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建築士が考える健康住宅(換気について)

浅井知彦

浅井知彦

テーマ:家を建てるときの新常識

今回のテーマは「健康住宅」。主に、今重要視されている室内の換気について書いていきます。

以前書いたことと重複する部分もあるかもしれませんが、出来れば家を建てる前、設計段階で考えて欲しいことを書いていきます。


居室の換気設備設置は法律で決まっている


2003年に施行されたシックハウス対策に係る建築基準法改正により、居室には換気設備の設置が義務付けられています。

住宅の居室の場合、法律で定められた換気能力は1時間あたり0.5回以上。
つまり部屋の空気は2時間に1回以上、入れ替わることになります。

この法律は、主に室内のシックハウス対策のために定められたものです。

つまり「2時間に1回分の空気の入れ換えが」が、今の社会状況「健康のための換気」に相応しいかどうかは、また別の議論となります。


換気設備設置義務は居室のみ


法律による換気設備の設置については、「住宅の居室」が対象となります。

「居室以外の部屋」たとえば、マンションや建売住宅情報の間取り図で書かれている「納戸」「サービスルーム」などには適用されません。

その部屋が「居室」か「居室以外」なのかについては、窓の面積や位置など、細かい法律上の規定により決まっています。

マンションや都市部の3階建て住宅などでは、「居室以外」を子供部屋や寝室として使うこともあるかと思います。

そのような場合は、居室より「空調環境が悪い」ことが多いので、注意してください。


個別換気と集中換気の違い


戸建て住宅の換気設備には、主に「個別換気」と「集中換気」があります。
換気方式

集中換気方式はメリットもデメリットもある


モデルハウスなどで集中換気を採用している家を見学すると、「集中換気の方が高級な換気方式です」のような説明をされることがありますが、客観的にみると必ずしもそういう訳ではありません。
(集中換気の方が高額になることは確かだと思いますが・・・)

集中換気には、換気設備が1台で済む、高性能なフィルターが使える、などのメリットもありますが、

・部屋毎の換気容量を自由に変えられない

・天井高が下がる

・機器の更新が難しい

などのデメリットもあります。
集中換気
どちらを選ぶのかについては、それぞれの特徴がありますので、設計者とよく相談してください。


換気扇は容量アップしても費用はそんなに変わらない


換気扇については、換気設備の容量を大きくしても、設置費用については大きなコストアップにはなりません。

先程も書きましたが、今の「換気設備設置義務」は主にシックハウス対策のために定められたもので、今の「健康住宅」「感染症予防」のための換気とは、考え方が少し違っています。

たとえば、オフィスの換気についての例では、

・建築基準法による換気回数 1時間に0.3回以上

・感染症対策としての推奨換気回数 1時間に約2回以上
(厚生労働省 令和2年11月27日付 資料より)

となっており、やはり「健康住宅」「感染症予防」のための換気には、容量の大きな換気設備が必要になってきます。

個別換気方式の場合、換気扇の能力を上げることは難しいことではありませんので、換気能力が気になる方は、設計者に相談してみてください。
※集中換気の場合、機器構成が決まっているので、容量アップが可能かどうかはメーカー次第になります。


換気のために後から穴を空けるのはオススメしない


鉄筋コンクリート住宅で「後から壁に穴開け」が面倒なのは当然ですが、木造住宅の場合も壁には「筋交い」などが入っていることがありますので、構造上、後からの穴開けはおすすめしません。

また、換気口を開けた後の「防水対策」などを考えても、特に水に弱い木造住宅では、気をつけなければいけません。

換気計画については、最初から計画しておくのが一番です。

サーキュレーターは換気ではない。エアコンも換気ではない


サーキュレーター
※アイリスオーヤマのサーキュレータ

サーキュレータは室内の空気をかき混ぜているだけです。換気にはなりません。

エアコンも、室内の温度管理と除湿を行っているだけです。空気の入れ換えは行っておりません。

最近は換気機能付の特殊なエアコンも、まれにありますが・・・かなり特殊、一般的ではありません。


昔の家は良かった・・・という訳ではない


昔の家の中には、立て付けが悪く、窓など建具の気密性も低く、結果として「通気性が良い」住宅がありました。

しかし、当然そのような家は断熱性も低くなる訳で、空気の流れ、室内の温度のコントロールが出来ている訳でもありません。

確かに気密性と空気の入れ替わり(換気)は相反する事項です。
しかし、決して「すきま風の多い家」が健康住宅であるとは言えないと思います。

「今の家は閉め切られていて不健康」「昔の家の方が良かった」というのは、物事の一面をみているだけでしょう。

これからの健康住宅では、「高気密」「高断熱」であり、かつ、意識的に換気などの「空気の入れかえをコントロール出来る」ことが良い住宅であると思います。


一気に空気を入れ換えるなら、やはり窓


意識的に一気に室内の空気を入れ換えるのであれば、やはり窓が重要になってきます。

窓には、よく使われる引き違い窓だけなく、風をキャッチする「開き窓」や防犯にも配慮した「上げ下げ窓」「ルーバー窓」などもあります。
窓
※LIXILの断熱窓

窓の形選び、位置選びは重要です。

その地域の風の向きなども考えるべきだし、近隣や敷地との関係、防犯や外部からの視線の問題もあります。

窓の断熱性も大事です。

窓の設計については、建築士と充分、話し合いをしてください。



健康住宅における「換気」とは、「必要なときに」「必要なタイミングで」「迅速に」「必要量で」コントロール出来ることが大事です。

家を建てるときには、建築士とよく相談して、家全体の空気環境を計画してください。


  ◇ ◇ ◇


家を作るときに考えて欲しいことについて、こちらのページに纏めてみました。

テーマ別コラムのまとめ【ペット/寒さ対策/子育て/地震に強い鉄筋コンクリート住宅など】

興味のある分野があれば、是非、目を通して下さい。


 ◇ ◇ ◇


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浅井知彦
専門家

浅井知彦(一級建築士)

レヴォントリ株式会社 一級建築士事務所

素材メーカーで研究してきた技術者としての経験を生かし、鉄筋コンクリート造の住宅を提案。快適な住空間に仕上げるため、デザインありきではなく機能性重視の家づくりを行っています。

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