精神発達の歩み②
<なぜ増加したか>
90年代から発達障害、とりわけ自閉症圏の増加がいわれ、やがて一種の発達障害ブームのような様相を呈するようになりました。もし自閉症スペクトラムの有力な要因が多因子遺伝による自然の個体差とすれば、ある時代から発生率が急に上がるとは考えにくいのです。
この増加は、80年代に英米の学会でアスペルガー症候群が(再)発見され、自閉症領域が中心だった診断範囲がアスペルガー症候群領域まで広がったためと考えられます。自閉症スペクトラムの半分以上はアスペルガー症候群領域だから一気に増えても理屈上はおかしくありません(倍増する理屈になります)。スペクトラム全体が増えたわけではなく、増加分はほとんどがアスペルガー症候群領域です。
参考文献 子どものための精神医学 滝川一廣著