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たぶん

坂部智子

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テーマ:母の介護

朝、母を起こして、トイレに行く声掛けをする。
だいたいいつも、時間もかける言葉も同じなので、
母も自然な流れで動けることが多い。

「朝よ~」→「ん???」
「起きてる?」→ 「起きとぉ~」のときと、「ふん・・・」のときもある
「おはよう!」 → 「おは・・・」または「ふん・・・」
「起きよっか~」、「ベッド起こすよ~」→ このへんは、ふにゃふにゃ言っている。

ベッドをすっかり背上げして、高さも合わせて(床から38cmぐらい)、
「立てる?」「立つよ~」「ハイッ!」と、立ち上がり、
「さあ、じゃあトイレ行こっか」、「歩ける?」

いつもなら、「歩ける」か、「ふん」と言うところが
今朝は、しばらく黙って、その後ボソッと
「たぶん・・・」と言った。

確かに、やってみんとわからんし、なんともまあ、ナイスな返し。
今までそんな言葉を使ったことがなかったので、うけた。
父にも「・・・これこれ・・・で、たぶん・・・やって~」と伝えて、一緒に大笑い。

そしたら、その後、調子に乗ってか
母が何度も「たぶん」をうまい具合に使うのだ。
なんかまあよくわからんけど、できるかどないかきかれたたことには
「たぶん」と言うとこか・・・という感じ???
まあ、今の母をこれほどぴったりと伝える言葉もないんではと思う。

実際は、もう状況を区別できたり、わかって言葉を使える状態ではない。
しかし、たまに、こんなふうに見事にぴったんこな返答が出てくることがあるのだ。
偶然だとわかっているけど、やっぱりうれしくなる。
二度とは聞けないかもしれない。
瞬間の宝物。

大丈夫。ちゃんと私が覚えとくから。

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