「指がフニャフニャのうちから好きな曲を弾かせてよいですか」——技術と好きの、どちらを先に守るか

三上緑

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テーマ:“困った子”を生まない指導 ― 先生の見立てを問い直す

「指がフニャフニャの間も、好きな曲を弾かせていいのですか」。
こう聞かれることがあります。技術がついてから好きな曲を、と考える先生や保護者は多い。
一方で、今のうちに好きな曲を弾かせたいという声もある。
どちらを優先すべきか、迷うのは当然です。ただ、ここで「どちらか」で割り切ってしまうと、見えなくなるものがあります。
技術と「好き」は、対立ではなく、順番の問題として扱うと、道が開けます。




1. 「できるようになってから好きな曲」の落とし穴



「まず基礎を固めてから、好きな曲を」という考え方は、一見筋が通っています。
けれど、子どもにとっての時間の流れは違うことがあります。
今、この曲が弾きたい。その「今」を待たせているあいだに、音楽への火種が弱くなることがある。
技術は後からでも伸ばせるが、「好き」「やりたい」は、タイミングを逃すと戻しづらい。
だから、「技術がつくまで我慢」を前提にすると、伸びる子が伸びないケースが生まれます。





2. 好きがあるから、技術を育てる意味が生まれる



逆に、「この曲を弾きたい」という気持ちが先にあると、指の形やリズムの練習に意味が生まれます。
「この曲をもっとうまく弾くために」なら、子どもは自分ごととして動きやすい。
好きな曲があるから、技術を育てる意味が生まれる
——この順番で設計すると、指導する側も
「何のためにこの練習をするか」を説明しやすくなります。
技術主義ではなく、意味主義。どちらを軸にレッスンを組むかで、子どもの反応は変わります。



3. 消してはいけない火種



指がフニャフニャのうちから好きな曲を弾かせることへの不安は、「うまく弾けないまま終わるのでは」という心配だと思います。
それでも、うまく弾けない「今」を経験しながら、好きを守る選択はあります。
アレンジで成立させる、一部分だけでも「弾けた」を残す。
技術は育てるもの。好きは、消さないもの。この二つを両立させる設計を考えることが、先生の腕の見せどころです。


まとめ



「指がフニャフニャの間も好きな曲を弾かせてよいか」への答えは、「どのように弾かせるか」の設計にあります。
技術と好きを対立させず、好きを火種にしたまま技術を育てる。
その視点を持つ先生が増えれば、子どもが音楽から離れずに済むケースが、もっと増えると思います。

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三上緑
専門家

三上緑(音楽教育家)

一般社団法人カラフルエデュ協会

音楽教育家として「カラフルさん」を肯定。児童心理学と境界線リフレーミングを軸に母・指導者の判断力を整えます。二人の息子を私立小から大学へ導いた経験と音楽指導から子の才能を社会へ繋ぐ未来設計をサポート。

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