念いが伝わる

宮本博文

宮本博文

テーマ:社長のひとりごと

神戸新聞正平調(せいへいちょう)より

躍動する少年たちの汗と涙。白球と青い空。外の寒風とは裏腹に、劇場のスクリーンには夏のような熱気があふれていた。まばゆい青春の輝きとともに◆台湾で製作され、昨年現地で大ヒットした野球映画「KANO」が兵庫でも公開されている。KANOとは、戦前の台湾から甲子園初出場で準優勝した嘉義(かぎ)農林学校(嘉農)野球部のこと。実話を基に、奮闘躍進を描く◆日本統治下の1930年代の物語で、野球部は日本人、漢民族、先住民族の混成。かつて四国で強豪校を率いた鬼監督近藤兵太郎が、弱小チームをスパルタ式の特訓で鍛え上げ、夢の舞台へと引っ張っていく◆「球(たま)は霊(たま)なり。霊正しからば球また正し」が近藤野球のモットーだ。「野球道」のごとく精神面を重視する一方で、球児らが民族を超え、心を一つにできるようにと、その指導は誰に対しても平等だったという◆植民地時代の話ゆえ、複雑な感情を抱く観客もいるかもしれない。だが嘉農ナインの諦めない粘り強さ、仲間への信頼、監督との絆に目頭が熱くなる。野球の魅力を真っすぐ伝える映画でもある。試合場面の迫力が実に素晴らしい◆今年は、高校野球100年の節目。それにふさわしい感動作だ。2年前の夏の甲子園のキャッチフレーズをふと思い出した。「野球が僕らを一つにする」  

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