「合併症」はやむをえないもの、諦めなければならないもの?
先日、茨城県つくば市で、医療問題弁護団・研究会全国交流集会がありました。
年1回、医療事故問題について研究発表などを行う、全国の医療問題に携わる弁護士の交流集会です。
今年のテーマは「術後管理」でした。
手術などをした後、縫合不全により合併症が生じた場合の対応などについて研究発表がなされ、とても勉強になりました。
以前、このコラムで、縫合不全のケースは過失の追及が難しいと書きました。
これは、今回の交流集会でもあらためて確認されていました。
縫合不全自体は、人間の生理的機能が理由で、医師に過失がなくても一定割合で発生してしまうものだからです。
だからといって、縫合不全が生じたケースが、全て過失を争えなくなるわけではありません。
縫合不全が生じることを予想していたかどうか、縫合不全が生じた場合にすぐ対処できるような準備をしていたかどうか、縫合不全が生じたことをすぐ発見できたかどうか、縫合不全を発見した後に直ちに適切な処置を行ったかどうかといった、縫合不全が生じた場合にその後どれだけ適切に対処したかという点で、医師の責任を追及できる可能性があるのです。
一般的な感覚としては、縫合不全があったと聞けば、「きちんと縫合するのが当然であり、縫合不全が起きるのはミスに決まっている」と思いたくなるところですし、そのお気持ちもよくわかります。
ですが、ここにこだわってしまうことは、実は医師に無理を要求するばかりとなってしまい、また、責任追及の可能性を失わせてしまうことにもなりかねないのです。
このように、医療事件では、ポイントとなるべき着目点を適切に見極めれば、責任追及が可能になるという場合もあります。
みなさんも、医療事件で相談される際には、あまり一点に絞って責任追及を考えるのではなく、広い視点をもって考えていただければと思います。