その子の内側の体験の世界31
その子の内側の体験の世界」第54回目を解説します。
キーワードは、「その子を知る」「その子にはたらきかける」「その子を見守る」です。
「その子を見守る」の意は、その子を放ったらかしにするという意味ではありません。
その子の特性を理解し、その子が社会に積極的にかかわることをサポートするという意味です。
また、今まで解説してきたことと重複するかもしれませんので、今までのコラムも再読していただければ幸いです。
次は、「その子にはたらきかける」です。
親は、わが子が5歳になるまでに積極的にかかわることがとてもたいせつになります。
これは、子育ては「脳を育てること」で詳細に解説しました。
もう一度、読み直しましょう。
「その子にはたらきかける」11
やりとりから関心の共有が始まる
養育者と乳児の親密な情動の交流から、お互いに共有される状態が生まれます。
それは、人との間での安心や情動の共有が確かなものとなるのにあわせて、それを支えとして、事物に対する探索活動もさらに活発になっていきます。
運動能力も伸びて、注視だけではなく、手を伸ばして取ろうとしたり、触ったり、口にもっていったり、握ったり、引っ張ったり、もてる感覚能力と運動能力を総動員して乳児は世界の探索を重ねます。
ピアジェは、乳児の活発な探索活動によって、乳児は周りの様々な事物は、それぞれ一定の形や性状を備えた実体であることを知っていきます。外界は様々な性状の実体の集まりからなり、実体とは目の前から見えなくなっても、無くなってしまうわけではないことも知っていきます。もちろん、まだ言語以前で、認識的に理解しているわけではありませんが、そのような認知的なシェマが形成されていきます。
この探索活動は、ピアジェが強調したように乳児の自発的・能動的な行動です。けれども、実はその背後で養育者をはじめ、周りの大人たちが極めて大きな役割を果たしているのです。
次回に続きます。