その子の内側の体験の世界25
一般にしつけの始まる1歳代に入ると言語の獲得が始まります。言語もまた人間が社会的に文化的につくり出した約束やルールで、しつけと言葉の獲得とが時期的に重なるのは、偶然ではないかもしれません。しつけとの違いは、言葉の方は、大人が意図的にはたらきかけなくても、子どもが自ずから自発的に習得していくとこです。しかし、ここでも大人は知らず知らずに大きな関りをしています。
まず、言語がどのような構造をもっているか説明しましょう。
言葉の構造ー指示性(認識)と表出性(関係)
情報伝達の信号系としての言葉なら、他の動物でももっています。しかし、人間の言葉は単なる信号ではなく、世界をとらえ分けるための意味(概念)や約束(規範)の体系を成しています。私たちが物事を認知的にではなく認識的にとらえるのは、この人間固有の言語のはたらきによります。この言語のはたらきを言語の「指示性」と呼びます。「これは〇〇です。」など対象を指し示すあるいは認識する機能です。
それと同時に、人間の言葉は相互交流のチャンネルであり、私たちは言葉によって体験を共有しあい「関係」をもちあっています。この場合、単に情報を伝え合うのではなく、何よりも情動を分かち合うはたらきを言葉は備えています。このはたらきを言語の「表出性」と呼びます。「えーすごい!」など情動を表出する機能で、情動は人間同士の関わりのなかで絶えず生起し、また人間同士の関わりを動かす大きな力となっています。
次回に続きます。