「合併症」はやむをえないもの、諦めなければならないもの?
患者さん向けの講演をさせていただきました
先日、第114回COML札幌患者塾で、講演させていただく機会をいただきました。
COMLは、「賢い患者になりましょう」を合言葉に、1990年に活動をスタートしたNPO法人で、現在は東京に事務所があります。私も、このCOMLの正会員です。
COML札幌患者塾は、COMLの活動に呼応して、看護師である代表の中田ゆう子さんが札幌で同様の活動を始めた団体です。
最近、縁あって中田さんとお会いし、講演する機会をいただきました。
私も医療事故(医療過誤)相談で一番多いのは?や医師は万能ではありませんなどのコラムで以前から書いてきていますが、医療事故、医療過誤の相談の中には、医師の説明が悪い場合もありますが、患者側に誤解があるという場合も少なくありません。
誤解で医療事故や医療過誤だと思い込んでしまうということも不幸なことですが、そもそも、病院に受診するときに誤解をなくしておかないと、正しい治療や納得した治療を受けるチャンスも逃してしまう可能性があります。
みなさんは、ほぼすべての人が、患者になる可能性があると思います。
講演では、そんなみなさんに患者として知っておいてほしいと私が思うことを、ご紹介させていただきました。
ここでは、その内容を簡単にお伝えしたと思います。
患者になるみなさんに知っておいてほしいこと
「病院に行けば病気は必ず治るもの」ではない
患者と病院の間の診療契約は、準委任契約といい、仕事の完成ではなく、仕事を委託することが目的の契約です。
ですから、契約上、患者は、医師に対し、病気が治るという結果を求めているのではなく、病気の改善のために最善を尽くすという行動を求めているのです。
お医者さんも万能ではないので、「病院に行けば病気は必ず治るもの」と思わないでください。
「症状を緩和する」と「病気を治す(原因を除く)」は違う
「病気を治す」と一言でいっても、実は、「辛く感じている症状を緩和する」ことと、「病気の根本となる原因をなくす」という2つの意味が含まれてしまっています。
みなさんは、どちらを求めて病院に行っているでしょうか?
おそらく、理想的には両方なのだと思いますが、病院で行われる治療がいつも両方を目的にしているとは限りません。
これも、その治療がどちらを目的としているのか、正しく理解しなければ、誤解のもとです。
ほんの少しでよいので薬のことを理解する
万能薬という言葉はありますが、現実には、万能な薬はありません。
薬は、ある目的のためには薬ですが、人体にとっては異物ですから、違う目でみれば必ず害があります。これが副作用です。
このように、薬というものは、そもそも「害が生じる可能性がある異物」だと思っていただく必要があります。
また、薬は、統計的に効果を確かめたものが使われているだけなので、すべての人に必ず効果があるというものでもありません。
本当はもう少し詳しく知っていただくとよりよいのですが、せめて、この2つくらいだけは薬のことを知っておいていただきたいです。
賢い患者になりましょう
このコラムを読んでいただいたみなさんは、ぜひ、賢い患者となって、正しい治療や納得した治療を受けていただき、誤解による医療事故や医療過誤の疑いをもって弁護士に相談に行くということをなくしてほしいと思います。
なお、COML札幌患者塾さんの講演では、ここで書いた内容よりもう少し詳しい説明をしています。
またいつか、どこかでお話しさせていただく機会がありましたら、ご紹介させていただきます。
今後どこかで、私がこのテーマで講演する機会を見つけたら、ぜひ聞きに来ていただけるとうれしいです。