住んでからわかる失敗、イライラポイントとは【シャワーに関する不満】
今回は、家の設計の初期段階(プランニング)で注意して欲しい、できれば避けて欲しいポイントについて書いていきます。
過去のコラムと重複した内容もあるかもしれませんが、家の構造や施工会社選びにも影響する内容を含みますので、当てはまるところ、気になるところがありましたら注意して頂ければと思います。
◇広すぎる窓
基本的にガラスというは断熱性が低い材料です。
たとえば壁の断熱材としてよく使われる押出発泡ポリスチレン断熱材は、熱伝導率(数値が小さい方が断熱性が高い)が0.03W/m・K程度ですが、ガラスの場合、単体での熱伝導率は1.00W/m・Kです。
材料としての断熱性能は比較になりません。
そのため、窓の断熱性能を向上させるには、中間に空気層を設ける「ペアガラス(ガラス2枚)」あるいは「トリプルガラス(ガラス3枚)」にする必要があります。
ペアガラス、トリプルガラスの断熱性能を、単板ガラス(ガラス1枚)の場合と比較した場合、製品にもよりますが、概算で、
単板ガラスの窓→【2.5倍性能アップ】→ペアガラス→【2.5倍性能アップ】→トリプルガラス
これくらいの性能差があります。
ちなみに、最新の高性能なトリプルガラスの断熱性能は、壁の断熱性能に近い能力を持っています。
もしこのようなトリプルガラスを住宅に使うのであれば、壁一面広いガラス窓を計画しても、快適性に問題無いかもしれません。
しかし一般的に「壁一面の広い窓」に使われるガラスは、単板ガラスあるいはペアガラスであることが殆ど。サッシ枠も特殊サイズの場合、断熱サッシでないことが殆どです(コストの関係でしょうか?)。
リビングなどの居室に、単板ガラスのような断熱性能の低い広い窓を配置すると、冬になかなか暖房が効かず、快適性の低い家になってしまいます。
写真はLIXILのサーモスXという断熱サッシです。
この写真の窓サイズは幅2m×高さ2mくらい。これくらいのサイズがあれば、充分開放感は得られると思います。
サーモスXの場合、サッシ枠の断熱性能が高いので、これに断熱性能の高いガラスを使えば、寒冷地でない限り、実用上問題無いくらいの断熱性能は得られます。
コストと快適性を重視する場合、窓の最大サイズは断熱サッシの最大サイズ程度に留めておいた方が良いと思います。
◇木造でお風呂を2階あるいは3階に作ること
一般的な在来木造の住宅は、鉄筋コンクリートなどの住宅に比べて、地震時、強風時の揺れ幅が大きくなります。
構造計算上、建物に許容される傾き角「層間変形角」については、
鉄筋コンクリート造:1/200以下
在来木造:1/120以下
となっています。
たとえば、2階床の高さが3mの場合、床の動きは、
鉄筋コンクリート造:最大15mmの傾き
在来木造:最大25mmの傾き
となります。
実際、木造住宅は、地震だけでなく、強風時にも結構揺れます。
この「揺れの大きさ、多さ」については、在来木造住宅の家とマンションや鉄筋コンクリートの家、両方住んだことのある方には、実感して頂けると思います。
揺れ、傾き角が大きい木造住宅は、当然、水漏れなどの危険が大きくなります。
また、木造の場合、水漏れによる木の腐食は、安全上、致命的な欠陥になる可能性があります。
木造住宅で、2階あるいは3階にお風呂を作る場合には、以下の点に注意して下さい。
・在来工法のお風呂は避けて、必ずユニットバスを選んで下さい
・水漏れは家にとって致命的になりかねないので、点検口を設けて下さい
・水音が気になることがあります。お風呂の下にはなるべく居室を配置しないよう
にして下さい。
・荷重が重くなるので、床下の構造に注意して下さい
昔の木造住宅では、2階あるいは3階にお風呂を設置することはありませんでした。
ユニットバスの性能が良くなったことで、最近では2階あるいは3階にユニットバスを設置する木造住宅も増えてきています。
ただ、正直なところ、20年、30年という長期耐久性については、まだ未知数です。
「絶対禁止」という訳ではありませんが、長期安全性を重視するのであれば、充分に注意して下さい。
◇木造での広いバルコニー。特にルーフバルコニー。
元々、木造住宅ではルーフバルコニーや建物と一体化したバルコニーというのは施工出来ませんでした。
写真はLIXILのバルコニーです。
木造住宅では施工上、防水が難しいため、このような外付けのバルコニーが一般的だったと思います。
しかし近年、FRP防水の技術が一般化して、木造住宅でも建物と一体化したバルコニーが増えてきました。
また、広いバルコニーが欲しいという要望に応えて、木造住宅でもルーフバルコニーを設置する家が出てきました。
水に弱い木造住宅でルーフバルコニーは大丈夫なのか・・・これについては経過年数も短く、事例数もそれほど多くないので、まだ結論が出ていないと思います。
従いまして、以下は個人的な意見になりますが・・・私はあまりお勧めしたくありません。
FRP防水は強力な防水性能を持っていますが、20年30年・・・とその防水性能が維持されるかどうかについては判りません。
多分、かなりのメンテナンスを行わないと防水性能を維持できないでしょう。
また、前述の通り、木造は「揺れやすい構造」であり、地震や強風で防水が切れる可能性も高くなってきます。
木造の場合、防水が切れ、漏水した場合の被害は甚大です。駆体の安全性まで損なわれる可能性があります。
どうしても広いバルコニーが欲しいという人であれば、リスクを理解した上で、まめにメンテナンスを行って、なんとか維持出来るかもしれません。
しかし、「どうしても広いバルコニーが欲しい人」であれば、最初からルーフバルコニーに向いた構造、鉄筋コンクリート造あるいは鉄骨造を選ぶのが良いではないかと思います。
◇外部に木をそのまま使うこと
日本の気候の中では、木は無塗装なら1年以内、塗装しても2~3年で色褪せてしまいます。
色褪せた木の色は「ウッドデッキ」「色褪せ」のようなキーワードでイメージ検索して頂ければ判ります。お世辞にも綺麗とは言えません。
現代の住宅の場合、外壁や屋根は数年経っても綺麗なまま保たれますので、外部の木の部分だけが色褪せ、そこだけが浮いて見えてしまいます。
そこには古い寺院の古色のように歴史を感じる美しさはありません。単に「古く劣化した」ように見えてしまいます。
住宅の外部、ウッドデッキ、縁側などに木をそのまま使う場合は、1~2年毎に塗り替える必要が有ることを覚悟して下さい。
写真の床デッキはエクステリアメーカー、タカショーの人工木エバーエコウッドです。
見た目は木に近い素材ですが、耐久性は全然違います。
毎年塗り替えることを行わないのであれば、こういった材料を使うことをおすすめします。
◇木造のビルトインガレージ
これについては、こちらにも少し書いています。
【参考】ビルトインガレージ/屋外収納
車のガレージについては内装制限がかかりますので、ガレージ内の内装には不燃あるいは準不燃材料を使う必要があります。
木造住宅におけるビルトインガレージについても適応されますので、ガレージ内には木を露出することは出来ません。
柱や梁を見せたシンプルなデザインのガレージを希望される方は、御注意下さい。
◇広く、天井が高いリビング
開放感のあるリビングについては、設計段階で「断熱性・気密性」「冷暖房」を確認して下さい。
断熱性・気密性の低い構造では、真冬・真夏に辛い思いをすることになりますし、冷暖房費もかさみます。
また冷暖房については、上下方向の温度差が生じないように気をつけて下さい。
冷房についてはエアコンの冷気は下に向かうのでそれほど問題は無いのですが、暖房については床暖房などを使わないと床部分が冷たくなりますので、御注意下さい。
【参考】冬を暖かく過ごすために。
特に「1階2階吹き抜け」のような部屋の場合、設計段階から空調についてよく確認しておいて下さい。
(個人的には「1階2階吹き抜けのリビング」というのは、人の視界を考えても、ちょっとやりすぎな気もします)
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家を作るときに考えて欲しいことについて、こちらのページに纏めてみました。
テーマ別コラムのまとめ【ペット/寒さ対策/子育て/地震に強い鉄筋コンクリート住宅など】
興味のある分野があれば、是非、目を通して下さい。
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