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森欣史

遺産相続の手続きと遺言書作成をサポートするプロ

森欣史(もりよしふみ) / 司法書士

金沢みらい共同事務所(森司法書士・行政書士事務所)

コラム

民法の法定相続分は守らなくてもいい?

2013年11月22日

テーマ:遺産相続争いの実態

コラムカテゴリ:ビジネス

コラムキーワード: 相続 手続き

 日本の民法では「法定相続人」と「相続分」が定められています。例えば、亡くなった方に配偶者と子供が2人いる場合には、法定相続人は配偶者と子供で、法定相続分は配偶者が2分の1、残る2分の1が子供の分になり、それを子供の人数で割りますので、子供が2人の場合には各々4分の1ずつとなります。また、亡くなった方に子供がいない場合に、その父母(直系尊属)が健在の時には、法定相続分は配偶者が3分の2,父母が3分の1となります。そして、亡くなった方に子供がおらず、父母等(直系尊属)もすでに亡くなっている場合には、配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1となります。

 最近は、当事務所に相談にお越しになる方も、みなさんよく勉強されていますので、このあたりのことは私から特に説明しなくても最初から理解しています。しかし、なかには誤解されている方もいます。よくある誤解は、民法で決まっているがために、この法定相続分は権利として「当然もらえる」という考え、あるいは「法定相続分通りにしないといけない」という考えです。

 実は、遺産相続のルールに関しては優先順位があります。

 1.遺言による指定
 2.遺産分割協議
 3.民法の法定相続分

 です。まず、亡くなった方が遺言で遺産の分け方を書き残している場合にはそれに従います。民法では、遺留分に反しない限り、まず遺言による指定が優先すると定めています。また、遺言では法定相続人以外の人や団体にも、財産を「遺贈」することもできます。

 次に、遺言がない場合には、相続人全員で、遺産をどう分けるかの話し合い(遺産分割協議)を行います。ここで、相続人全員の同意があれば、たとえば「遺産はすべて配偶者(あるいは長男)が相続する」というように、ある意味偏った配分でも問題ありません。

 しかし、この話し合いがまとまらない場合は、最終的には家庭裁判所の調停や審判で、相続分を定めることになります。そして、ここで初めて「法定相続分」が登場してくるわけです。つまり、極端な言い方をすると「法定相続分」というのは必ずしも相続人が守らなければならないルールではなく、裁判官がこの割合を目安に遺産分割の調停や審判をしなければならないというルールなのです。

 また、別の場面では、遺言で指定された遺産相続の内容に不満のある相続人が、「遺留分」といって法律で保証された最低限の「取り分」を確保しようと争うこともありますが、その際の計算は「法定相続分」×「遺留分割合」となり、ここでも「法定相続分」が使用されますが、やはり争いの場面です。

 なお、「法定相続分」は相続税の計算でも使用されます。しかし、いずれにせよ、裁判官や税務署を拘束するルールではあっても、必ずしも相続人を直接拘束するルールではないのです(もちろん、「目安」として利用することは構いません)。

 そもそも、遺産がすべて現金や預貯金のように、ある程度きれいに分けられるような財産ばかりとは限りません。特に、自宅などの不動産や営業用の財産がある場合には、どうしても多少は偏った配分になってしまいます。
 しかし、そのような場合であっても、故人が遺言で書き残した意志を尊重することや、相続人同士が円満に話し合って納得した結果の方が、法定相続分よりも大切なのです。

この記事を書いたプロ

森欣史

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森欣史(金沢みらい共同事務所(森司法書士・行政書士事務所))

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