糖尿病性網膜症の方に漢方薬と栄養素を併用するわけ
患者さまの中に「俺は日曜日になると血糖値が下がるんだ!」というビジネスマンの方がおられました。そこまででなくても、自律神経のうち交感神経は、主に日中に働く神経で、交感神経が亢進して高血糖になっている方は、興奮している交感神経を鎮めてあげないと、血糖コントロールは改善しません。ところが病院で処方される薬の中に、そのような都合の良い薬は見当たらないのが現実です。
そんな交感神経が亢進しやすい糖尿病患者の方に、効果的な漢方薬があるのでご紹介します。
漢方薬の独参湯(どくじんとう)と言います。独参湯は、高麗人参の紅参(コウジン)単味で作られているため、このような名がつけられています。
独参湯(紅参、コウジン)は、かつて日本の著名な医師たちが研究していた漢方薬で、糖尿病の方に対して、このような7つの作用を持っています。
1.からだの血液細胞を使って血糖値を下げる
2.交感神経の興奮を鎮めて血糖値の上昇を抑える
3.膵臓の働きを助ける
4.血栓の予防と改善対策になる
5.糖尿病性腎症の予防と維持に
6.糖尿病性網膜症の維持改善
7.末梢神経障害の進行予防と症状改善に
今回はこのうち、2つめの交感神経を鎮めて血糖値の上昇を抑える作用のご紹介をします。
紅参は交感神経の興奮を鎮めて血糖値の上昇を抑える
紅参は自律神経のバランスを取ります
交感神経が過剰に緊張していると、血糖値や血圧が上がりやすいだけでなく、不眠や便秘などの不調が出やすくなります。 その結果の高血糖なら、自律神経の働きを整えてあげなくてはいけません。
また、過度にストレスがかかったときは、甘いものの過食が副交感神経を優位にさせて、安らぐことを知らずとからだが知っていて、つい甘い食べ物に手が伸びてしまいます。
漢方薬独参湯(紅参、コウジン)は、ちょうど天秤のように上がったものは下げ、下がったものは上げて自律神経のバランスをとってくれます。
不眠の方にも
過度の緊張や興奮で眠れなくなった方にも独参湯(紅参、コウジン)は向きます。
不眠になる原因はさまざまで、睡眠ホルモンであるメラトニンを体内生産する原料不足、つまり栄養素不足で不眠になる方もありますから、精神安定物質であるセロトニンや睡眠ホルモンのメラトニンの原料となる栄養素補給と併用すると効果的です。
過去には、両親の離婚騒動で眠れなくなってしまった中学生を母親が連れてこられたことがありました。店頭で煎じた紅参を湯呑に8分目ほど勧めたところ、症状を質問している間に眠ってしまいました。よほど緊張していたのでしょうね。
また、家族の不幸など、一過性の急なストレスによる不眠の場合は、ドリンクタイプの紅参のお湯割りと栄養素補給がおすすめです。その日のうちに眠れるようになっている方もあります。
漢方処方に配合されることも
紅参ではありませんが、薬用人参を含む漢方処方は、不安神経症、不眠、抑うつ状態など精神状態の改善に使われて来ています。また、更年期障害、不安愁訴、産前産後の神経症など女性に特有の精神疾患の治療にも有効であると認められてきています。
交感神経を鎮める時は少し多めが効果的
紅参は不思議な生薬で、多めと少なめの服用量で、自律神経への働きが若干異なります。
この場合の1回量は、少し多めの5g~3gくらいが安らぎます。
日常生活の中では治療量のドリンクタイプのものが便利ですが、ご家庭で服用される場合は煎じて使うタイプがおすすめです。漢方は「匂いも薬のうち」と言うように、鍋で煎じているときの匂いで安らぎます。煎じたてを口に含むと精神が安らぐのが分かるほどです。
【参考文献】
参考文献
・紅参の交感神経と副腎髄質カテコールアミンおよび高齢者の心機能に対する作用
岩手医科大学歯学部内科 高橋栄司ほか
・紅参の向精神作用―雄マウスの性行動障害を指標として
愛媛大学医学部付属実験実習機器センター 吉村裕之
・薬用人参の向精神薬としての位置づけと作用機序
The GINSENG REVIEW 1989No.7,59-60(ISSN 0288-6537)
愛媛大学医学部薬理学 吉村裕之
・その他多数