親の介護で苦労した子は、相続で報われるか?
遺産相続を巡るトラブルで割と多いのが、相続人自身ではなく、その親族が遺産相続に口を出して、話がまとまらなくなるケースです。例えば、母親が亡くなり、相続人が兄と弟の2名のみの場合に、兄弟間では遺産分割の話がまとまりかけているところ、互いの奥さんが口出しをして、話がこじれてしまうような例です。
相続は、基本的には当事者のみで話し合うのが好ましいとは思いますが、周りの親族、とりわけ奥さんにも言い分があります。例えば、被相続人と同居していた長男の嫁としては、実際に義母の食事や身の回りの世話をし、さらには介護までしていたような場合には、遠方に居住してろくに親の面倒も看ずに、盆や正月にたまに帰省してきたときだけお土産をもって親のご機嫌をとる夫の兄弟姉妹と遺産相続の割合が同じというのは、感情的に納得がいかないでしょう。反面、親と同居していない側の相続人の奥さんとしても、自分の夫の相続分が極端に少ない場合や、長男夫婦が遺産を隠しているのではないかと疑いをもつような場合には、やはり黙ってはいられないでしょう。
相続に関する相談を受けていると、よく、「うちは子供同士の仲はいいので、遺産相続で争いなんておきないよ」というお話しをされる方がいらっしゃいます。しかし、現実には、相続では相続人以外の方のさまざまな思惑や感情が絡み合い、たとえ遺産の金額がそれほど多くない場合でも、争いが起きることがあります。そして、ひとたび感情的にこじれてしまうと、話は単なる財産の分配の問題ではなくなり、やがては相手に対する人格攻撃にいたり、結果、せっかく仲の良かった兄弟姉妹が、二度とお互いに顔を合わせたくなくなるような険悪な仲になってしまうことも、残念ながら多いのが現実です。