2021年「今」もっとも飲んでほしい漢方薬
新型コロナの流行期に、肥満・糖尿病患者の重症化リスクが問題視されました。
また、糖尿病はもともと動脈硬化の病気と呼ばれていて、高血糖が持続することで、脳梗塞・心筋梗塞など血栓性の疾患を引き起こしやすいリスクがあります。
血栓を予防し、かつ出血した時にも有効で、合併症を防ぎ、糖尿病の改善にも役立つ薬があると嬉しいですね。そのような薬は実際に存在し、薬価収載もされています。20年前までは頻繁に処方されていましたが、効果的でかつ予防にもなる高い薬は、医師にとっても患者にとっても便利でした。ところが、予防・保健薬にも使える安全な薬は医療費を圧迫し、次第に保険請求をしてもレセプトが通らなくなってしまっています。それが、薬用人参「紅蔘(コウジン)」です。
かつて日本の著名な医師たちが研究していた研究会が存在していた紅参(コウジン)。独参湯(紅参、コウジン)は、糖尿病の方に対して、このような7つの作用を持っています。
1.からだの血液細胞を使って血糖値を下げる
2.交感神経の興奮を鎮めて血糖値の上昇を抑える
3.膵臓の働きを助ける
4.血栓の予防と改善対策になる
5.糖尿病性腎症の予防と維持に
6.糖尿病性網膜症の維持改善
7.末梢神経障害の進行予防と症状改善に
今回はこのうち、4つめの血栓の予防と改善対策のご紹介をします。
血栓の予防と改善対策に効果的な漢方
紅参が古くから大切に使われていた理由の一つが血栓対応です。糖尿病は動脈硬化の病気であり、全身の血管に血栓を起こしやすい特徴があります。合併症に心筋梗塞や脳梗塞が多いのはそのせいです。
紅参は、古くから脳卒中に使われてきました。江戸時代の古文書にも、発作時に口禁した際の独参湯(紅参)の飲ませ方が記してあります。
血栓に効果があるのは紅参(コウジン)の方
加工方法の違いで高麗人参に白参(ハクジン)と紅参(コウジン)があるのをご存知でしょうか?
お土産にあるような皮をはいだものは白蔘と呼ばれ、比較的加工が簡便で、乾燥したりやそのまま焼酎に漬け販売されています。皮をつけたまま蒸して乾燥したものは紅参(コウジン)と呼ばれ、加工に手間が掛かっています。
この白参と紅参で、血栓に対する作用は大きく違います。血栓の関わる成分を含有しているのは薬用人参の外皮と木部との間の部分で、木部にはほとんど含まれていません。白蔘は加工するときに皮をはぎ取るので、血栓の改善に重要な部分が残っていないのです。
血栓に対する作用があるのは、紅参の方です。
紅蔘は、安全な抗血栓作用薬
循環器に血栓性の障害が出ると、予防・改善を目的として病院からは抗血栓薬が処方されます。読者の中には、飲んでいる方があるかも知れません。
抗血栓薬には、抗凝固薬・抗血小板薬・血栓溶解薬があって、血栓が作られるのを阻止したり(抗凝固薬)、血管の中で血小板が凝集して血栓が作られるのを阻止したり(血小板凝集抑制薬)、出来た血栓を溶かす(血栓溶解薬)ことで作用しています。
ところがこれらの薬には、いずれも重大な副作用として出血があり、併用には、管理を必要とします。
近畿大学久保道徳教授らが研究したところによると、紅参の血栓症に及ぼす作用を研究したところ、抗血液凝固作用と血栓溶解促進作用の両方がありました。薬用人参以外に多くの生薬について検討しても、紅参のように両方の作用を有する生薬は無かったと言います。
この他、江戸時代の文献によると出血した時には大量に飲ませよ。と記してあります。
血栓を溶かすのとは真逆の作用で驚きます。なんと、出血にも血栓にも対応させたと言うのです。先人の経験は、安全性の証明でもあります。
1種類で多機能の薬効がある珍しい漢方です。
血栓症の麻痺後の冷感、しびれ感の改善にも
血栓症が起きないことに越したことは無いですが、血栓症を発症して循環が維持されなくなると組織は壊死してしまいます。循環が維持されていることは組織が維持されるためには必須ですし、1日でも少しでも機能回復するためのリハビリも重要です。ところが、麻痺後の冷感やしびれ感が強いと、機能回復が進みません。
血液が循環するときには、血液中で一番大きな細胞である赤血球が血管を通る必要があります。
血管を通過せずに引っかかってしまうと、その場で血栓になってしまいますからね。
赤血球より径が狭い毛細血管を通過するときは、赤血球は自らのからだを折り曲げて小さくしないと通過できないです(赤血球変形能)。
紅参は、赤血球変形能を改善して循環を改善することで、血栓症を起こしてしまった方の麻痺後の冷感やしびれ感の改善にも役立っていることが分かっています。
紅参には、血栓症を予防し、血栓形成の進行を阻止し、血栓を素早く溶かすという多面性のある作用が認められています。紅参を使った独参湯には、予防にも改善にも使える安全な漢方薬と言えるわけです。
【参考文献】
・薬用人参の抗血栓・抗動脈硬化作用-血小板および血管平滑筋細胞に対する作用―
The GINSENG REVIEW 1994 No.18 p58 千葉大学医学部 第二内科 田村泰
・脳卒中後の麻痺肢の冷感しびれ感に対する正官庄コウジン末の効果
国立循環器病センター 原 斉ほか The GINSENG REVIEW No.6 1988 p31
・薬用人参‘85「血栓症モデル動物と人参サポニン」他多数