その子の内側の体験の世界8
「その子の内側の体験の世界」第23回目を解説します。
キーワードは、「その子を知る」「その子にはたらきかける」「その子を見守る」です。
また、今まで解説してきたことと重複するかもしれませんので、今までのコラムも再読していただければ幸いです。
「その子を知る」22
○永続性が理解できても、保存は理解できない
対象が知覚野から消えても存在が消えるわけではないという「永続性」の理解はできても、知覚上のかたちが変わっても量は変わるわけではないという「保存」の理解は、まだこの段階では育っていません。
ピアジェ研究のおもしろさは、いろいろ工夫を凝らした単純明快な実験によって、こうした子どもの知性の特質を具体的に実証的にあぶりだしてみせることです。
「保存」の理解のほうが遅れるのは、「永続性」の理解には、お母さんの顔が見えなくなっても、また現れるという体験の事実繰り返しで理解できますが、「保存」の理解には「量とは加えたり減らしたりしない限り同じ」という論理の形成が必要だからです。
この時期は、言葉を得て認識的な概念思考のはじまりで、論理的な概念操作をまだ十分には理解できないのです。要するに「理屈で考える」ことが不十分で、感覚的な認知、つまり「見かけ」にまだ惑わされてしまいます。
「保存」のような論理的理解が可能になるためには、引き延ばした長い粘土も丸めれば元の小さな塊に戻るという理解ができなければなりません。(つまり、量は変わらないのだ)この理解をピアジェは「可逆操作」とよんだ。前操作期では、この可逆操作がまだ理解できないのです。
次回に続きます。