「合併症」はやむをえないもの、諦めなければならないもの?
医療事故を疑った場合、カルテなどの病院の医療記録を入手することが不可欠となります。
証拠保全かカルテ開示か
以前にも書きましたが、医療記録の入手方法には、病院に直接カルテ開示を請求する方法と、裁判所に証拠保全を申し立てる方法の2つの方法があります。
では、どのような場合に、どちらの方法をとるべきなのでしょうか。
基本的には証拠保全
金銭面の負担の大小などをあまり考えなくてよい場合は、改ざんの恐れを考えて、たとえ費用をかけてでも証拠保全の手続をとるべきだと思います。
最近では電子カルテ化が進んだことで医療記録の改ざんも難しくなったといわれますが、改ざんだけではなく、一部の記録を廃棄してしまう可能性も否定はできません。
患者側は医療の素人ですから、廃棄されてしまった記録が廃棄されたのか初めからなかったのか判断することは、はっきりいって難しいです。
ですから、基本的には証拠保全を申し立てるべきです。
こんなときはカルテ開示
もっとも、証拠保全は裁判所を利用する手続ですから、時間もかかりますし、一定の費用がかかることも考えなければなりません。
そこで、費用の工面が困難な場合には、病院に対する直接の開示請求をすることも選択肢となります。
ただしこの場合には、改ざんや廃棄の恐れがあることを十分に承知しておいていただきたいと思います。
また、弁護士に相談をする前に、病院が進んで記録を開示してくるというケースもないわけではありません。
この場合、ある程度の医療記録は既に入手してしまっているため、それ以外に未入手の記録がまだ残っていると考えられるか、改ざんや廃棄した記録があるのではないかと疑われる場合などでなければ、費用をかけて証拠保全を行うまでの必要はないと思います。証拠保全をしても新たに何も手に入らないということもありえますから、証拠保全が必要かどうかはよく考えてみた方がよいでしょう。
このように、基本的には証拠保全をお勧めしますが、場合によっては直接の開示を求めた方がよい場合もありますので、こうした点もぜひご相談いただければと思います。