競売物件の購入は危険?|3点セットの読み方と資金計画の注意点を解説

高橋徹夫

高橋徹夫


「競売物件って、やっぱり危ないんでしょうか」。マイホームの購入をご検討中の方から、こんな質問をいただくことがあります。少しでも安く家を手に入れたい、でもなんとなく不安…。その両方の気持ちが同居している方が多い印象です。

先に私の答えをお伝えします。競売物件の購入は、危険か安全かで割り切れるものではありません。裁判所が決めた条件のとおりにしか進められない売買であり、その条件を自分で読み解けるかどうかで、結果が大きく変わります。

これまで売買のお手伝いを重ねてきて感じるのは、競売でつまずく方の多くが、物件そのものではなく「入札前に確認しきれなかったこと」でつまずいている、ということです。

ここを取り違えたまま入札を考えてしまう方が、実は少なくありません。

競売と通常売買、決定的に異なる2つの点

通常の売買では、売主と買主の合意にもとづき、私たち不動産会社の仲介などを通じて価格や引渡し条件を調整しながら契約を進めます。買主側から条件を出せる余地がある、ということです。一方、競売では裁判所があらかじめ売却基準価額や入札期間、保証金の額などを公告し、その条件に従ってのみ入札できます。交渉という場面が、そもそも存在しません。

だからこそ、入札前に3点セットの内容を丁寧に読み、自らリスクを見極めることが求められます。3点セットとは、裁判所が公開する「物件明細書」「現況調査報告書」「評価書」の3種類の資料をひとまとめにしたもののことです。

私は普段の仲介でも、お客様の「やめたい」というお気持ちを最優先にしています。内覧して、迷って、断れること。これは通常の売買が持っている大きな価値です。競売には、その余地がほとんどありません。

3点セットを読み切れるかが分かれ目

物件明細書には、競売後も引き継ぐ必要のある賃借権などの権利が記載され、買受人がどこまで負担するのかが分かります。現況調査報告書には、誰が住んでいるか、建物の利用状況や老朽化の程度が写真付きで示されます。

評価書には、周辺環境や市場水準を考慮した評価額が示されており、入札価格の上限を検討するときの基礎資料になります。読む順番としては、権利関係、占有状況、修繕の必要性の順に確認していくと整理しやすくなります。

ただ、正直に申し上げます。書面だけから建物の状態を読み取るのは、専門家でも簡単ではありません。

私は通常の仲介の場面で、他社では「問題ない」と説明されていた物件に、隣地との境界未確定というリスクを見つけたことがあります。宅地建物取引士として状況をご説明し、境界確定が完了してから契約することをおすすめしました。そのお客様からは、「もしそのまま買っていたらと思うと怖い。あのとき教えてくれて本当に良かった」というお言葉をいただきました。

中古マンションでは、修繕積立金の状況や長期修繕計画、管理組合の議事録を確認したところ、大規模修繕に対して積立金が不足する可能性が判明したこともありました。将来の一時金徴収の可能性をお伝えし、価格交渉の材料にしていただきました。

いずれも、現地と資料の両方を確認できたから見えたことです。競売では、この確認の多くを3点セットの読み込みで代替することになります。そこに不安が残るなら、入札を急がないという判断も、立派な選択だと私は思います。

競売の流れをもう少し詳しく整理した記事もありますので、あわせてご覧ください(https://onefinitas-estate.jp/blog/entry-819707/)。

落札価格だけで資金計画を組まないでください

競売では、入札前に保証金を裁判所に納める必要があり、その額や提供方法は各事件の公告や説明書で示されます。落札後は、裁判所が定めた代金納付期限までに残代金を納めなければなりません。

さらに、所有権移転登記や抵当権設定登記にかかる登録免許税、司法書士報酬などの費用も発生します。現況有姿が原則ですから、リフォームや修繕の費用も見込む必要があり、占有者がいる場合は明渡しに伴う費用と期間も想定しておきたいところです。

つまり購入総額は、落札価格に諸費用と修繕費を足した合計で考える必要があります。

とはいえ、これは競売に限った話ではありません。私が通常のご相談で大切にしているのが、明瞭価格という考え方です。明瞭価格とは、物件価格以外にかかる登記費用・仲介手数料・ローン保証料・火災保険・引越し費用などの諸費用を、最初のご相談の場ですべてお伝えする考え方のことです。

「物件価格以外にこんなにかかるとは聞いていなかった」という後悔を、私は何度も見てきました。競売はその後悔が起きやすい仕組みだからこそ、総額から逆算する順番を崩さないでいただきたいのです。

AFPとして、給与や賞与だけでなく教育費や老後資金まで含めたキャッシュフロー表を作り、資金の推移をシミュレーションすることもあります。老後にどれだけ残る見込みかまで見えると、判断の落ち着き方が変わります。

私が「今回は見送りましょう」と伝える基準

ここは、同業の方でも判断が分かれるところだと思います。

私は、価格の安さを理由に予備費を削る前提の入札は、マイホーム目的の方にはおすすめしていません。分かれ目は、想定外の修繕費が出たときに、ご家族の暮らしが変わってしまわないかどうかです。

以前、「すぐ申し込みたい」とおっしゃった新築戸建てについて、念のため周辺環境を調査したところ、過去に浸水履歴があり、ハザードマップでも注意区域に該当していることが分かりました。長く住むご自宅としてのリスクをお伝えし、今回は見送るご提案をしました。後日、別のエリアで安心して住める住宅をご購入いただき、「正直に教えてくれてよかった」と言っていただきました。

成約させることが、私の仕事のゴールではありません。当社では月にお受けする件数をあえて絞り、代表である私が最初から最後まで直接担当しています。急かす理由がないからこそ、見送るご提案もできます。
競売を検討されるなら、入札を決めてからではなく、候補を絞る前の段階でご相談いただくほうが安全です。

競売物件の購入は、危ないから避けるものでも、安いから飛びつくものでもありません。裁判所が示した条件と3点セットを読み解き、総額で資金計画を組めるかどうか。その見極めができれば、マイホーム取得の現実的な選択肢のひとつになり得ます。

まとめ

競売物件は、正しい順番で情報を読み、総額で資金計画を立てられれば、マイホーム取得の現実的な選択肢になり得ると私は考えています。怖いのは物件そのものではなく、確認しないまま入札してしまうことです。

・競売物件をマイホームとして真剣に検討している方
・3点セットを自分で読み切れるか不安な方
・落札後の諸費用や修繕費まで含めた資金計画を立てたい方


神奈川県横浜市旭区のワンフィニタス株式会社では、物件探しから資金計画、引渡し後の確定申告や借り換えのご相談まで一貫して対応しています。判断に迷う段階で構いませんので、まずはお気軽にご相談ください(https://onefinitas-estate.jp/contact/)。

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高橋徹夫
専門家

高橋徹夫(不動産業)

ワンフィニタス株式会社 -ONE FINITAS-

ヒアリングを通じて顧客の意図を整理し、要望に合う不動産を厳選して提案。初回相談で方向性が定まるケースも多く、その後も人生設計や資産運用を見据え、住まいとお金の課題に継続的に向き合います。

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