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笠原友子

栄養と漢方で糖尿病を健康に導くプロ

笠原友子(かさはらともこ) / 薬剤師

笠原健招堂薬局(有限会社笠原)

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コラム

摂食障害と漢方薬

2021年10月25日 公開 / 2021年10月29日更新

テーマ:薬局店頭相談

コラムカテゴリ:美容・健康

コラムキーワード: 自律神経失調症 治し方漢方薬 効果うつ病 対策

 最近のニュースには心痛みます。

NHKニュースおはよう日本2021.4月コロナ禍で過食・拒食症状が悪化 苦悩する摂食障害患者
2021.10.23読売新聞朝刊掲載拒食症の未成年患者、前年度の1・6倍に…専門家「感染拡大に伴うストレス影響の可能性」

拒食症は、心の問題。カウンセリングや精神科の薬といった解決方法が、まず頭に浮かぶと思います。摂食障害には、漢方薬を使う選択肢もありますので、いくつかご紹介します。

まず摂食障害とは、
食事の量や食べ方など、食事に関連した行動の異常が続き、体重や体型のとらえ方などを中心に、心と体の両方に影響が及ぶ病気をまとめて摂食障害と呼びます。
 摂食障害では、必要な量の食事を食べられない[1]自分ではコントロールできずに食べ過ぎる、いったん飲み込んだ食べ物を意図的に吐いてしまうなど、患者さんによってさまざまな症状があります。
 症状の内容によって、摂食障害は細かく分類されます。代表的な病気に神経性やせ症、神経性過食症、過食性障害があります。
 摂食障害は10代から20代の若者がかかることが多く、女性の割合が高いのですが、年令、性別、社会的、文化的背景を問わず誰でもかかりうる病気です。
摂食障害にかかると、心身の成長・発達と健康、人との関係、日常生活や、学業、職業などの社会生活に深刻な影響をあたえます。やせや栄養障害、嘔吐などの症状によって、身体の合併症を来し、時には生命の危険がある場合もあります。また、別の精神疾患をともなうこともあります。(厚生労働省 みんなのメンタルヘルス「摂食障害」 より)

西洋医学的には、心理カウンセリングや認知行動療法、栄養指導、抗うつ薬や抗不安薬による治療などが行われます。

漢方的には、五臓のうち肝・心・脾の失調と捉えて対応します。

 ストレスが亢進して突然泣き出したり情緒不安定になっている時には肝気鬱結、悩みでつかえて食べられなくなっている時には肝脾不和もしくは脾気虚、のどに物がつかえたようで食べられなくなっているときには痰飲、ものごとを思い悩み過ぎて食べられなくなっているときは心血虚など、時期と症状に応じた漢方を順に選んでいくことになります。

 長引いて拒食症と言われるころには、少なからず気虚つまり五臓のいずれの失調であってもエネルギー不足の状態が生じています。これらの方剤には何らかの補気薬が配合されていることが多いですが、最近の漢方薬はエキス化されたものが多く、エキス化の方法によっては期待する効果がすぐに得られにくい場合があります。そこで世界最高の補気剤とも言われる紅参(コウジン)を少量共に服用することで、ほかの疾患でも効果を上げやすくなりますのでご紹介します。

紅参の中枢神経作用で食行動を調節します。

 それは、日本の著名な医師たちが、かつて日本薬用人参研究会で研究していた漢方薬独参湯(紅参、コウジン)です。もともと、食べ過ぎの生活習慣病や糖尿病に悩む方々のお役に立てる方法を探して、研究会に参加していました。

 肥満・糖尿病の方の中には、拒食症とは逆に食欲が抑えられなくて食べてしまう方々があります。その食欲をどうすればコントロールできるのか?と研究しておられたのが、当時大分大学医学部の坂田利家先生と吉松博信先生です。

 さまざまな変化に対応する体の調節反応は、必ずしもプラス、マイナス、もしくはオンかオフと言った単一のものとは限りません。脳のさまざまな応答系が、からだを一定の状態に保とうとする恒常性維持に向けて働いています。

 研究会の医師たちがこのような働きを調べていくと、紅参の脳内作用には中枢性の恒常性維持作用 が認められています。つまり、食行動や体温調節において、複数の脳内物質や情報処理系を駆使して、エネルギー代謝を一定に維持するようバランスをとっていました。つまり、過食だけではなく逆の拒食に対しても効果を発揮するという事です。
それも、その作用機序は一つ一つの脳内物質によるものではなく、情報処理システムにあるといいます。

例えば、体温と食行動には関係があって、身近な例ですと盛夏に食欲が落ちるようなことで皆さんも経験があるかと思います。

紅参は、体温を一定に保つための適応行動として摂食行動をコント

 紅参は、体温を一定に保つための適応行動として摂食行動をコントロールしています。例えば、手術などの大きなストレスがあったときにも食欲が落ちるのを防いでいて、置かれた環境に適応できるように働いていました。
拒食症の子供たちが置かれたストレス環境の中で、紅参は環境に適応させてくれるのではないかと期待します。

紅参はうつ症状/適応障害の改善にも役立ちます。

古来より紅参には精神を安定させる作用のあることが知られています。その作用の一部は、ヒスタミン神経系を介した作用であり、紅参の脳機能の賦活化には十分な量が脳に到達して作用していることも分かっています。
 大きなストレスが継続したときに、からだも精神も大いに消耗して、からだを常に一定に保とうとする恒常性維持機能が破綻し、うつ病や適応障害と呼ばれる状態に陥ります。紅参を服用していると、適応破綻の緩和作用があり、それは紅参による視床下部―下垂体―副腎軸による緩衝作用であることが示されています。
この作用は、学校になじめず、いじめに遭って自分を守る行動として心が動かなくなった子供たちの役に立つのではないかと考えます。

まずはやる気が出ます

 紅蔘のもつ補気作用を使ってエネルギーを沸かせましょう。少なめの治療量5gは下がった交感神経作用を持ち上げて、やる気を出してくれます。店頭であたたかい紅参の煎じを飲んでいただくと、お顔がほっと和んでやわらかくなるのが分かるほどです。

店頭例を2例ご紹介します。拒食症の例として出すには短期間の方ですがご容赦ください。
1例目は、中学生女子。両親の離婚騒ぎで、一人っ子だったお嬢さんが神経をすり減らし、すっかり眠れなく食べられなくなってしまいました。始まって間もない生理が止まるほどに痩せてしまい、驚いたお母さんが連れて来られました。
もちろん学校にも行けません。店頭でお話を聞きながら治療量の紅参を煎じてのんでいただいた所、質問が全部終わるまでに寝息を立てて眠ってしまいました。爆睡です。家に帰っても飲み始めてからは、少しずつ元気を取り戻し、学校に通えるようになって行きました。

2例目も女性です。
ご本人は拒食症のつもりはなかったのですが、生理が止まって7年間毎月婦人科にホルモン注射を受けに行っておられました。さすがに心配になったお母さまが連れて来られました。紅参を飲み始めると不思議なものですね、まともだとばかり思っていた食欲が湧いてくるようになり、少しずつ脂肪がついて来ました。1年後には、ホルモン注射を受けなくても自発生理が始まるようになっています。

このように、紅蔘は食欲と体重や脂肪コントロールに役立ちます。

参考文献
・厚生労働省 みんなのメンタルヘルス「摂食障害」
   https://www.yomiuri.co.jp/medical/20211022-OYT1T50190/
・中枢神経系に対する人参サポニン
1)摂食中枢に対する人参サポニンの影響
6)向精神作用と人参サポニン
The GINSENG REVIEW No.26 薬用人参の品質の評価―薬用人参研究会15年のまとめ p50-
・反復拘束ストレスのホメオスタシス破綻に対する紅参慢性経口投与の改善作用
  The GINSENG REVIW No.28(2000)p91
大分医科大学医学部第一内科 坂田利家ほか
・紅参の中枢神経作用
The GINSENG REVIW No.23(1997)p13 
富山医科薬科大学医学部第二生理学教室 小野武年
・薬用人参2000p98-99
・うつ病/適応障害モデル動物の高次脳機能に及ぼす紅参の効果 薬用人参‘2000p105-109

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