「平成28(2016)年度・灘中二日目・大問三・詩」の解説
みなさん、こんにちは。
国語専門オンライン学習塾「啓理学舎」の篠田です。
今回は、灘中学校の令和5(2023)年度・国語入試2日目、大問三で出題された詩「あなたに」(秋村宏)を題材に、各設問の解き方を詳しく解説します。
詩の読解問題では、言葉の意味を理解するだけでなく、比喩表現を読み解いたり、複数の表現を比較したりしながら、詩に込められた思いを考える必要があります。
今回の問題でも、特に重要なのが、次の三つの力です。
・言いかえる力:比喩や抽象的な表現を、具体的で分かりやすい言葉に置きかえる。
・くらべる力:過去と現在、人物と人物などを比較し、その違いを読み取る。
・たどる力:設問に関係する表現を本文から探し、前後のつながりを確認する。
それでは、各設問を順番に見ていきましょう。
目次
問1 「カドがとれる」という表現をどう解釈するか
解法のポイント:比喩表現を言いかえる
この設問を解くうえで重要なのは、「カドがとれる」という表現の意味を正確に捉えることです。
まず、言葉を文字どおりに考えてみましょう。
角ばった物から角がなくなれば、その形は丸くなります。
しかし、人間の性格について「カドがとれる」と言う場合、実際に体の角がなくなるわけではありません。
ここでは、物の形を表す言葉を使って、人の性格や態度の変化を表現していると考えられます。
つまり、
具体的な表現(比喩表現)を、抽象的な意味に言いかえる必要がある
のです。
ですから、次のように整理できます。
・具体的な表現:「カドがとれる」
・抽象的な意味:性格や態度が穏やかになる、円満になる
このように、比喩表現を一般的な言葉に言いかえる力が必要です。
ただし、比喩の意味は、いつでも一つの言葉に決まるわけではありません。
前後の文脈を確認し、その場面に合った意味を選ぶことが大切です。
解答例
人柄や性格が穏やかで円満になること。
問2 過去と現在をくらべて選択肢を絞る
解法のポイント:「くらべる力」を使う
この設問では、
詩の中に描かれた「現在の姿」と、「過去の姿」をくらべることが重要
です。
本文では、現在の自分について「カドがとれた」という趣旨の表現や、丸くなった様子を示す表現が使われています。
一方、過去の自分については、以前の自分のあり方を振り返る表現が手がかりになります。
ここで、次のように整理してみましょう。
| 注目する点 | 読み取れること |
|---|---|
| 現在の自分 | 以前より丸くなった様子 |
| 過去の自分 | 現在とは異なる、角のある状態 |
| 比較して考えること | 自分の性格や考え方がどのように変化したか |
大切なのは、現在の表現だけを読んで選択肢を選ばないことです。
現在の自分が「丸くなった」と表現されているのであれば、過去にはそれとは異なる状態があったと考えられます。
選択肢問題では、それぞれの選択肢が本文の内容と一致するかを確かめます。
自分の印象だけで選ぶのではなく、本文の表現と照らし合わせて判断しましょう。
解答
「ウ」
問3 「熱意がなくなる」と考えられる根拠は何か
解法のポイント:現在の様子から過去の姿を推測する
この設問では、夢や希望について話し合うときの様子や、怒ったり笑ったりするときの心の動きに注目します。
本文には、声の大きさや、心がどの程度その場面についていっているかを考えさせる表現があります。
こうした表現を読むときは、現在の様子だけでなく、それ以前の姿とくらべることが重要です。
例えば、夢や希望について語るときに声が小さくなっているのであれば、以前はもっと積極的に語っていた可能性が考えられます。
また、怒ったり笑ったりするときに心が十分についていかなくなっているという表現からは、感情の動き方にも変化が生じていることがうかがえます。
ここで、過去と現在を整理してみましょう。
【過去について考えられる姿】
・夢や希望について、より積極的に語っていた。
・怒りや喜びなどの感情を、より強く感じていた。
【現在について読み取れる変化】
・夢や希望について語るときの勢いが弱まっている。
・感情の動きが以前ほど強くない様子が示されている。
もちろん、過去の様子がすべて直接書かれているとは限りません。
本文に示された現在の変化を手がかりに、対照的な過去の姿を推測する必要があります。
これらを総合すると、以前に比べて熱意が弱まっているという解釈につながります。
このように、二つの時点を比較し、変化の方向を読み取ることが「くらべる力」です。
解答
「オ」
問4 「カネとかモノのあたたかさ」をどう読むか
解法のポイント:比喩の意味を考え、本文中の表現と結びつける
この設問では、「カネとかモノのあたたかさ」という表現をどのように言いかえるかがポイントになります。
「カネとかモノのあたたかさ」という表現(比喩的表現)を、文字どおりに読むと、お金や物が温かいという意味になります。
しかし、詩の文脈から、「あたたかさ」を実際の温度を表しているのではなく、お金や物を得ることによる満足感を表していると考えられます。
つまり、「カネとかモノのあたたかさ」を言いかえると、「物欲を満たした時の満足感」といった感じでしょうか。
このあたりを頭に入れて、5字で言いかえている言葉を探すと、「世間の誘惑」が近いと考えられます。
お金や欲しいものは、テレビ、ネット等や人の言葉により知ることになります。
これが「世間」に言いかえられると思います。
また、お金や欲しいものには、かなりの「誘惑」があります。
解答例
世間の誘惑
この設問では、比喩を言いかえるだけで終わらず、言いかえた内容と本文中の表現とを結びつけることが大切です。
問5A 「あなた」はどのような存在なのか
解法のポイント:「わたし」と「あなた」を対比する
この設問では、「あなた」がどのような存在として描かれているのかを考えます。
この設問の答え方ですが、「どんな存在ですか」と問われているため、「〜の存在。」と答えるのが無難でしょう。
人物の特徴を読み取るときには、その人物について直接書かれている言葉だけでなく、ほかの人物との関係にも注目しましょう。
今回の詩では、「わたし」と「あなた」が、それぞれ異なるものと結びつけられています。
注目したのは、次の二つの表現です。
⑴「わたし」と「世間の誘惑」の関係
⑵「あなた」と「未来や人間の豊かさ」の関係
⑴と⑵は対比していると考えられます。
「わたし」は、「世間の誘惑の中にいる存在」として描かれています。
一方、「あなた」は、「未来や人間の豊かさの側にいる存在」として描かれています。
また、「あなた」は単に目の前にいる人物というだけでなく、「わたし」が自分の生き方を振り返る際に、理想を意識させる存在として読むことができます。
解答例
理想的な未来や人間の豊かさの中にいる存在。
問5B 「あなたにじっと見られる」とはどういうことか
解法のポイント:設問を言いかえ、前後の内容をたどる
この設問は、表現そのものが抽象的で、何を説明すればよいのか迷いやすい問題です。
このような場合は、設問を自分の言葉で言いかえてみましょう。
「あなたにじっと見られる」の「あなた」とは、問5Aより「理想的な未来や人間の豊かさの中にいる存在」です。
つまり、「あなたにじっと見られる」とは、「『現在の自分』が『理想的な未来や人間の豊かさの中にいる存在』にじっと見られる」となります。
さらに、「どうすることですか」も言いかえると、「どのような行動になることですか」となります。
ですから、この設問の意味は、「『現在の自分』が『理想的な未来や人間の豊かさの中にいる存在』にじっとみられる」ことにより、『現在の自分』はどのような行動になりますか」となります。
また、言いかえると「あなた」が「わたし」にどのような影響を与えていますか、となります。
本文では、「あなた」の視線に気づいたあと、「わたし」が自分の過去を振り返る流れが見られます。
そこで、関連する表現を順番にたどってみましょう。
第一段階:自分を見つめている「あなた」の存在に気づく(第2連)
「わたし」は、「あなた」が自分を見つめていることに気づきます。
この気づきが、その後の内省につながる手がかりになります。
第二段階:かつての自分を振り返る(第2連)
「わたし」は、自分が以前に大切にしていた言葉や考え方を振り返ります。
ここから、現在の自分と過去の自分の違いが意識されていることが分かります。
第三段階:現在の自分のあり方を考える(第3〜4連)
さらに、世間の誘惑との関係や、世界を変えたいという以前の思いを考え合わせると、「わたし」が現在の自分のあり方を見直していると解釈できます。
このように、設問に関係する表現を順番にたどることで、抽象的な表現の意味を具体的に説明できるようになります。
解答例
自分がお金や物などの欲求にとらわれていることに気づき、憤りに満ちた世界を変えようとする気持ちを思い出すこと。
この設問では、単に「自分を見つめ直すこと」とだけ答えるよりも、何に気づき、どのような思いを思い出すのかまで説明すると、内容が明確になります。
問6 「丸くなって座っている」状態を抽象化する
解法のポイント:詩全体の対比を整理してから答える
最後の設問では、詩全体を振り返り、
「過去の自分」と「現在の自分」がどのような状態にあるのかを対比させて考えることが重要
です。
ここで、改めて過去と現在を比較してみましょう。
【過去の自分について考えられること】
⑴ 以前は、現在とは異なる、角のある状態だった。
⑵ 夢や希望について、より積極的に語っていたと考えられる。
⑶ 怒りや喜びなどの感情が、より強く動いていたと考えられる。
⑷ 世界を変えようとする思いを抱いていたことが、詩の表現からうかがえる。
【現在の自分について読み取れること】
⑴「丸くなって座っている」という表現が使われている。
⑵ 夢や希望を語るときの熱意が弱まっている様子が示されている。
⑶ 感情の動きにも、過去との違いが表れている。
⑷ 世間の誘惑との関係を通じて、以前の理想との距離が意識されている。
ここで注意したいのは、上の整理には、本文に直接書かれている内容と、複数の表現から推測している内容の両方が含まれることです。
入試問題を解く際には、この二つを区別する必要があります。
特に、過去の自分についての推測を、そのまま本文に明記された事実として扱ってはいけません。
あくまで、現在の描写や前後の表現を根拠にして考えることが大切です。
こうして過去と現在の違いを整理したうえで、「丸くなって座っている」という具体的な表現を抽象化します。
つまり、この表現は、単に姿勢や体の形を表すだけではなく、以前のような熱意や感情の豊かさ、世界を変えようとする意欲が弱まった状態を示していると読むことができます。
解答例
夢や希望を追い求めることや感情豊かにいることが難しくなり、現実を変えようとする意欲を失っている様子。
この設問では、個々の言葉の意味だけでなく、詩全体に描かれた変化をまとめることが求められます。
まとめ――灘中の詩の読解では、本文を根拠に考える
今回の灘中・令和5年度の詩の問題では、比喩表現を言いかえる問題だけでなく、過去と現在を比較したり、人物同士の関係を読み取ったりする問題が見られます。
それぞれの設問で重要になるのは、次の三つの力です。
1.言いかえる力
「カドがとれる」のような比喩表現を、文脈に合った言葉に置きかえる。
2.くらべる力
過去と現在、「わたし」と「あなた」などを比較し、その違いから意味を読み取る。
3.たどる力
設問に関係する表現を本文から探し、前後の流れを確認して解答の根拠を見つける。
そして、もう一つ大切なのは、本文に書かれていることと、本文から推測できることを区別することです。
詩の読解では、自由に想像を広げることが大切な場面もあります。
しかし、入試問題では、本文の表現を根拠にして、設問に合った内容を説明しなければなりません。
「何となくそう感じた」という答え方から一歩進み、「どの言葉を根拠に、なぜそう考えたのか」を説明できるようにしましょう。
啓理学舎では、こうした読解の手順を大切にしながら、子どもたちが自分の力で文章を読み解けるよう指導しています。
難関中学の過去問も、解答を覚えるためだけでなく、考え方を身につけるための教材として活用していきましょう。
関連記事:『国語の成績は「公式」で伸びる!入試を突破する「発展的国語力」とは?』
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※本稿は、灘中学校の過去の入試問題を題材に、設問の解き方と読解方法を独自に解説したものです。詩の全文や入試問題の全文を転載するものではありません。



