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子育て、保育、教育とは、脳を育てること

吉田洋一

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テーマ:運動による心身の発達

 これまで、脳からみた子どもの心身の発達を述べてきました。
 子どもの心身の行動を促しているのは、心つまり脳です。脳が行動を派生させているのです。脳の神経回路は、環境の刺激によって変化します。環境の刺激とは、子育て、保育、教育などです。つまり、子育て、保育、教育などは、子どもの脳を育てているということになります。
 子どもが、環境に適合する行動を学習したり,欲求を満足させるために環境に働きかけてそれを変化させる努力をしたりする適応行動をするために、脳では神経伝達物質のコントロールやシナプスのネットワーク形成が重要で不可欠になります。
 脳の成熟のプロセスからみて、0~3歳頃までの環境づくりがたいせつです。最適は8歳から10歳頃までに、遅くても15歳頃までに、その後の人生を豊かに過ごすための基礎をつくることが望ましいとされています。その後を過ぎると、カウンセリングや発達臨床の対象となっていきます。
 脳が育つためには、神経伝達物質の分泌量を適量に確保することが必要です。例えば、ドーパミンの量が少なければ、パーキンソン病のような症状を出します。ドーパミンの量が多すぎれば、統合失調症のような症状を出しやすくなります。神経伝達物質は、基本的には、神経細胞(ニューロン)が細胞体の核にある遺伝子の命令によって生み出されますが、精神的な環境や食生活によっても大きく左右されます。それゆえ、赤ちゃんの時からスキンシップによりセロトニンの量を適量に確保することや楽しく、心地よいときにはドーパミンの量を適量に確保することが必要です。つまり、脳のシナプスにこのような神経伝達物質が伝達されるようなネットワークをつくることが必要なのです。
 次に、神経伝達物質が伝達されるためには、神経細胞(ニューロン)と神経細胞(ニューロン)の接点であるシナプスを増やすことが必要です。神経細胞(ニューロン)は、脳全体で約1000億個あり、大脳新皮質で140億個あるといわれています。乳幼児期から20歳頃までは、この数はあまり変わりませんが、20歳を過ぎると一日10万個程度は滅します。
 幼児に比べて、大人の方がより複雑な行動ができるのは、神経細胞(ニューロン)の数の多少ではなく、大人になるに従い、神経細胞(ニューロン)間のシナプスが増えていくことによります。これを脳のネットワークをつくるといいます。
 シナプスは生後間もない頃から急激に増え、生後数カ月で最大になります。
 シナプスの数は、幼児期(8歳頃)を経ると減少傾向をたどります。これは、活用されるシナプスは強められて生き残り、活用されないシナプスは滅します。
 これを「シナプスの刈り込み」といいます。
 ただし、もちろんシナプスの数は減少しますが、1つの神経細胞(ニューロン)に接続するシナプスの数は逆に増えるのです。
 二つの神経細胞が出会っても、必ずシナプスをつくれるわけではありません。神経細胞(ニューロン)の軸索や樹状突起が伸びたときに、ターゲットになる神経細胞(ニューロン)が出す神経栄養因子がなければ、誘導してもらえずにシナプスはつくれないのです。つくれない場合は、軸索や樹状突起を伸ばした方の神経細胞(ニューロン)は滅します。

ここに、「脳を育てることは、子どもの心身の発達のケア」のヒントが隠されています。つまり、ケアとは、私の私見ですが、
1 シナプスの刈り込み前にケアをする。8歳頃がピークですが、15歳頃までにケアをする。
2 神経細胞(ニューロン)と神経細胞(ニューロン)の接点であるシナプスを増やす。脳のネットワークを増やす。15歳までにケアをする。
3 神経栄養因子をつくる。15歳までにケアをする。

 ケアについては、前回までにコラムで説明させていただきました。
 保護者の皆さま、保育に、教育に携わっていらっしゃる方々の皆さまへ、このように、子どもの心身の発達のケアは、脳からみますと早急に行う必要があります。子どもがどうしたら「楽しく、心地よい運動」ができるか、子どもの優越性追求からの「方向付けの取り組み」を早急にお願いいたします。
 次回に続きます。

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吉田洋一
専門家

吉田洋一(心身発達の心理士)

一般社団法人JSTC

子どもがテニスを通じて、身体の動かし方や潜在的な能力を引き出し、運動の基礎づくりをサポート。さらに子どもが主体的に取り組む大会を企画開催し、その中で対話的な深い学びを習得し、自律性を高める指導を行う。

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