最近ちょっと気になる生徒さんの対処法
「きっとできるようになる。だから、練習をしていこう」
この言葉が、ある子にはすんなり届くのに、
ある子には全く届かない――そんな経験はありませんか?
「やる気がないのかな」「真剣に取り組めないタイプなのかも」
そう見える子にこそ、本当は“届いていないだけ”かもしれないのです。
目次
【実例】教室に来てもピアノに辿り着けない子
以前、こんな生徒さんがいました。
教室に来てもピアノに向かうどころか、ゴロゴロと床に寝転び、
なかなかレッスンが始められない。
「お約束だよ?」「お母さんと一緒ならできるかな?」
――そう声をかけても反応は薄く、毎回同じやりとりの繰り返し。
正直、途方に暮れそうになったこともありました。
「まず何をするのか」がイメージできない子どもたち
この子に限らず、「やりたくない」「できない」と見える行動の背景には、
“まず何をするのか”が分かっていない/見通しが持てないというケースがあります。
大人からすると「教室に来たらピアノを弾く」が当たり前でも、
その子にとっては、「何から始まるのか」「どうすれば先生が嬉しいのか」が曖昧なのです。
だからこそ必要なのは…
【ポイント】“やってほしいこと”を「見える化」する
例えば私は、その子のために「今日のレッスンの流れ」をイラスト付きのカードで
見せるようにしました。
① ピアノの前に座る
② 先生と挨拶
③ 1曲だけ一緒に弾いてみる
「全部やらなくていいよ。①だけでもできたらハナマルだよ」と、
“小さく始めてOK”の合図を出すことも忘れません。
すると、少しずつですが、その子の目に変化が現れました。
「やらされる」から「やってみようかな」への一歩が見えたのです。
「きっとできるよ」と言うだけでは、
まだまだ子どもには届かないことがあります。
特に、慎重で繊細な子や、できない自分に敏感な子は、
「それ、本当に私にできるの?」と、不安でいっぱいです。
だからこそ、
“できる感覚”を手渡す関わり方が必要なのです。
・何をするのか(What)
・どうやってやるのか(How)
・そして、なぜそれをやるのか(Why)
これを、子どもの理解できる形で丁寧に伝えること。
それが、“聞く耳”を開くための第一歩になります。
子どもに合わせる指導とは、“全部任せる”ことではない
よく「子どもに合わせてるつもりなんですが…」とおっしゃる先生もいます。
でも、それが「好きにさせること」になってしまっていないでしょうか?
“合わせる”とは、今のその子にとってちょうど届く言葉や方法を見つけること。
つまり、私たち指導者にとっては観察力と創造力が問われる、大切な仕事なのです。
「あの子が変わった!」が、私たちの生きる喜びになる
そうして1人、また1人、
「やれないと思っていた子」が「できた!」に変わっていく。
表情が変わり、教室に笑顔が増えていく。
そんな変化を見るたびに、私は思うのです。
これこそが、私たちがこの仕事をしている理由。
私たちの生きる喜びそのものだと。
みんなと同じことをしていたら、教室はその他大勢の中のひとつ。
でも、“ぴったりの関わり”ができる先生は、選ばれる。
それは、技術や経歴ではなく、「その子の未来を信じられる力」。
今日もまた一人の先生が、
「きっとできないと思い込んでる子」に向き合い、
「できる子」に育てています。
その一歩が、未来を変えていくのです。



