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診断について②

吉田洋一

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テーマ:発達障害とは

 前回で、発達障害は7つに分類されると説明しました。この7つの共通点は、平均的な精神発達、すなわち定型発達にくらべたとき、なんらかの精神状態(こころのはたらき)の発達に「おくれ」をもっていることです。つまり、発達障害とは、なんらかの精神発達のおくれをもち、それが生きにくさをもたらしていることになります。
 これが発達障害の定義です。そのうえで、どんな精神機能(こころのはたらき)の発達がおくれているのか、どの程度おくれているのかのちがいによって、7つを概念的に種類分けすることができます。主なもので、
 知的能力障害群(知的障害)は、認識(理解)の全般が平均よりも一定以上おくれるもので、認識の遅れの程度によって、軽度、中度、重度、最重度に分けます。
 自閉スペクトラム症は、関係(社会性)の発達の全般が平均水準よりも一定以上おくれるもので、認識のおくれはみられないアスペルガー症候群、認識のおくれは軽度の高機能自閉症、認識のおくれも大きい自閉症に分けます。
 注意欠如・多動症(ADHD)は、全般としてのおくれはないが、「注意集中困難」「多動」「衝動性」の3つの行動特性が年齢不相応に目立つものです。
 限局性学習症(学習障害、LD)は、全般としてのおくれはないが、ある特定の精神機能の発達だけがおくれるものです。例:発達性言語障害、発達性読字障害、発達性書字障害、発達性計算障害など
 以上のように、精神発達の基本構造は、「認識(理解)の発達」と「関係(社会性)の発達」の2軸からなります。知的能力障害群(知的障害)は、認識の発達全般のおくれが前面に出ます。自閉スペクトラム症は、関係の発達全般のおくれが前面に出ます。それ以外のものは、全般的なおくれはなく、ある発達領域だけが取り残されたようにおくれをみせます。
 以上概念的に説明しましたが、実際の子どもたちは、認識の発達と関係の発達が支えあっているため、知的障害と自閉スペクトラム症とはつながっています。さらに知的障害や自閉スペクトラム症の子どもは、言葉や読み書きや計算などにしばしばおくれをもち、学習障害と同様の問題も示します。注意集中困難、多動、衝動性も注意欠如・多動症(ADHD)とは限らず、知的障害や自閉スペクトラム症にも多かれ少なかれみられます。また、注意欠如・多動症(ADHD)の子どもが学習障害のような知的能力に見合わない読み書きや計算の不得手さを示すこともあります。
 つまり、発達障害とはとても曖昧な世界であり、Aクリニックでは「注意欠如・多動症(ADHD)」と診断されたのに、B病院では「自閉スペクトラム症」と診断されるケースも多々あり、医師の間でも診断名が一致しないこともあります。

※参考文献 子どものための精神医学 滝川一廣著

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吉田洋一
専門家

吉田洋一(心身発達の心理士)

一般社団法人JSTC

子どもがテニスを通じて、身体の動かし方や潜在的な能力を引き出し、運動の基礎づくりをサポート。さらに子どもが主体的に取り組む大会を企画開催し、その中で対話的な深い学びを習得し、自律性を高める指導を行う。

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