遺産相続では、生前贈与を受けた分も計算しなければならない?
前回のコラムで、遺産の内訳として故人の土地建物が大半を占め、現金や預貯金が少ないケースでは、遺産相続で揉めやすいという事例を紹介しましたが、これは「二次相続」の場合に特に多いです。「二次相続」とは、例えば、まず父親が先になくなって相続が発生し(一次相続)、その後母親が亡くなって再度相続が発生する(二次相続)場合の後者の相続をいいます。
一般に、平均寿命は女性の方が長いですし、夫(父)の方が妻(母)よりも年上である夫婦が多い今の70代以上の世代では、相続においても、まず先に父親が亡くなり、その後に母親が亡くなるというケースの方が多いと思われます。また、自宅の名義については父親単独か、父母の共有名義であることが多いと思われます。
父親が亡くなった際の一次相続では、まだ自宅には母親が住んでいますし、民法の法定相続分も(子がいる場合は)配偶者が2分の1ですので、まずは、自宅の土地建物は母親が相続するというケースが多いでしょう。また、現金や預貯金についても、残された母親の生活資金ということで、その多くを母親が相続することになります。
なお、相続税がかかる位の遺産がある場合でも、配偶者が相続する場合には税法上の各種の特例が利用できるため、有利になるという事情もあります。
さらに、よく「親の目の黒いうちは」といいますが、母親が健在であれば、それぞれの家庭にもよりますが、なかなか「親の意向」を無視してまで、子供同士で遺産の件で争うことにはなりにくく、一定の歯止めがかかります。また子供側の立場としても、遺産を手に入れるのは、母親が亡くなった後でも(嫌な言い方ですが)チャンスがあるという思惑もあります。
しかし、その後母親も亡くなって二次相続が発生すると、自宅や現金、預貯金を、複数の相続人でどう相続するかの問題に直面することになります。自宅については、亡くなった父母と同居している子供がいない場合には「空家」となりますので、売却して現金化した上で、現金や預貯金と合算して、そのあとは民法の法定相続分に沿って兄弟姉妹でドライに分けるという方法も考えられますが、現実には実家を売ることに対する心理的抵抗や、次回以降に触れますが、亡くなった父母から生前に贈与を受けていた相続人がいる場合には、やはり分け方が難しくなります。