子育て、保育、教育とは、脳を育てること
前回、子どもたちに「Jr-Open」というテニスの競技スポーツを提供して、「自分と向き合う勇気」づけを行うことを説明しました。
「Jr-Open」は実力順のリーグ戦です。ですから、同じ競技レベルのみんながその日一日一緒のリーグでプレーをします。つまり、勝敗に拘ったトーナメント戦ではないということです。勝つためには手段を択ばないような、つまり、自分の教え子が勝てるような偏った組み合わせではないのです。これを前回は、全ての対戦で勝つことは稀です。敗けたことをどう考えるかが「生きる力」になります。敗けたことを自分の弱みと受け止められるかどうかです。また、主体的な行動の結果や経験から失敗や挫折を体験します。そして、能動的に弱みに向き合うことで自己成長が促されますと述べました。
それでも、「競技スポーツでしょ。他の人より優れたい。」という自己の優越性という人間の本性が現れます。
このことについて、アルフレッド・アドラーは、著書「子どもの教育」星雲社において次のように述べています。
<優越性の追求の方向付け>
自分たちの人生構造を論理的で客観的な視点から見ない人は、大抵は自分の行動パターンの統一性、一貫性を見ることはできない。問題が現れた時、驚いてしまい、それに取り組む代わりに、問題に出会うような道を選んだことが間違いだった、と考えるのである。子どもについては次のことも覚えておかなければならない。子どもは有用な道を放棄すると、問題の重要性を理解しないので、否定的な経験から肯定的な教訓を学ぶことができないということである。それゆえ、子どもの人生のあらゆる出来事を解釈する時に、人生はつながりのない出来事の連続ではなく、連続した糸であると子どもに教えることが必要である。どんな出来事も人生全体の連関から取り出すことはできない。それに先立つすべてのこととの関係においてのみ説明することができるのである。子どもがこのことを理解すると、なぜ自分が間違った道に踏み込んだか理解できるだろう。(P53)
この経験から、自分の気質、性格、タイプ性、価値観、考え方、態度・行動などを深く知り、それを自分自身で納得して受け止めます。自己理解です。また、この体験したことから感じる自分の受け止め方や反応の仕方により、自分を認識する力を保ちます。自己覚知です。この二つは、自分自身を超越した場所から客観的に見ることや自分自身をコントロールし、冷静な判断や行動ができる能力、つまりメタ認知能力を育みます。
また、アルフレッド・アドラーが説くように、人生のつながりの有用な道は、結果ではなく経験つまり、いかに行動したかの経過が重要だということを認識するのです。次回に続きます。