「自分で決めていいよ」と言っても、子どもが動かないとき——足りないのは声かけではない

三上緑

三上緑

テーマ:“困った子”を生まない指導 ― 先生の見立てを問い直す

「自分で決めていいよ」と伝えているのに、子どもは動かない。
だから、もっと声かけを変えよう、言葉を増やそう、と考える先生は多いと思います。
あるいは、「練習しなさいといつも言われるからもう辞めたい」と本人が言っている——そんなケースでは、どう声をかければよいかと悩みがちです。
けれど、動かないときに声かけを増やしても、うまくいかないことが多い。
足りないのは、多くの場合、声かけの量や種類ではなく、設計です。



1. 声かけが増えるとき、設計が抜け落ちている


レッスンや家庭でうまくいかないとき、私たちは「もっと伝えなければ」と、指示を足しがちです。
でも、子どもが動かない理由は、「言われていない」ことよりも、「できそうに感じられていない」ことにあることが多い。
いくら「自分で決めていいよ」と言っても、選択肢が多すぎたり、何をすればよいか見えていなかったりすると、動けません。
声かけを増やす前に、「今、この子にとって、何ができそうな状態になっているか」を観察し調整し直す。
その順番が逆だと、先生も子どもも疲れます。




2. 「任せる」の前に、整えること



「任せる」は、何もしていないのではなく、任せられる状態を整えたうえで、手を離すことです。
選択肢を「全部」ではなく「この中から」に絞る。
ハードルを「できそう」に下げる。
「練習」という言葉に過敏な子には、「家で1回弾く」「ここまで触る」など、言い換えで負荷を下げる。
そうした微調整のあとで「じゃあ、どれにする?」と聞くのです。
任せる設計が先にあって、はじめて「自分で決めていいよ」が届きます。


3. できそうに落とす、という順番


「練習しなさいといつも言われるから辞めたい」と言う子は、「練習」という言葉や状況そのものに、限界を感じている可能性があります。
そこで「練習しなさい」を言い換えても、構造が同じなら反応は変わりません。
大切なのは、できそうに落とすこと。
1ページだけ、一部分だけ、思い出しメモだけ。本人が「教えて」と言うまで待つ流れをつくる。
声かけは、その微調整のうえにのせるから、効くのです。


まとめ



「自分で決めていいよ」で動かないとき、足りないのは声かけではありません。
任せられる状態を整え、できそうに落とす微調整を先にすること。
その視点を持つと、同じ言葉でも、届き方が変わります。
設計を整える先生が一人でも増えれば、もっと楽しめる子どもや先生が増えると思います。

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三上緑
専門家

三上緑(音楽教育家)

一般社団法人カラフルエデュ協会

音楽教育家として「カラフルさん」を肯定。児童心理学と境界線リフレーミングを軸に母・指導者の判断力を整えます。二人の息子を私立小から大学へ導いた経験と音楽指導から子の才能を社会へ繋ぐ未来設計をサポート。

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