脳のメッセンジャー役の物質たち
神経発達症(発達障害)のケアには「活発に、身体を動かすこと」が必要であることを説明しました。
このケアは何なのかということですが、これが脳のシナプスの可塑性を意味しています。「身体を活発に動かすほどに脳を変えられる」つまり、神経回路に変化を与えられるのです。神経回路に変化を与えるとは、新しい脳のネットワークが形成されるということです。
もう一度復習しましょう。「身体を活発に」とは、自ら、自主的に、自分の意思で、自己決定でなど他の人が指示、命令、指導など関与しないことを意味します。
このケア後に子どもたちの脳では次のような現象が起きているのです。
脳が情報を取り込むように命じられると、自然に神経細胞(ニューロン)間の活動が起きます。その活動が繰り返されるほど、神経細胞(ニューロン)同士はより強く連絡し合い、信号は伝達しやすくなり、神経細胞(ニューロン)間の結びつきができていきます。つまり、学習を繰り返すことでシナプスそのものが大きくなり、結合がより強くなります。また、シナプスの近くの貯蔵庫に神経伝達物質が生成され蓄えられます。神経細胞(ニューロン)は木に似ていて、その樹状の枝に葉の代わりにシナプスがついています。やがて新しい枝が出てシナプスが増え、結合はさらに強くなるのです。これがシナプスの可塑性なのです。
神経細胞(ニューロン)同士が出会っても、必ずシナプスを作れるわけではありません。神経細胞(ニューロン)の軸索や樹状突起が伸びたとき、ターゲットになる神経細胞(ニューロン)が出す神経栄養因子ニューロトロフィン(BDNFなどタンパク質の一種)がなければシナプスは形成されないのです。この神経栄養因子を神経伝達物質といいます。
この神経伝達物質の生成に、子どもにとっての「活発に、身体を動かすこと」つまり「楽しい、心地よい運動」が積極的に関わっているのです。
次回に続きます。