医療事故調査制度の利用
当たり前のことですが、弁護士は医師ではないので、医師と同じようなレベルでカルテなどの医療記録を読むことはできません。
私は、一般的な弁護士と比べれば医療記録をかなり読める方だと思いますが、それでも限界があり、正直なところ、医師と同じレベルとまではいえません。
とはいえ、だからといって諦めたりはしません。様々な方法で医学的な調査を行います。
ネットや文献、論文
まず、インターネットや文献、論文などを探してみます。これは、相談の段階でも行いますし、証拠保全の証拠として引用するためにも重要です。医療記録を入手した後の調査としてももちろん行います。
標準的な治療方法を調べたり、検査データの分析をして医師のミスがなかったどうかという観点でももちろん調べますが、それだけでなく、英語で書かれたカルテの記載を把握するために医学用語辞典などを片手に翻訳するということもあります。
第三者医師の意見を聞く
しかし、文献だけでは、実際の医療現場のことがわからないこともよくあります。そういう場合は、第三者的意見を述べてくれる医師に見解を示してもらうこともあります。
こういう見解を示してくれる医師はとても貴重な存在なのですが、そう簡単に見つかりません。
知り合いのつてや、弁護士仲間のつながりで紹介してもらえることもありますが、これはどちらかというとレアケースです。
また、北海道内は医師の世界も狭いため、医師同士の関係上、遠慮なく意見を述べてくれることが難しい場合もあります。
そういう場合のため、正攻法で第三者的意見を述べてくれる医師を探す場合、多少費用はかかりますが、北海道外の医師紹介機関に紹介を申し込むことになります。
意見を求めるだけであれば、概ね数万円程度、高くても10万円程度で意見を述べてもらうことができます(ただし医師への謝礼的な金額であり、弁護士費用とは別にかかる費用です。また、意見書などを作成してもらう場合は別途費用がかかります。)。
どんな弁護士でも調べられるかというと・・・
こうして、医療事故を疑った場合には、様々な調査を経て、医師のミスが認められるかどうか、また、そのミスと悪い結果との間に因果関係が認められるかどうかなどを調査して、訴訟を提起するかどうかなどの見通しを立てるのです。
もっとも、医療事件の経験が少ない弁護士の場合、医師の見解を示されると、その結果をただそのまま鵜呑みにして、ミスの有無を断定してしまう可能性があります。
しかし、ある医師一人の見解だけでは、それが医療水準であるとは限りません。
医師の見解も、文献やその他の情報を総合的に判断して適切に理解しなければ、正しく理解し、利用することはできません。
このあたりが、医療事故事件が難しいとされる理由であり、弁護士にも医学的知識などの専門性が要求される理由です。
医療事件に関しては、どんな弁護士でもよいとはいえず、できれば医学的知識に精通した弁護士、せめて医療事件に注力して熱意をもって取り組もうとしている弁護士が好ましいと思います。