誇大広告と悪徳商法
以前のコラムで、弁護士などの士業のホームページや広告を見るときの注意点を書きました。
広告やホームページが、単なる顧客獲得のための内容となっているのか、それとも顧客にとって本当に有益な情報を誠実に示そうとしているのか、それをぜひ感じとっていただきたいと書きました。
今回は、少し具体的にお話ししたいと思います。
実績=弁護士の腕とは限らない
最近、「債務整理実績1000件以上」や「交通事故で保険会社提示額から数百万円アップ」といった、実績をアピールする広告やホームページが増えたように思います。
こうした実績の表示は、多くの場合は嘘ではないのかもしれません。
ですが、実績が並んでいるからといって「その弁護士の腕がよい」とは限りません。
例えば、「債務整理実績1000件以上」は、依頼者が数多くある弁護士を比較検討してその弁護士を選んだとは限りません。
件数が多いのは、単に「広告が目立ったから」顧客が選んだだけかもしれません。
また、「交通事故で保険会社提示額から数百万円アップ」は、どの弁護士に依頼しても同じ結果が出る事件の依頼を、その弁護士がたまたま受けただけかもしれません。
事件は似ているようで、実は一つ一つ違うものです。
ですから、たまたま一つの事件の結果がよかったからといって、その弁護士の腕がよかったという保証はないのです。
勝訴率を出すときの分母や分子は?
また、実績の表示の方法としては、「勝訴率何%」という表示の仕方もあると思います。
ですがこれも、仮に嘘ではないとしても、負けそうな事件を勝訴させてくれる能力の保証にはなりません。
初めから「負けそうな事件の依頼は受けないことにしていた」のであれば、分母が少なくなります。
そうすれば、必然的に勝訴率は高くなることになります。
つまり、負けそうな事件は初めから受けないというだけのことかもしれないのです。
さらにいえば、例えば裁判で100万円を請求した場合に、1万円でも勝てば、「一部勝訴」という言い方をします。
100万円のうち99万円が認められなかったのであれば、実質的には敗訴のように感じられることもあるかもしれませんが、これも「勝訴」の分子に入ってしまっているかもしれないわけです。
実績を過大評価しないでください
このように、弁護士の実績というものは、単に結果だけ並べてみてもその評価は非常に難しいものです。
これはぜひ知っておいていただきたいと思います。
そしてこれは「弁護士」だけでなく、司法書士や行政書士などの士業全般に共通することだと思います。
士業の広告やホームページを見る際には、この点を注意しながら見てみてください。
なお、以前のコラムでも書きましたが、弁護士に依頼する際の委任契約の「委任」とは、自分がやるべき行動を相手に頼むことです。
結果を出すことを請け負う「請負」とは区別されます。
弁護士は、結果を出すことを請け負うのではなく、「結果が出るように努力する」のが仕事です。
ですから、弁護士の業務については、実績のような結果ばかりを見て評価するのではなく、結果に向けたプロセスを評価していただければと思います。
もっとも、事案によってはどうしても結果を出さなければ意味がないこともあると思います。
そういう場合は、結果を出してくれそうな弁護士を探してみて下さい。
弁護士を探すときの参考になれば幸いです。