
何でもかんでもなくしてしまえばよい、というものではない。

しかし、現実的に成り手が不足し、特定の者のみに多大な負荷がかかり続けるような法人運営は
どこかで行き詰まってしまう。
そうなれば、元も子もなくなってしまう以上、時代や状況に適合させた法人運営を行えるよう
変えられる部分は変えていくべきだと思う。

規則変更を行うに当たっては、総代会や少なくとも責任役員会の議決を経たうえで
包括宗教法人があれば、その承認、そして、最終的には所轄庁の承認が必要であるから
宗教法人法の理念や当該宗教団体の本質を損なうような規則変更は、そもそも認められないため
心配はない。


神社さん、お寺さんの中には、昭和20年代などに認証された規則を
変更せずに今日まで来ている、というところも多いものと思われる。

時代や状況に合った規則になっているのか、一度見直されてもよいのではないだろうか。

宗教法人の規則変更について、ご検討になられる際には、是非ご相談ください。



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弁護士西村友彦(にしむらともひこ)

夷川通り法律事務所

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