理想の上司

太田英樹

太田英樹

テーマ:組織改革

大昔、私がまだ介護の現場に出て間もない頃の話。

当時勤めていたデイケアの玄関に、いつも数足の靴が並んでいるのが気になっていました。

送迎に出ているスタッフが帰ってきて、脱いだままになっていたり、院長がそのままにしていたり、
決して、脱ぎ散らかしているわけではないんですが、

当時、デイルームから玄関に駆けて行って外に出ようとされる利用者さんもいらっしゃったので、
その方が踏んでしまい、バランスを崩して転倒することもありえるんじゃないかな、
とまだまだ経験の浅いケアスタッフながらも感じていました。

なので、見かけたらその靴を下駄箱にしまうということをしていました。

当の本人たちも悪気があるわけでもないでしょうから、指摘するでもなく、
見かけたら、ほんの数秒立ち止まって片付けるだけのことです。

そんなことをし始めて何ヶ月か経った頃、ある日、高熱を出してしまい、1日仕事を休んでしまいました。

次の日、出勤すると、事務のお姉さんに、

「昨日の朝礼で、◯◯さん(上司)が太田さんのこと話してましたよ。いつもありがとうございます」

と言われました。

私には何のことかわからず、上司の話とありがとうが繋がらなかったので、
何を言われたのか気になって、直接上司にたずねました。

すると、日ごろ私が玄関の靴を片付ける姿を見ていたそうで、

「誰かを責めるでもなく、自分をアピールするでもなく、必要と思うことを淡々と実行する姿勢、それ太田くんの持ち味だと僕は思う」

と言われました。

朝礼でも、「見習え」とか、「気をつけなさい」とか言わなかったそうで、

「そんなスタッフに支えられてこの事業所がある」

とだけおっしゃったそうです。

だから、事務員さんの「ありがとう」だったのかとわかりました。

毎日の仕事、毎日の育児、家事をこなしていく中で、私たちは「目的」を見失うことが多々あります。

「こんなことに意味があるのか」と感じたり、

「自分だけがしんどい思いをしている」とストレスになったり、

はたまた、誰かのやり方を指摘改善したくなったり、認められないと思ったり、

目の前の大変さに意識が向き、いろんなストレスを感じてしまいます。

その結果、誰かを責めたり、自分を責めたり、
さらには、「ここは自分の居場所ではない」と結論付けてしまうこともあります。

大事なのは、自分自身がどうありたいか。

仕事をする目的、この職場に居る目的、家庭の目的、
必ず目的があるはずです。

その実現のために、今自分が何をするか、が大事であり、
誰がどう思うかは、自分の問題ではない。

そして、その行動は、必ず誰かが見ている。
アピールしなくても、やるべきことをやっていれば、それを理解してくれる人が必ず見てくれている。

その時の上司はもう他界されましたが、今でも私にとって「理想の上司像」です。

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太田英樹
専門家

太田英樹(コーチングコミュニケーション講師)

株式会社インサイトハウス

介護・福祉業界を中心に人材育成と事業支援で多くの実績あり。アドラー心理学ベースのコーチング研修により、社内コミュニケーションを円滑化のみならず、人材定着率や利用者満足度を高め、事業の成長につなげます。

太田英樹プロは京都新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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