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自動車の相続、名義変更せずそのまま遺族が使用を続けることのリスクとは

太田英之

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テーマ:相続

被相続人が自動車を所有していた場合、その名義はまず相続人全員の共有になりますが、その中で誰が代表として相続するのかを決めなければなりません。
そのためには、自動車の名義を相続人の名義に変更する手続きを取る必要があります。今回は、自動車の相続、名義変更についてお話しします。

名義変更をせずに使用を続けた場合のリスク

相続における自動車の名義変更は、実は義務ではありません。名義変更の期限なども決められておらず、被相続人(亡くなった人)の名義のまま自動車を使っていても罰せられることはありません。

「手続きするのは面倒…」という人も多いかと思いますが、そのまま乗り続けていると、さまざまな不都合も出てきます。

・売却や廃車手続きができない
・担保に入れることができない
・差し押さえられる可能性がある

自動車を使うことに関して不都合はありませんが、上記のような自動車に関する手続きができなくなってしまうのです。

これを考えるといずれは名義変更をせざるを得ないのですが、時間がたってしまうと、他の相続人も高齢になって話し合うのが難しくなったり、相続人が亡くなってしまうことも考えられます。こうなると名義変更の手続きはより複雑になり、最悪の場合は手続きができなくなるリスクも出てきます。

他の相続手続きと同様に、自動車の相続手続きもすぐにしておいたほうがいいでしょう。

相続した自動車の名義変更の手続き方法

相続する自動車の名義変更には、主に3つの方法があります。

<自分で手続きする>
自動車の名義変更に必要な書類、相続時に必要な遺産分割協議書をそろえて、近くの陸運局に届け出ます。軽自動車の場合は、軽自動車検査協会に届けます。

自分で手続きをすることで代行費用はかかりませんが、書類などに不備があると手続きのやり直しになるので注意が必要です。

<司法書士などの専門家に依頼する>
司法書士などの専門家に代行を依頼すれば、必要書類の取り寄せから手続きまでを一括して行ってくれるので、手間もかからず確実に業務を進めてくれます。

すべての手続きを代行してくれるので安心ですが、代行費用がかかるのがデメリットと言えるかもしれません。

<自動車ディーラーなどに依頼する>
自動車ディーラーに名義変更手続きを依頼することもできますが、ここで代行してくれるのは陸運局での最後の手続きのみです。
必要書類は自分でそろえなければなりませんが、平日の限られた時間に陸運局に行くのが難しい時などは便利です。

名義変更の手続きの流れ

専門家に依頼する以外の方法では、以下のような流れで名義変更の手続きを行います。

【1:自動車の所有状況を確認する】
まずは自動車の名義がどうなっているのかを確認します。名義人の確認は車検証を見ればわかります。

名義人が被相続人であれば名義人変更の手続きを進めますが、自動車がリース契約で所有者がリース会社だったり、自動車のローンが残っていて所有者がファイナンスなどの会社の場合には、名義変更手続きではなく、各会社との契約更新手続きを行うことになります。これらの場合には、各会社に連絡をして契約更新手続きに対応してもらいましょう。

【2:法廷相続人たちで話し合い、所有者を決める】
相続人がひとりだけの場合は別として、複数の場合には共有財産から誰の所有にするのかを遺産分割協議の話し合いで決めなければなりません。
ここでは、後々トラブルにならないように、相続人全員が納得する形で決めることが大切です。

【3:「遺産分割協議書」を作成する】
自動車を相続する新しい名義人が決まったら「遺産分割協議書」を作成します。ここには、全員が合意した内容であることを証明するために、相続人全員の署名と捺印(実印)をしておきます。

そして
・車名
・登録番号(ナンバープレートの番号)
・型式
・車台番号

を記載しておきます。

ただし、相続人がひとりの場合や軽自動車の場合には「遺産分割協議書」は必要ありません。

【4:名義変更に必要な種類をそろえる】
名義変更手続きに必要な書類は以下の通りです。

<普通自動車を特定のひとりが相続する(査定100万円以上)>
・被相続人の自動車検査表(有効期限があるもの)
・被相続人の死亡が確認できる戸籍謄本または除籍謄本
・相続する人全員の記載がある戸籍謄本
・新しく所有する相続人の印鑑証明
・新しく所有する相続人の車庫証明(場所が変わらない場合は不要)
・ナンバープレート
・遺産分割協議書

そして相続する普通自動車が100万円以下の場合には、上記の書類に加えて、査定額が100万円以下であることを証明する書類が必要です。
この時は「遺産分割協議書」の代わりに「遺産分割協議成立申立書」をそろえます。

<軽自動車を相続する>
軽自動車の場合には、必要書類は少なくて済みます。
・自動車検査証
・申請依頼書
・新しく所有する相続人の住民票
・ナンバープレート
・軽自動車税申告書
・自動車検査証記入申請書

【5:陸運局に手続きに行く】
必要書類を持って陸運局に出向きます。
当日には、
・移転登録申請書
・手数料納付書
・自動車税申告書
・新しく所有する相続人の実印

上記が必要です。実印以外は陸運局などでそろうので入手しましょう。

相続しない場合の手続き(第三者への譲渡、売却など)

自動車を相続人以外の第三者に譲渡、売却をする場合には、手続きの内容が多少変わってきます。

まずは上項「名義変更の手続きの流れ」の【3:「遺産分割協議書」を作成する】までを行います。「遺産分割証明書」には第三者へ譲渡する旨を記載しておき、譲渡証明書を準備します。

【第三者への譲渡手続きに必要な書類】
<代表相続人が準備する書類>
・自動車検査証
・被相続人の戸籍謄本または戸籍の全部事項証明書
・相続人全員の記載がある戸籍謄本
・遺産分割協議書
・譲渡証明書
・代表相続人の印鑑証明

<新しく所有者になる第三者が準備する書類>
・印鑑証明書
・実印
・車庫証明

これらをそろえたら陸運局で手続きを行います。

【自動車を売却する場合】
最初に代表相続人への名義変更を行います。自動車相続のすべての手続きが終了したら、売却手続きに入ります。

自動車を相続した際の名義変更は、自動車の種類などによって変わってくる場合もあります。また、必要な書類は「有効期限の切れていないもの、手続きの3カ月以内のもの」が原則です。さらに当事者以外の人が手続きをするには、委任状が必要です。

自分で手続きを進めたいときには、陸運局で相談するといいでしょう。詳しく教えてくれます。

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太田英之
専門家

太田英之(司法書士)

クローバー司法書士事務所

不動産登記・商業登記申請業務をはじめ、相続・遺産承継業務に力を入れる。後見制度や信託制度に関する知識・経験も豊富。会社や個人からの相談を親身に聞き、法的課題を整理、解決策を提案するスキルに強みをもつ。

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