糖尿病患者の運動しない運動療法
眠れない。気分がゆううつで、何も手につかない。食事ものどを越さない。つらい。眠れなくてつらい。
ほんとうにつらい。自分の身の置き所が分からなくなるほどつらい。
このような状態は、糖尿病など高血糖の方に多く見られますが、それ以外にもストレスを甘いものの過食や酒で解消する方にもつらい症状を訴える方があります。
糖尿病患者に限らず、うつ・不眠症状の治療は薬物療法が主流ですが、受診自体が心理的抵抗になって受診できない方や、薬に依存しているのではないかと悩む方がしばしばあります。
病院の薬と併用も出来ますから、自己判断で薬を中断せずに、からだを健康に戻す方法に取り組んでみましょう。
この記事では、うつのチェック法と、服薬以外に漢方薬や栄養素補充で改善する方法とその理由をご紹介します。
目次
1.うつと不眠症状
1-1うつとは?
1-2うつと不眠症状の関係
2.うつ病の原因
2-1環境要因
2-2身体的要因
2-3性格傾向
3.うつ病のセルフチェックの方法
4.うつ病の症状
4-1精神症状
4-2身体症状
5.うつ病の改善法
5-1休養と環境調整
5-2薬物治療
5-3漢方治療
●陰陽五行で漢方を考える
5-4精神療法
5-5栄養素補充療法
・栄養素補充が必要なわけ
・栄養素補充療法のしくみ
6.まとめ
1.うつ病と不眠症状
1-1うつ病とは
うつ病は、脳のエネルギーが欠乏しておこる気分障害の一つです。
一日中気分が落ち込んでいる、何をしても楽しめないといった精神症状とともに、眠れな
い、食欲がない、疲れやすいといった身体症状が現れます。
私たちは日常生活の中で仕事の失敗で落ち込んだり、大切な人との別れで悲しくなった
り、人間関係がうまくいかなかったりなど、さまざまな困難にぶつかります。
そのような時は、誰でも一時的に、落ち込む、眠れない、食欲がなくなることがありますが、
脳のエネルギーが欠乏していなければ、自然治癒力で時間の経過とともに改善されるの
が通常です。
時間の経過とともに改善しない状態が続き、仕事・家事・勉強など本来の社会的生活や
人との交際や趣味など日常生活全般に支障を来すようになると「うつ病」と診断されます。
でも、待ってください。うつ病と診断されるまでに「うつ症状」の時期があることをご存
じでしょうか? 自分でうつ病と思ってしまわないで、解決方法を一緒に見つけて行きましょう。
1-2うつ病と不眠症状の関係
うつ病の基本症状の中には不眠症状が含まれています。
不眠症状は4つの症状があります。
・なかなか寝つけない(入眠困難)
・寝てもしばらくするとすぐに目が覚めてしまう(中途覚醒)
・朝いつもより早く目覚めてしまう(早朝覚醒)
・さらにはぐっすり眠った感じがしない(熟眠障害)
うつ病の症状として早朝覚醒は出現しやすく、診断の基準にもなります。
不眠症状を持っていると、その時点ではうつ病の症状がなくても将来うつ病に発展する危険性があるということがわかっています。また、うつ病の他の症状がよくなっても不眠症状だけが残ると、そのことがうつ病を再発させやすくするといったデータもあります。
うつ病の予防、改善、うつ病の再発防止のためにも、不眠症状はなるべく早めに改善していくことが重要です。
2.うつ病の原因
うつ病の発症の原因は、正確にはよくわかっていませんが、いくつかの要因が積み重なって起こると考えられています。
うつ病の原因は、大きく分けると3つの要素があります。
1.環境要因 2.身体的要因 3.性格傾向 この3つです。
2-1環境要因
原因として一番多いかも知れませんが、周囲の環境や日常生活による精神的なストレスが主な要因です。
家族や親しい人の病気や死、人間関係のトラブル、リストラ、家庭内不和など、マイナスの出来事による場合や結婚、妊娠、就職、昇進など、プラスの出来事による場合もあります。
2-2身体的要因
望んでかかるわけではないのですが、病気やホルモンの変化による身体的なストレスも要因となります。
がん、糖尿病、脳血管障害、認知症などの長期の治療を要する病気や更年期障害、月経前後、出産後のホルモンの変化でおこる身体の不調によって起こります。
このように身体的な病気そのものにより、うつ病を引き起こしてしまう場合もありますが、病気による痛みや、持続する体調不良による影響も要因となります。
また、治療に必要な薬の副作用としてうつ病を発症してしまうこともあります。
2-3性格傾向
身もふたもなく聞こえてしまうようですが、性格傾向も要因のひとつです。うつ病になりやすい性格としては、生真面目、完璧主義、自分に厳しい、人に頼まれると断れない、気を遣うなどがあげられ、これらの性格は周囲からの評価も高く、好ましい性格ですが、すべてを完璧にやろうとしたり、周囲に配慮しすぎたりするためにストレスを受けやすいと考えられます。
3.うつ病のセルフチェックの方法
「うつ病かも?」と思っても病院を受診するのはハードルが高いと感じませんか?
うつ病の方の多くは、うつ病と受け入れるのが怖い、薬の副作用が気になる、自分の弱みを人に見せるのは嫌、おっくうで面倒などの理由から、なかなか受診に踏み出せないケースもあります。
どうしても決心がつかない場合は、セルフチェックを活用して、ご自身の状態を客観視してみましょう。
うつ病の診断基準にはアメリカ精神医学会による「DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル※」が用いられています。
※The Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, 5th edition
ここではDSM-5の診断基準に基づいて確認してみましょう。
症状で判断するうつ病の診断基準1
□一日中ずっと憂うつで気分が落ち込んでいる。
□一日中ずっと何に対する興味もなく、喜びを感じない。
症状で判断するうつ病の診断基準2
□食欲が低下または増加し、体重の減少(増加)が著しい。
□眠れない、もしくは寝すぎている。
□話し方や動作が鈍くなったり、イライラしたり、落ち着きがなくなる。
□疲れやすく、やる気がでない。
□自分はダメな人間だと感じ、自分を責めるような気持になる。
□考えがまとまらず集中力が低下して、決断できない。
□死ぬことを考えて、その計画を立てる。
診断基準1のどちらか1つを含み、診断基準2と合わせて5つの症状が当てはまる場合「うつ病」と診断されます。
「軽症のうつ病」は、日常生活において生産性は落ちてはいるものの、仕事や学校をなんとか休まず続けられる程度のものを指します。
また、6~7つの症状が当てはまる場合が「中等症のうつ病」、8つ以上当てはまるのが「重症のうつ病」の診断基準です。
ただし、これはあくまでも目安で、症状の数だけで重症度を判断することはできません。
当てはまる症状の数が少なくても「死ぬことを考えて、その計画をたてる」にチェックがある場合には注意が必要になります。適切な治療を受けるためにも、専門医による正しい診断を受ける必要があります。
4.うつ病の症状
うつ病ではさまざまな精神症状や身体症状が現れます。どんなものがあるか見て見ましょう。
4-1精神症状
代表的なのは、「憂うつな気分」と「何に対しても興味が持てない」という2つの症状です。
その他、無関心、不安、焦り、イライラ感、意欲がなくなる、ぼんやりすることが増える、
マイナス思考になる、喜んだり楽しんだりできなくなる、集中できず仕事でミスが増える
口数が少なくなる、外見や服装を気にしなくなる、飲酒量が増えるなどの症状が現れます。
さらに重症になると「死んでしまいたい」と思うようになるので注意が必要です。
また、うつ病は本人が気づきにくい場合もあるため、重症になる前に家族が気づくことで、早く治療に向かえるようにすることも大切です。
4-2身体症状
代表的なのは、体がだるい、疲れやすい、不眠症状または過眠の症状です。
その他、食欲がない、性欲がない、頭痛や肩こり、動悸、胃の不快感、便秘や下痢、めまい、生理不順、耳鳴りなどの症状が現れます。
生活に著しい支障をきたしている場合は、緊急性が高いため、いち早く専門医による正しい診断を受けましょう。
5.うつ・不眠症の改善法
まず、うつ症状と精神疾患としてのうつ病を少しだけ分けて考えましょう。
うつ病は一度発症すると時間が経つほど症状が重くなっていく傾向があります。うつ病は、重症になるほど回復が難しくなる傾向もあるため、できるだけ早く治療を開始することが早期回復には必要な条件となります。また、疲労などの積み重ねで生じたうつ症状もあります。いずれにしても、カウンセリングのできる精神科の医師にかかりながら並行して取り組んで行かれると良いです。
5-1休養と環境調整
うつ病は周囲の環境や日常生活による精神的なストレスが主な要因です。そのストレスと距離を置く環境を整えましょう。
ストレスで使いすぎてしまった脳をしっかり休ませることが治療の第一歩になります。
そのために
職場や学校、家庭などで受けるストレスを軽減できるように環境調整をすることが必要になってきます。仕事では残業を減らす、配置転換、あるいは思い切って休んで療養するなどすると良いでしょう。焦らずに休養をとって、自分のできることを無理なくできる環境を作ることが大切です。
うつ病の症状としてなかなか寝付けない、あるいは早朝に目が覚めてしまうといった不眠症状や食欲不振などを訴える方が多くみられるため、日常生活を規則正しいものにすることが大切です。
例えば、決まった時間に家を出る、決まった時間に食事をとる、起床・就寝の時間を一定にする、ウォーキングなどの軽い運動を取り入れるなどして規則正しい生活を心がけましょう。
5-2薬物治療
うつ病の治療には薬による治療が欠かせません。現在、日本で用いられているおもなうつ病治療薬は抗うつ薬です。
抗うつ薬は、神経細胞間で情報を伝える神経伝達物質(セロトニンとノルアドレナリン)の働きを高める作用があるため、うつ病の症状を改善させることができます。まず選択されるのがSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)、SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)、NaSSA(ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬)です。そのほかにも患者さんの症状に合わせて「抗不安薬」「睡眠導入薬」「気分安定薬」「非定型抗精神病薬」などが使用されます。
治療をスタートした直後は、数種類の薬を飲み比べながら、効果や副作用を確認します。
人によって効果や副作用に違いはありますが、うつ病の治療薬は即効性のある薬ではあ
りません。2週間~1カ月程度で効果が感じられるようになる傾向があります。
副作用を大きく怖がり過ぎずにはじめてみましょう。
当店の患者は、次にご紹介する漢方と栄養補充で減薬になっています。
5-3漢方療法
うつ病の治療は、薬物療法が基本となっていますが、軽症の場合は、安易に薬を使うべきではないとされています。患者さん自身も西洋薬は、副作用が強いイメージがあり、服用することに抵抗のある方も少なくありません。
そこで取り入れられているのが漢方薬でのうつ病治療です。日本の保険制度でも、漢方は保険適応として使えるようになっています。
病院での漢方薬は大きく3つの使われ方をします。
・軽症のうつ病での漢方薬での治療
・抗うつ剤の効果を増強
・抗うつ剤の副作用の軽減
漢方薬は天然の生薬を複数組み合わせて作られた薬で、体の中の「気(エネルギー)」、「血(血流)」、「水(水分)」のバランスを正常化し、その結果として、不眠症状やうつ状態を改善させます。体の中のバランスを正常化し、その結果として、不眠症状やうつ状態を改善させます。
特定の疾患や症状に対してピンポイントで作用する性質の西洋薬に対して、生薬に含まれたさまざまな成分が局所から全身まで広く作用する漢方薬は、その方の体質や症状に応じて適したものを選択して使うことによって、根本的なところにアプローチして調子を整えていくことが望めます。西洋薬に比べると副作用が少なく、強すぎないため、こどもや年配の方にも使用することができます。
漢方薬は、おひとりおひとりの体調をお聞きしてお選びしますが、病院でのうつ病治療で処方されることの多い漢方薬を紹介します。
補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
体力虚弱で、元気がなく、胃腸のはたらきが衰えて、疲れやすい方で、虚弱体質、疲労倦怠、病後・術後の衰弱、食欲不振、寝汗などがある方に使われます。
加味帰脾湯(かみきひとう)
体力中等度以下で、心身が疲れ、血色が悪く、ときに熱感を伴う方で、貧血、不眠症、精神不安、神経症などがある方に使われます。
抑肝散(よくかんさん)
神虚弱な体質で神経がたかぶる方の神経症、不眠症、小児夜なき、小児疳症などがある方に使われます。
加味逍遥散(かみしょうようさん)
体力中等度以下で、のぼせ感があり、肩がこり、疲れやすく、精神不安やいらだちなどの精神神経症状、ときに便秘の傾向のある方の冷え症、虚弱体質、月経不順、月経困難、更年期障害、血の道症、不眠症などがある方に使われます。
この他にも、保険適応にはないですが漢方家の手元には、天王補心丸(てんのうほしんがん)や自律神経の安定に効果的な紅蔘(こうじん)など、数多くの漢方処方があります。体調全般を相談して、体調管理して行かれると良いです。
どのような漢方がふさわしいのかは、次にご紹介する陰陽五行で考えます。
●陰陽五行で漢方を考える
陰陽五行と言うのは漢方の基本的な考え方で、身体そのものは「気血水」の三要素で構成さ
れていると考えますが、これらを身体の機能に応用したものが「五臓」であり、「五臓」は私た
ちの身体を五つの「機能系」に分け、一つのつながりとしてみていく考え方です。
木火土金水の5行に対して、それぞれ肝心脾肺腎の5臓があてがわれており、各々木は母とな
り心を子としてを養い、同様に心は母となり脾を子として養い、脾は母となり肺を子として
養い、肺は母となり腎を子として養い、腎は母となり肝を子として養って、ぐるりと一巡しま
す。
うつ・不眠の場合、腎心のバランスがいずれかの弱りから崩れているだけでなく、さらに天秤
のバランスを取る役割の肝の働きもストレスなどから弱っています。
そこで、弱りの部分を見定め、漢方で補っていく考え方です。
弱っている部分は、体調改善によって少しずつ変化しますから、体調確認しながら順に選薬していきます。
5-4精神療法
うつ病の精神療法の考え方は、うつ病の原因であるストレスへの対処法を学ぶことを目的としています。
なぜなら、たとえ症状が治まっても、また同じ環境、同じ考えで生活していくと、うつ病の再発リスクが高まってしまうためです。調子の良い状態を維持することが再発を防ぐ一番の方法です。うつ病治療では、主に認知行動療法と対人関係療法の2つの精神療法を用いています。
5-5栄養素補充療法
病院での保険診療では出来ない方法なので、あまり知られていませんが、病院の処方薬と平行して、漢方薬と併用して進めても経過が良いのが、この方法です。
この方法を取っているうつ症状の患者には、希望者のお薬手帳にも記録して差し上げています。ご覧になった近隣の精神科医は、お薬手帳に記載のある方へは強い薬を減らして処方下さっていますし、薬不要にまで回復しています。
ふだん血糖値の高い方、つい甘いものを食べたくなってしまう方には特におすすめです。
栄養素補充が必要なわけ
元国立栄養研究所の西牟田守先生の数々の論文によると、ひとのからだはストレスがあると、次の尿中に微量ミネラルを排せつしてしまう事が分かっています。小学生が行う100マス計算を健康な大人が行っても、次の尿中に大切なミネラルが排泄されています。
うつ症状が出たり不眠になるほどストレスが続いた体に、栄養素不足があってもおかしくないと思ったのが始まりです。
補充をしている方々は、性格が変わっていくほど元気になっています。
栄養素補充療法のしくみ
病院でしばしば処方される薬剤に、SSRI(選択式セロトニン再取り込み阻害薬)などがあります。これらは言わば、神経伝達物質であるセロトニンやノルアドレナリンの無駄使いを防ぐ薬です。
対して栄養素補充療法は、本来ひとのからだで作っているセロトニンやノルアドレナリンの原料(栄養素)を補充して、その製造自体を戻す方法です。
下の図を見てくださいますか?(図をクリックすると大きく見えます)
これは、みなさんが食べたタンパク質からセロトニンやノルアドレナリンを作る過程です。
どの過程も体の中の酵素反応で進みます。その酵素反応ひとつひとつが進む際に、補酵素であるビタミンやスタートキーになるミネラルが必要です。足りないと、製造できないので不足症状がでます。これらを天然サプリメントを中心に補充します。体調も改善するので、「こんなことで、うつ症状や不眠が改善するのか?」と逆に不安になった方へは、精神科の受診をおすすめしていますが、ほぼ処方薬なしで帰って来られます。
これら精神安定に必要な神経伝達物質の生成に必要なビタミンやミネラルは、糖の代謝に必要なビタミンやミネラルと重なります。そのため糖尿病の方や、甘いものをとり過ぎている方には微量栄養素の補給が重要だと考えています。
6.まとめ
うつ病の原因や対応方法についてお伝えしてきました。
その中でも副作用の少ない漢方薬療法や栄養素補充療法は、薬物治療の最初のステップとして取り入れやすいことがメリットです。
軽症のうつ病の方や「うつ病かも?」と思っていても、薬の副作用の心配から病院に行くことをためらう方も多いと思います。
そんな時は、病院を受診する前に漢方薬局で相談してみるのも一つの手段です。
うつ病は適切に治療すれば治る病気です。できるだけ早く治療を開始したほうがよいと考えられています。一人で悩まずに周囲の方に相談して、早期の回復を目指していきましょう。
笠原健招堂薬局では体調を確認したうえで対応しています。
笠原健招堂薬局:うつ・不眠症への対応へ