糖尿病性網膜症の方に漢方薬と栄養素を併用するわけ
子育て世代の生活習慣病を考えるまちかど糖尿病指導薬剤師の笠原友子です。
今年も地元の成人式で糖尿病検査をしました。
コラム読者の中にはなぜ若者たちの糖尿病を気にするのか?と思う方もある事でしょう。
薬局店頭に20代後半と30代前半の若者が、視力低下をきっかけに糖尿病性白内障が発見されて手術を受け、立て続けに糖尿病の生活指導を求めにやってきたことから始まります。
ほぼ自覚症状なく悪化するのが糖尿病
糖尿病には、比較的若い時期に発症しインスリンによるコントロールを必要とする1型糖尿病と、生活習慣の積み重ねの結果発症する2型糖尿病があります。
今回話題にする糖尿病白内障は、いずれの型の糖尿病でも発症しうるものですが、本コラムでは2型糖尿病を話題にしています。
糖尿病の合併症には様々なものがありますが、糖尿病と言う病気もその合併症も、ある程度年配の方の病気を想像しませんか?
ところが目の前にやってきたのは若者で、それも視力低下でメガネを作り直そうとしたことがきっかけで糖尿病を発見されています。
メガネが合わなくなると言うのは、誰にでも起こりうることです。
それが手術を要するほどの白内障であろうとは、だれが想像するでしょう?
糖尿病と言うのは、検査しない限り発見されにくい病気の1つなのです。
糖尿病白内障とは
白内障は、年齢と共に進行する病気で、軽いものはほとんどの高齢者に見られますが、糖尿病があると年齢以上に白内障は進行しやすく、糖尿病による眼の合併症の1つに数えられます。
眼の中の凸レンズの役割をする水晶体が混濁します。
29歳以下の若者ほど進行が速い糖尿病白内障
糖尿病による高血糖そのものが原因で糖尿病性白内障を発症しますが、進行速度によって2種類に分かれます。
若者がかかるのは急激に進行する真性糖尿病白内障、通常の老人性白内障が合併しているものは仮性糖尿病白内障と言われています。
古い文献ですが、昭和48年に大阪大学から発表された論文によると、29歳以下の場合糖尿病と診断された時点ですでに糖尿病性白内障を発症しているか、もしくは6か月で発症。遅くとも2年以内に3割が糖尿病白内障を合併していました。
白内障を合併するほどの糖尿病には20歳を前後する年齢でかかっています。
なぜ若いと進行が速いのか?
メカニズムは残念ながら十分に解明されていないようです。
「若い女性」に糖尿病白内障の発症確率が3倍高い?
当店に生活指導を求めて来店された方は男性でしたが、若者がかかると言われる真性糖尿病性白内障は、男性と女性のどちらがかかりやすいのでしょう?
日本の古い文献によると圧倒的に女性でした。
まさかと思う気持ちもあって海外ではどうかと見渡してみても、やはり女性の方が急激に進行する真性糖尿病白内障にはかかりやすいです。
キラキラした瞳は、糖尿病性白内障で手術して入れた眼内レンズの輝きだった!
なんてことにならないように、若い女性の間食習慣は肥満を気にする以上に眼にも気づかって欲しいものです。
肥満を気にして食事量を減らし、空腹に耐えかねてお菓子を食べていては、生活習慣病の温床を作る結果になってしまいます。
血糖コントロールが安定しないと手術も出来ない現実
その糖尿病白内障の手術も、高血糖状態が安定しないと手術できません。
合併症のリスクが高くなるからです。
急激に白内障が進むような重度の糖尿病の患者さんは細菌などに対する抵抗力が弱く、感染症を起こしたり傷が化膿するリスクが高く、傷の治りも遅いそうです。
特に、術後の感染症は失明につながる重篤な合併症ですから、手術をする前にしっかりと血糖値をコントロールする必要があります。
「若いから」大丈夫ではなく、「若いからこそ」進行が速い現実を垣間見ました。
初期の糖尿病白内障の10%は改善すると記された古い文献もあります。
最近では薬局でも血糖検査が出来るところが増えましたから、若いからと思わずに、まず検査をして気づくことが第一歩となります。