「合併症」はやむをえないもの、諦めなければならないもの?
お医者さんに対するよくある誤解
以前のコラムで、医療事故相談で一番多いのは、お医者さんとのコミュニケーション不足のケースだと書きました。
この「コミュニケーション不足」という言葉の意味ですが、お医者さんの説明が悪いというお医者さんの側の問題だけを指しているわけではありません。
患者さんが、お医者さんについて大きな誤解をしているということにも一因があります。
その誤解とは、「お医者さんは病気を治すことが仕事」だと思っていることです。
何をふざけたことをいっているんだ!とお叱りを受けては困りますので、もう少しきちんと説明したいと思います。
医師の仕事は結果を保証することではない
わかりやすい表現を使えば、「お医者さんは病気を治すことが仕事」という表現も、必ずしも間違いではありません。
しかし、この表現は極めて誤解を招きかねない表現なのです。
「病気を治すことが仕事」と言ってしまうと、「治る」という結果を出すことが仕事であり、「治るのが当たり前である」と思われてしまいそうです。
ですが、お医者さんは万能ではありません。どんな病気やけがも必ず治せるというわけではありませんし、病気やけがをする前の体に完全に元に戻すということは、はっきりいって不可能です。
だから、お医者さんの仕事は、「治るという結果を出す」ことではなく、「病気が少しでもよくなるように頑張る」ことなのだと理解するのが正しいのです。
お医者さんを正しく理解しましょう
私たち患者の立場にある一般市民は、お医者さんに診てもらうとつい「苦しい状態を完全に治してもらえる」と思いがちです。
苦しい思いをしていればそこから逃れたいと思うのが人間ですから、ある意味やむをえないことではあります。
ですが、「治る」という結果を求めてしまっては、お医者さんに不可能を強いることになります。
そしてそれは、結果として、一生懸命対応してくれているお医者さんを悪く見てしまうことになり、お医者さんとの良好なコミュニケーションを阻害する要因ともなってしまうのです。
お医者さんも決して万能ではないということ、お医者さんにもできることとできないことがあることを正しく理解しておけば、病気やけがになったとき、より前向きな気持ちを持つことができるようになると思います。
この「医師は結果を出すことが仕事ではない」ということは、ぜひ覚えておいていただきたいです。
本当に医療過誤であることも
もちろん、実は、お医者さんが見落としをしたり、誤った判断をしたりしている可能性もゼロではありません。
ですから、お医者さんが病気が少しでもよくなるように頑張ってくれていると思ってお付き合いしていても、それでも疑問に思うような場合は、ミスをしている可能性もありえますので、そのような場合は、ぜひ弁護士に相談してください。
もちろん、医療事故、医療過誤の相談は、どの弁護士でもよいということではないので、なるべく医療事故事件に意欲をもって取り組んでると思われる弁護士に相談していただきたいと思います。