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自ら行う自主的な能動的「身体運動」とは

吉田洋一

吉田洋一

テーマ:運動と脳

 前回のコラムで、「スポーツや体育を運動へと転換するためには」を解説しました。
 もう少し、詳しく説明してほしいとのお尋ねがありました。
 既に過去のコラムで解説してきましたが、再度解説いたします。

 子どもが活発に動く様子は、保護者の方はよくご存じです。そこには「笑顔」や「喜び」に溢れた「楽しい」「心地よい」子どもの身体運動があります。
 では、なぜ活発な身体運動がケアになるのでしょうか。それは、脳科学の研究により実証されたのです。アメリカの医学博士ジョンJ.レイティ氏は、「楽しく汗を流せる運動なら何でも良い。とにかく何か身体を動かすことに夢中になってほしい。」「運動は脳の機能を最善にする唯一にして最強の手段です。」「何百という研究論文に基づいており、その論文の大半は最近発表されたものだ。」「運動が脳の働きをどれほど向上させるかを多くの人が知り、それをモチベーションとして積極的に運動を生活に取り入れるようになることだ。もっとも、それを義務だと思ってほしくない。運動を無理強いするつもりはない。そんなことをしても無駄だ。ラットの実験により、強制された運動では自発的な運動ほどの効果がでないことがわかっている。運動したいと心から思えるようになることだ。」(「脳を鍛えるには運動しかない」ジョンJ.レイティ著 NHK出版 p12,308)
 また、スポーツ生理学者のクレイグ・ブルーダー氏は、学校の体育の授業において「生徒が上手くこなせて満足できるのも見つけ、無理なく楽しめる運動をさせることです。」「例えば、バスケットボールをしなさいというように、選択の余地を与えず、まるで強制的に押し付けていては、生徒はそれを続けるはずはありません。」「生徒たちは身体の働きを学ぶとともに、健康な生活習慣を身につけ、その楽しさを学んでいる。」「体育教師たちは幅広い選択肢を用意して、どの生徒もそれぞれ楽しめるものを見つけられるようにしている。」「子どもたちがテレビの前に座ることでなく、身体を動かすことに夢中になるように仕向けている。」(「脳を鍛えるには運動しかない」ジョンJ.レイティ著 NHK出版 p36)
 そして、カナダのマギル大学の心理学者ドナルド・ヘップ氏の著書「行動の機構―神経心理学理論」を発表し、ラットを使った研究で「使用がもたらす可塑性」という、学習によって刺激を受けたラットの脳のシナプスは、自らを配列し直すと説いた。ヘップの「使用がもたらす可塑性」を実証するため、バークレーの心理学者のグループは、脳にとって運動は新しい経験になるということ、つまり、感覚刺激と社会的刺激の多い環境で暮らすと、脳の構造と機能が変わることを発見した。つまり、ラットの好きな環境(環境富化)に置かれたラットたちは、学習作業をうまくこなしただけでなく、脳が重くなっていました。など、科学的な裏付けがたくさん発表されています。(「脳を鍛えるには運動しかない」ジョンJ.レイティ著 NHK出版 p58)
 保護者の皆さまは、わが子にとって「楽しい、心地よい身体運動」は何でしょうか。これまで、なかったでしょうか。もう一度、わが子が「活発に、身体を動かす」ことを考えてみましょう。そして、実践しましょう。

 この「楽しい、心地よい身体運動」から、吉田は「スポーツ」や「体育」にも転換できることを解明しました。
 子どもの心身の発達をとらえていく場合、通常は「わかること(理解する)」と「できること(スキル(教養や訓練を通して獲得した能力(技能))の獲得)のどちらかにポイントを置くかで立場が分かれます。
 吉田は、ボール遊びやテニス指導及びコオーディネーショントレーニングにおいて、子どもが自分なりに「わかること」と「できること」を生み出す心の働きそのものの発達を明らかにしようとしてきました。(「子どもの発達の意欲値及び自分の伸びしろ値理論」)「わかる」と「できる」という働きは、子ども自らの気づき、発見です。
 吉田は、子どもと対象との相互作用のなかで何らかの新しいものの産出があり、そうした創造のプロセスが子どもの心身の発達の本質であると考えています。そして、子どもが自らわかったことや自らできることに基づいて反応することが発達です。
 子どもは自らわかったことやできることを他者と共有し合うなかで、すなわち、他者による承認、他者との協働、他者との共同体の感覚などを経ながら、次第にそれを自覚し、意図的に試み、生きる力にしていきます。
 吉田は、このように子どもの心身の発達支援には、子どもが自らの「わかる」と「できる」という働きを基盤にし、子どものイニシアティブ(物事を率先して行うこと)を尊重しながら進められることが重要と説きます。つまり、子ども自身が自分で「わかる」と「できる」ことを表出させることを助長する活動支援が必要不可欠です。ご父母の方や子どもの活動を支援している方も、子どもの心のなかに何を産み出していくべきかをテーマにしながら、子どもに対して発見的・創造的に関わっていく必要があります。
 ボール遊びは「運動」です。テニスは「スポーツ」です。コオーディネーショントレーニングは「体育」です。
 それぞれの指導者や学校の先生におかれましては、子どもたちが「自ら行う自主的な能動的「身体運動」へ、どのように転換できるかが課題になります。
 次回に続きます。

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吉田洋一
専門家

吉田洋一(心身発達の心理士)

一般社団法人JSTC

子どもがテニスを通じて、身体の動かし方や潜在的な能力を引き出し、運動の基礎づくりをサポート。さらに子どもが主体的に取り組む大会を企画開催し、その中で対話的な深い学びを習得し、自律性を高める指導を行う。

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