なぜ個人差が生じるのか
なぜ、診断に不一致が起きるのでしょうか。障害相互だけではなく定型発達との間でも切れ目のない連続性をもっています。こうした連続的な切れ目のない分布に、あえて人為的な境界線を引いて「アスペルガー症候群」「自閉症」「知的障害」「定型発達」等に切り分けるのが診断ですが、実際にはどちらともみえる、どちらともつかないケースがたくさん出てきて、たとえ操作的診断を用いてもやはり診断の不一致が起きます。
診断の不一致が起きるもう一つの要因は、子どもは日々成長しています。まだ発達の道を歩んでいるのです。例えば、4歳の時A地点にいた太郎くんは、発達の道を歩んで、10歳の時にはA'のところまでたどり着いています。太郎くんなりにずいぶん成長してきたわけですが、他のみんなも発達しているため、10歳の分布の中では平均から水が開いて、4歳の時よりも重い診断名に変わることが予想されます。もう一人のB子さんは、4歳の時B地点にいましたが、10歳の時にはB’のところまでたどり着きました。B’地点までたどり着いたことにより、4歳の時よりも軽い診断名に変わることが予想されます。
このように診断の時点によって、診断名は変わる可能性をもっています。前に診てもらった病院では「〇〇」だったのに、今度の病院では「△△」という不一致はまれではありません。厳密にいえば、発達期が過ぎるまでは確定診断はできないということです。この意味で、発達障害の「早期診断」やそれに基づく「診断の告知」には、極めて慎重に行うものであることが理解できます。
※参考文献 子どものための精神医学 滝川一廣著