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痛いっ

坂部智子

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テーマ:母の介護

母のショートステイ先から、夜中に電話があった。
ベッドの下でしゃがみこんでおり、血だらけで・・・うんぬん
眉の上が1cmほど切れて、その周りが腫れている・・・
応急処置で止血をして、今はベッドで休んでいる・・・とのことだった。

次の日、ナースが出勤して、縫ったほうがいいのでは・・・と再度連絡があり、
病院へ連れて行った。
連絡してくれてあった、救急外来へ。
どうやって切れたか、実際の現場は誰もみていないのでわからない。
とにかくCTを撮って、そのあと2針縫うことになった。

私らが、迎えに行った時も、車に乗っている間も、雨の中降りた時も
母はずっと、ぼ~っとしていた。
きいても仕方ないのに、こっちもつい「痛い?」、「怖かった?」などと、きいてしまう。
「ん~~??」「ふん・・・」と、気のない返事。

スタッフさんに見つけてもらうまで、どれだけ痛かったのか、怖かったのか
顔も寝間着も床も血だらけで・・・ときいたので、
その中でしゃがみこんでいた母の姿を想像するだけで、涙が出てしまう・・・
痛いともいわず、ぼ~っとしている母が、ある意味救いでもあり、
ここまで何にもわからないのか・・・と心配でもあり・・・

対応してくださったお医者さんには、重度の認知症で質問は理解できない旨を
最初に伝えていたが、私たちが出た後の処置室からは、
これからすることを丁寧に母に伝えてくれている声が聞こえてきた。

「今から傷を洗いますからね。ちょっと痛いですけどね・・・」
次の瞬間「痛っ!!!!!」という母の大きな叫び声が聞こえた。
「痛い痛い痛い痛い・・・・・!!!!」
父と顔を見合わせて、なんか二人で笑ってしまった。
痛くて可哀想・・・という気持ちと、ほっとした気持ちと。
麻酔注射・・・縫合・・・と丁寧に説明し、いたわりながら次々処置してくださった。
「終わりましたよ。大丈夫ですか?」との声に、「びっくりした~!!」と答えている。
やれやれ。
連れてもらって出てきた母は、なんかさっぱりして見えた。

どれだけ気をつけていても、なんか起こることはある。
教訓として防げることは次に生かすし、工夫を重ねることで改善できることもあるだろう。
それでも、一人ひとりちがうし、今日と明日が同じでもない。
そんな中でも、とにかく、その人の「今」に添うこと。
家族だけでなく、支えてくれるたくさんの人たちと、「母の今」に添うことで
たくさんのコトに出会える。向き合える。受け取れる。

処置室での「痛いっ!!!!!」の叫びは、
一瞬でも 母の中ですべてがつながって出た言葉。
なんか・・・きけてよかった・・・とも思ってしまった。

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