言葉のはじまり
その子の内側の体験の世界」第55回目を解説します。
キーワードは、「その子を知る」「その子にはたらきかける」「その子を見守る」です。
「その子を見守る」の意は、その子を放ったらかしにするという意味ではありません。
その子の特性を理解し、その子が社会に積極的にかかわることをサポートするという意味です。
また、今まで解説してきたことと重複するかもしれませんので、今までのコラムも再読していただければ幸いです。
次は、「その子にはたらきかける」です。
親は、わが子が5歳になるまでに積極的にかかわることがとてもたいせつになります。
これは、子育ては「脳を育てること」で詳細に解説しました。
もう一度、読み直しましょう。
「その子にはたらきかける」12
やりとりから関心の共有が始まる2
探索活動は乳児の自発的、能動的な行動ですが、その背後で養育者をはじめ、周りの大人たちが極めて大きな役割を果たしています。
第一に、周りの大人たちは乳児の探索を自ずと一定の方向へリードするはたらきをしています。例えば、ガラガラだったら振ってみせる、笛なら吹いてみせるなどして、乳児の目を私たちが社会的に共有している「意味」と「約束」に向けようとします。つまり、少しでも認識的な発達を促す方向へと子どもをいざなっているのです。
第二に、事物に対する乳児の関心を、共に分かち合おうとする関りを大人は絶えずしています。乳児にとって外界はまだ意味によって分けられていない混沌とした知覚世界ですが、大人たちにとっては、外界はすでに「意味をもつもの」と「意味をもたないもの」とに分かたれ秩序付けられた世界となっています。
そのため、たまたま乳児が猫とか犬とか、私たちにとって意味をもつ対象を注視して入れば、私たちはすぐさまそれに気づきます。そして、言葉のわからない赤ちゃんに話しかけてもむだと思う養育者はおらず、早速「ニャーニャ、かわいいな」「ワンワンだね」と声をかけ、一緒にそれに視線を向けています。
無意識に、子どもから引き出されるように、養育者は日々繰り返します。また、探索活動を子どもに任せきりにはしないで、大人のほうからも「ほら、お花よ」「ワンワンだね」と、機会あるごとに私たちにとって意味をもつ対象へと子どもの注意をいざなっています。
この関りは、乳児が注視しているものに大人が追随して視線を向けるところから始まります。これが重ねられるうちに乳児の方も大人の視線をたどって、大人が注意を向けているものに関心を向けるようになって、双方が一つの対象に同時に注意を向けることが可能になります。「関心の共有」です。
発達心理学では、これを「共同注意」と呼び、発達上の重要なポイントです。共同注視が遅れる場合、精神発達、とりわけ関係(社会性)の発達の遅れがもたらされるのです。
次回に続きます。