将来難聴になるリスクを減らすために今できること!
補聴器を初めてお試しになる方からよく聞かれる言葉。
「周囲の雑音ばかり良く聞こえる」
「キンキンと金属的な聞こえが気になる」
仰っている事、良く分かります。
しかし、それは決して"余計な雑音"とは言い切れないものです。
なぜなら、聴力低下がなければ本来「"聞こえていたはず"」の音だからです。
世の中には多くの「音」が溢れています。
例えば上図は静かな室内で測定した音量計です。
横軸は周波数・・・左が低周波の音、右に行くにしたがって高周波の音になります。
TVもついていないし、音楽も鳴っていない、誰も会話していない静かな室内でもこれだけの音が計測されています。
時計の秒針がカチカチと鳴る音。
エアコンの風の音、換気扇の音などです。
では、外へ出てみたらどうか?
郊外の道路で、さほど交通量はありません。数台程度です。
交差点手前で、減速しているため速度もさほど出ていない状況です。
低い周波数の方で、50~60dB程度の音量となっていますね。
では次に、キッチンで洗い物をしている時などはどうでしょうか?
今度は低い周波数~高い周波数まで万遍なく、特に高い周波数帯で大きな音量となっています。
60dB程度の音が出ていますね。
この様に、日常の生活環境はたくさんの音で溢れかえっています。
では、軽度難聴になってきたらどうか?
先ほどの郊外道路で見てみると・・・・
40dB程度の軽度難聴を想定してみます。
本来は、周波数ごとに聞こえ方が異なるものですが、わかりやすく一定に聞こえづらい場合を想定します。
40dBまでの音をマスクしてしまうと・・・
だいぶ聞こえる音が減ってきますね。
難聴は徐々に進行するため、この程度の難聴だと自覚がない方が多いです。
自分では不自由していないと思っているが、後ろから急に自転車や車が来て驚いた、などという経験がある方・・・・・既に聴力低下は始まっていますよ。
これが中等度難聴まで進行すると・・・?
ほぼ何も聞こえていないですね!・・・危険です。
この程度の聴力の方でも、自分は不自由していない、と仰る方は意外と多いです。
普段の会話は、周囲の方が気を使っているから成り立っている。
TVもボリュームを上げているから聞こえている。
そういう状態です。
キッチンの洗い物ではどうでしょうか?
軽度難聴の場合
少し静かになりますね。
中等度難聴では?
だいぶ静かですね。
しかし、徐々に聴力低下が進行していますので、この状態の聞こえが「正常」である、と脳は認識しているわけです。
そこで、これがいきなり
この程度の聞こえだったのが、
こうなって
さらに、ちょっと極端ですが
こうなったら?
聴力低下が無い方々で例えれば、静かな室内が常に「キッチンで洗い物をしている」ような状態に感じられてしまうわけですね。
まぁ、ちょっと極端な説明ではありますが、分かりやすく言ってみました。
なので、決して補聴器が余計な音を拾っているわけではなく、これまで聞こえていなかった音が甦ってくるということなのです。
そのため、まずは違和感の少ないレベルから徐々に段階を踏んで"リハビリ"していく必要があるんです。
水道の音がどれだけの大きさだったのか、夜中に冷蔵庫がブーンと言っている音はどの程度の音量だったのか・・・
難聴が進むにつれ、忘れてしまいます。
それが急に昔のように聞こえると、「余計な音が聞こえすぎ!」・・と感じてしまうのも無理ありません。
少しづつ、忘れていた音を「脳」が認識していくことで、補聴器は役立つパートナーとなっていきます。
焦らず、早急に結果を求めることなく、我々補聴器技能者と共に歩んで頂きたいと思います!
最新の補聴器では、水道の流れる音や、ドアを閉める音など突発的な衝撃音もだいぶ抑制できるようになってきていますので、上の説明程には極端にならないですよ。