複雑な肩こり、原因は肩や首ばかりじゃない!デスクワークで肩がこるその犯人とは
目次
はじめに
2025年の冬も、北陸地方は大雪に見舞われる予報が出ています。雪すかしの季節、これを思い返すと腰や肩を痛める方も少なくないのではないでしょう。このコラムでは、雪すかしでこれからだを痛めないためのコツや、痛めた場合の対処法をご紹介します。
痛みは後からくる
雪すかしの後には「遅発性筋痛症」が起こることがあります。これは日頃使っていない筋肉が雪すかしの作業で過剰に働くことで発生します。たとえば、日頃の運動不足や姿勢の問題が背景にあることが多く、気付きにくい事が後々痛みを広げることになりがちです。
雪すかしで痛めやすい筋肉とその作用
雪すかしの動作では特定の筋肉に負荷が集中し、痛めやすくなります。以下は、特に影響を受けやすい筋肉の名称とその作用です。
腰方形筋
:腰椎を安定させ、脊柱の側屈や腰部の動きを補助します。雪を持ち上げたり、ひねる動作で過度に負荷がかかります。
腹斜筋
:体幹を回旋させたり、側屈させる役割があります。スコップで雪を左右に投げる動作で酷使されやすい筋肉です。
腸腰筋
:股関節を屈曲させる主力筋で、前かがみの姿勢を維持するときに働きます。ママさんダンプなどを押し続ける動作で疲労が蓄積します。
ハムストリングス
:太ももの裏側の筋肉群で、股関節の伸展や膝関節の屈曲に関与します。中腰姿勢が長時間続くことで過負荷がかかります。
これらの筋肉を意識し、負担を減らすための適切な動作を心がけましょう。
雪すかしの効率的な方法
雪すかしの効率を上げ、からだを痛めないためには、違う道具を使い分けることが重要です。例えば、「角スコ」や「ママさんダンプ」などを雪量や地面の条件に合わせて選びましょう。ただし、これらの道具は日頃の姿勢により、「雪を押す」「雪を放る」といった動作で筋肉への負荷が変化します。このため、姿勢を要ればこまめな休憩を取り入れることを忘れないようにしましょう。
腰痛を起こしやすい人の特徴
日頃から姿勢や生活習慣に問題がある人、とくに運動不足の人には雪すかしで痛みが出やすくなります。以下は、腰痛を引き起こしやすい特徴です。
足を組む習慣がある人
:片側の骨盤や腰部の筋肉に不均等な負担がかかります。
デスクワークや運転が長時間続く人:同じ姿勢を保つことで筋肉の緊張が慢性化しやすいです。
運動不足の人
:筋力が不足し、負荷に耐えられないことが原因となります。
ストレスを抱えている人
:ストレスが筋肉の緊張を高め、腰痛を悪化させることがあります。
正月太りの人
:体重増加や食生活の乱れが腰に負担をかける要因になります。
降雪が増加する条件と気象要因
降雪量が多くなる条件にはいくつかの要因が関係しています。北陸地方では特に次の気象条件が降雪に影響を及ぼします。
気温
:0℃前後の気温は降雪量を増加させます。暖かい空気が冷たい空気とぶつかり、湿った重い雪が降りやすくなります。
湿度
:高湿度の空気が日本海から流れ込むと、雪雲が発生しやすくなります。
地形効果
:北陸地方の山地では日本海からの湿った空気が持ち上げられ、雪が多く降ります。
寒気の流入
:シベリアからの寒気が強まると、寒波が発生し、大量の降雪を引き起こします。
こうした条件が揃うと、積雪量が増え、雪すかしの負担も増加するため、注意が必要です。
痛みが出たらどうする?
痛みが出たら早期に対処することが大切です。はり治療は筋肉の緊張を解き、血流を改善します。特に次のような経穴(ツボ)がよく使用されます。
腰眼(ようがん)
:腰部の緊張を緩和し、痛みを軽減します。
腎兪(じんゆ)
:腎機能を高め、疲労回復や腰痛に効果があります。
委中(いちゅう)
:膝裏にあるツボで、腰部や下肢の血流を改善します。
陽陵泉(ようりょうせん)
:足の外側にあり、腰から脚にかけての筋肉の緊張をほぐします。
セルフケアのススメ
これらのツボを使った鍼灸治療は、筋肉を緩め、リラクゼーション効果を高めるのに役立ちます。また、自宅では以下の方法でケアを行いましょう。
温活
:入浴や暖房で体を温める。
軽いストレッチ
:痛みが和らいできたら、腰や脚の筋肉をほぐすストレッチを行いましょう。
冬に備えた活動
雪が降る前にも体のケアをしておくことが重要です。突然雪すかしを始めると、筋肉にかかる負荷が容易に起こります。とくに、雨の日や雪の前には、家でテレビ体操をしたり、腰やお尻のストレッチを実施しましょう。日頃の運動習慣を続けることも、この季節の対策となります。
まとめ
雪すかしは腰だけでなく、肩や背中、足など全身に負荷がかかります。あらかじめの準備と正しい動作で、この季節をけがなく過ごせるようにしましょう。体の不調や痛みが出た場合は早めにご相談ください。
具体的な症例を2つ紹介します。
症例1
患者:53歳男性、デスクワーカー
主訴:左わき腹から腰にかけての動作痛
発症の背景
患者は昨晩から降り続いた雪を除雪するため、早朝にスコップを使って作業を実施。雪を持ち上げて投げる動作を繰り返すうちに、作業後ほどなくして左わき腹から腰にかけての痛みを自覚しました。同日は休日でしたが、痛みが強くなったため、当日の午後に鍼灸治療を受けるため来院されました。患者は年末の業務で残業が続き、睡眠不足や食生活の乱れもあり、全身的に疲労感を訴えていました。
診断と治療
障害された筋肉
腰方形筋
:脊柱を側屈させる動作で特に負荷が集中し、痛みの主因と考えられました。
腹斜筋
:雪を左右に投げる動作の繰り返しにより、過剰な緊張が生じていました。
腸腰筋
:除雪中の前傾姿勢の維持により疲労していました。
治療に使用した経穴
腰眼(ようがん)
:腰部の緊張を直接緩和し、痛みの軽減を図る。
腎兪(じんゆ)
:腰痛の改善とともに、全身の疲労回復を目的として使用。
委中(いちゅう)
:腰部および下肢の血行を改善。
陽陵泉(ようりょうせん)
:腰部から脚にかけての筋肉の緊張を緩める。
治療では、鍼刺激とともに温灸を併用し、筋肉の血流改善を図りました。特に、腰眼と腎兪への施術が即時的な痛みの軽減に効果的でした。
経過
施術後、患者は立ち上がった際の痛みが大幅に緩和され、腰を回旋させた際の動作痛もほぼ解消されました。日常生活への復帰が可能となり、患者は自宅での温活や軽いストレッチを指導されました。また、日頃からの運動不足と年末の生活習慣の乱れが原因の一因と考えられるため、生活リズムの見直しも助言しました。
考察
この症例は、デスクワーカー特有の慢性的な体幹筋肉の弱化が、急な肉体作業によって腰痛を誘発した典型例です。特に、雪すかしのような反復動作では、左右不均衡な負荷がかかりやすく、腰方形筋や腹斜筋への負担が顕著でした。本件を通じて、患者は雪すかし前の準備運動と生活習慣の改善の重要性を理解しました。
症例2
患者:40歳女性、自営業
主訴:臀部から腰の中心にかけての痛み、腰が伸びない
発症の背景
患者は早朝、自宅駐車場で車がスタックしたため、スコップで雪を掘る作業を約30分間行いました。作業中、腰を前屈させた状態で雪を掘り続けたところ、臀部から腰にかけて鋭い痛みを感じ、腰を伸ばすことができなくなりました。同日の午後、動作痛が強いため鍼灸治療を受けるため来院されました。
患者は最近、忘年会が続いており、睡眠不足や暴飲暴食が習慣化していました。また、以前から冷え性があり、特に足先の冷えを自覚していました。
診断と治療
障害された筋肉
大殿筋
:臀部の主力筋で、雪かき中の前屈姿勢で過剰に緊張。
脊柱起立筋
:脊柱の安定を担い、腰を伸ばす動作に関与。過負荷により筋肉痛を発症。
腸腰筋
:雪かき時の長時間の前傾姿勢により過剰に働いたと推測。
治療に使用した経穴
腰眼(ようがん)
:腰部の緊張を緩め、動作痛を軽減。
腎兪(じんゆ)
:腰痛および冷え性改善を目的に使用。
承扶(しょうふ)
:大殿筋の緊張緩和を目的に刺鍼。
足三里(あしさんり)
:胃腸の調整および疲労回復を促進。
三陰交(さんいんこう)
:冷え性の改善を図り、全身の血流を促進。
治療では、鍼刺激とともに温灸を併用し、特に冷え性の改善に重点を置きました。また、腰眼への施術による痛みの緩和が即効的に現れました。
経過
施術後、腰の伸展時の動作痛が大幅に軽減し、日常動作がほぼ正常に戻りました。患者は冷え性を改善するための温活(足湯や腹部の保温)や、忘年会後の胃腸を整えるための食事指導を受け、自宅でのケアを開始するよう指導されました。
考察
本症例では、急な除雪作業による腰部の過負荷が直接的な発症原因でしたが、背景には以下の要因が考えられます:
冷え性
:血流不足が筋肉の柔軟性低下を招き、筋肉が損傷しやすい状態だった。
睡眠不足と暴飲暴食
:これにより疲労が蓄積し、胃腸機能が低下して全身のエネルギー循環が悪化していた。
運動不足
:日常的に筋力を使わない生活が、急激な肉体作業への耐性を低下させていた。
これらを総合的に改善するためには、鍼灸治療のみならず、生活習慣の見直しが不可欠です。本症例は、腰痛が冷え性や胃腸機能とも関連していることを示しており、全身的なアプローチの重要性を再確認しました。
さいごに
つらい冬が続きますが日頃の体調管理と疲労を残さないことで不測の事態に備えることができます。できれば降ってほしくない雪ですが、降ってしまうものは仕方がないとあきらめて運動不足解消と頑張って除雪しましょう。ただし、無理な動きは禁物です。お気を付けください。