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母と娘

坂部智子

坂部智子

テーマ:母の介護

昨日、友人宅を訪ねた。
春にお母さんを亡くし、四十九日が終わって、
少し落ち着いたとのことで、ようやく会えた。

お仏壇のある和室、片付けられた居間、雨に濡れる庭の木々・・・
彼女がお母さんとずっと二人で暮らしてきた家。
持病はあったが、思いがけない急逝だったという。

葬儀やその後のあらゆることを、葬儀屋さんや年長者さんに いちから聞いて教えてもらい、
なんとか取り仕切ったそう。
何も考えられず、ただ側にいたいのに、泣く間も無く 慌ただしく過ぎたという。

少しずつ日常が戻ってきて、変わらない時間の流れ、この空間に
「もういない」ということが、より鮮明になって心を絞める と泣いていた・・・

朝の出勤時はまだいい。
帰り道。
どこからか漂って来る晩ごはんの匂い。
家の玄関を開けた時。
一人で、ササッと食事の準備をし、食卓に座る。
ごはんを食べながら、涙が止まらなくなる・・・という。

いっぱい話してもらった。
泣きたいときは泣こうと
一緒にいっぱい泣いた。

聴きながら、泣きながら、もう心も頭も、ある意味シンクロしてしまい、
私も元気なころの母がずっと浮かんで  
ほんとに、身につまされた。

うちの母は、もちろんまだいる。
けど、
もう、二度と戻らない日々が、
いつもは、全く考えないように、というか、
もう気持ちの上で乗り越えられたと思っていた いろいろな“感傷”が
次々と押し寄せて、止められず・・・まいった・・・・・

介護をしている時、経験談、とくに“見送った”後に書かれたような本は、
あまり見ない方がいい・・・などと自分でコラムにも書いておきながら・・・
ほんとに見事につかまってしまいました。

母と過ごす今のこの時を本当に大事にせな、するぞ と誓って歩いた帰り道。


しかし、
家に帰ると、母は先週続いていた軟便がまたひどくなっており、
いつもの3乗ぐらいのトイレ騒動が勃発。

トイレで拭くにも、ついている量がハンパでないので
だんだんイヤがり、自分の手であちこち触るし、その手を振り回すし、
手に付いたのがイヤなので、私で拭こうとするし・・・ぐちゃぐちゃ・・・

その手を押さえるための手が後2本いる~~と思ったあたりから、
ついさっきの私の殊勝な“誓い”は、どっかに飛んで行った・・・

そして、落ち込み、また開き直る・・・
は~~
きっとこれからも、
こんな日々を繰り返して、積み重ねて行くのやろな

人生いろいろ。
出会い、別れ、生き様がいろいろ。

自分のことを 突き放して見つつ、
なんだかほんとに ちっぽけで、
もう 泣けない。

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