証拠保全か?カルテ開示か?
患者側の代理人として医療事件を数多く手がけていると、「患者の味方」「病院を敵視している」といったイメージをもたれることがあります。
ですが、私は常に患者の味方をするわけでも、病院やお医者さんを敵視しているわけでもありません。
やるべきことをしていない
以前のコラムにも書きましたが、お医者さんは「病気が治るという結果を出す仕事ではなく、病気が少しでもよくなるように頑張ることが仕事」です。
ですから、私が医療事故として病院やお医者さんの責任追及を考えるのは、悪い結果が生じたからではなく、あくまでも「お医者さんがやるべきことをやらなかった」からなのです。
患者の誤解
不幸にも悪い結果が生じてしまった患者さんの中には、「こんなに悪くなったんだから医師が悪い」といって相談に来られる方も少なくありません。
お気持ちはわかりますが、悪くなってしまったのは元々の病気のせいということもあります。
また、日本中のどんなお医者さんが対応しても同じ結果になってしまった可能性もあります。そのような場合は、悪い結果が生じたとしても、お医者さんの責任を問うことはできないわけです。
このような場合、私は、お医者さんの責任追及は難しいと率直に回答します。
こうしてやむを得ないものとご理解いただければ、患者さんは無駄な費用や労力をかけて裁判を起こす必要がなくなります。
それは結果的にその患者さんのためになることだと思います。
病院側も、こうして患者さんから起こされる裁判が減れば、対応する手間や労力、費用を節約できるので、結果として病院やお医者さんのためにもなっていると思います。
まずは冷静にご相談ください
もちろん、悪い結果が発生したからこそ医療事故を疑うのですから、その場合に弁護士への相談を遠慮することはありません。
ですが、悪い結果が発生したからといって直ちに病院やお医者さんを悪者と決めつけるのは早計です。
まずは冷静に弁護士に相談してみて、病院やお医者さんへの責任追及ができそうなケースなのか、よく考えてみていただきたいと思います。
健全な医療者を守ることにつながる
相談の結果、やはりミスの可能性がありそうだという場合には、責任追及できるかどうかを精一杯お手伝いさせていただきます。
そして、このような場合に病院やお医者さんの責任追及の可能性を探ることは、決して病院やお医者さんを敵視することになるとは考えていません。
よりよい医療を実現し、少しでも多くの患者さんを救い、少しでも多くの患者さんが満足するようになるためには、おかしいことはおかしいときちんと指摘すべきだと考えるからです。
それは結局、適切な医療を提供している多くの病院やお医者さんが評価されることにつながり、さらにその結果として、医療者の皆さんの利益にもなると思うのです。
このように、私の医療事件を通じた活動は、「患者の味方」「病院の敵」ということではなく、医療事件を通じてよりよい社会を実現したいという気持ちの現れです。
患者さん側にも、病院側にも、ぜひご理解いただければと思います。