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相続・贈与・売却で“金(ゴールド)”にかかる税金を完全網羅 ~知らなきゃ損する課税ポイント

岡﨑正毅

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テーマ:税金

はじめに  金は換金性の高い「課税財産」

金価格の高騰をきっかけに、「昔買った金を売ろうかな」「相続した金を換金したい」と考える人が増えています。でも同時に、こんな不安も聞こえてきます。
   ・金を売ると税金がかかるの?
   ・いくらから申告が必要?
   ・税務署にバレるって本当?
そこで、個人が金地金や金製品を売る時の税金の仕組みを、できるだけ分かりやすく整理します。

金(ゴールド)は現物資産ですが、税務上は換金性の高い「課税財産」です。生活用動産は非課税ですが、金(ゴールド)は生活用動産に該当せず、通常課税対象になります。
したがって、相続で受け取れば「相続税」、贈与で移せば「贈与税」、売却して利益が出れば「所得税・住民税」の対象になり得ます。
特に見落とされがちなのが、売却益の申告です。金価格の上昇で含み益が大きいほど、課税リスクも大きくなります。

金(ゴールド)に関係する税金の全体像  相続税・贈与税と譲渡所得の二段構造

金にかかる税金は、場面ごとに税目が変わります。

   相続は 「財産を取得したこと」への 相続税です。
   贈与は 「無償で受け取ったこと」への 贈与税です。
   売却は 「値上がり益」への 譲渡所得(所得税・住民税)です。

相続税や贈与税を払っていても、売却時に利益が出れば別途、譲渡所得としての課税関係が発生します。相続・贈与は取得課税ですが、売却はキャピタルゲイン課税なのです。二段構造になっております。
ここを一体で設計しないと、相続対策としてのつもりが、売却時の税負担で想定が崩れることがあります。

相続で金を受け取るとき  評価と申告の基本

相続税では、相続開始日(死亡日)の時価で金を評価します。
評価の基準は、市場実勢を反映する公表価格や取引相場を根拠に、重量・純度・形状(インゴット、金貨、アクセサリー等)を踏まえて算定するのが一般的です。
相続税には基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人)があり、超える場合に申告が必要になります。 申告期限は、原則、相続開始日(死亡日)から10か月以内です。

一般に現物の金(ゴールド)の所有は、被相続人のみが知っており相続人らが知らない場合が多かったり、また保管場所が分散していたりして、金の所有や数量等の把握・確定が遅れるケースが少なくありません。
相続発生後は、数量、重量、純度、取得経路が分かる資料(購入明細、鑑定書、保管契約、写真)を早めに集めておくと、申告の精度が上がります。

相続した金を売却した場合  「相続税」と「譲渡所得」は別の話

相続時に相続税を納めたのに、売ったらまた税金なのかという疑問は多いです。
ただ、相続税は「取得」に対する税、譲渡所得は「値上がり益」に対する税で、課税のタイミングと対象が異なります。
相続した金を売却して利益が出れば、譲渡所得として確定申告が必要になる可能性があります。相続税申告書に金(ゴールド)を計上し申告していても、売却益の申告が自動で済むわけではありません。あくまでも別の税目です。

相続で取得した金(ゴールド)を売却した時、相続後に値上がりしていれば、その増加分「値上がり益」が課税対象になるのですが、この場合、取得費の捉え方が重要になります。
相続で取得した場合は、取得費と取得年月日は引き継ぎます。つまり、 相続開始日(死亡日)の時価は相続税申告の評価額であって、譲渡所得を計算する時は、被相続人が購入した時の価額と年月日になります。
したがって、 相続税の時価が1g2万円であっても、被相続人が購入した時が1g5千円であれば、この1g5千円と売却した時の差額が「値上がり益」になるのです。

贈与で金を渡すとき  暦年課税と相続時精算課税の選択

金を贈与した場合、原則として受け取った側に贈与税の申告義務が生じます。
暦年課税では、年間110万円の基礎控除を超えると課税されます。
相続時精算課税を選ぶと、一定額まで贈与税がかからない一方、将来の相続時に贈与分が相続財産に合算されて精算されます。
金のように価格変動が大きい資産は、贈与する時期で評価額が変わり、結果的な税負担が変わります。
また、贈与の事実を示すために、贈与契約書、引渡日、評価根拠、保管方法の変更など「名義だけでなく実態が移った」ことを残すのが大切です。

金を売却したときの税金  総合譲渡所得と特別控除50万円

金(ゴールド)を売っても、すぐ税金がかかるわけではありません。
まず大事なポイントは、「売った金額」ではなく「売却して得た利益(儲け)」が課税対象になります。税金の計算は、「売った金額」-「買った金額」=利益(儲け)で、この「利益」が譲渡所得に該当します。
したがって、「50万円で売った」「100万円で買い取ってくれた」という売却額そのものではなく、「利益がいくらか」「儲けがいくらか」が判断基準になります。

さて、金(ゴールド)の売却益は「総合譲渡所得」に分類されるのが基本です。
そして「総合譲渡所得」には、譲渡所得を計算した上で、年間の総合譲渡所得から「特別控除50万円」を差し引き、残った部分が課税対象になります。
つまり「特別控除枠50万円以内なら税金がゼロになり得るが、超えると課税対象」という理解が、実務上のポイントです。 年間の利益が50万円以下ならば、税金はかからず、申告も不要というケースがとても多いのです。
なお、少額売却を複数回行っても、年間の合計額で判定する必要があるため、取引の通算管理が欠かせません。

譲渡所得の計算  取得費・譲渡費用・保有期間で結果が変わる

譲渡所得は、概ね「売却価額」-「取得費+譲渡費用」=「譲渡所得」で計算します。
取得費は、購入代金だけでなく、購入時の手数料等が含まれる場合があります。
譲渡費用は、売却手数料、計量・検査費、発送費など「売却のために直接要した費用」が該当します。
取得費が不明な場合に「概算取得費(売却価額の5%)」を使えることもありますが、利益が大きく算定されやすく不利になりがちです。
購入明細や取引報告書、請求書、振込記録を保管して、実額での取得費を立証できる状態にしておくのが安全です。

また、金(ゴールド)をどのくらいの期間持っていたかでも、税額が変わります。
保有期間が5年超かどうかで短期・長期の区分が変わり、税額に差が出ることがあります。
売却の年の1月1日時点で、「5年以下」→「短期譲渡」。「5年超」→「長期譲渡」に区分され、 長期の場合、課税対象は利益の1/2になります。
例えば、20万円で買った金を100万円で売った場合、利益は80万円。特別控除50万円を引くと、30万円が所得になります。この30万円について、短期譲渡の場合は30万円全額が課税対象になり、長期譲渡の場合は1/2の15万円だけが課税対象で税額もほぼ半分となります。つまり、長く持っていた方が、税金はかなり軽くなる仕組みです。
相続で取得した場合の保有期間の数え方は論点になりやすいため、売却前に判定を確認しておくことをお勧めします。

確定申告が必要になりやすい典型例  相続後・贈与後の換金

相続で受け取った金を納税資金に充てるため換金するケースは多いです。
このとき、相続税申告をしたから売却も申告済みと誤解し、譲渡所得の確定申告が漏れることがあります。
贈与で受け取った金を売却した場合も同様で、売却益が出て特別控除50万円を超えるなら申告が必要になり得ます。
給与所得や不動産所得・事業所得等がある方は、譲渡所得が合算されることで税率帯(累進課税)が変わることもあるため、売却の前に概算税額を確認すると資金繰りの見通しが立ちます。

売却が「反復継続」になると話が変わる  譲渡所得ではない

注意したいのは、何度も金(ゴールド)を売買している場合です。
   ・毎年・年に何度も金を売買している
   ・相場を見て買ったり売ったりしている
   ・売るために金を買い足している
   ・利益が生活費や主な収入源になっている
――等々。この場合は、譲渡所得ではなく、雑所得や事業所得とされ、
   ・50万円の特別控除は使えない
   ・長期の「1/2課税」も使えない
ということで、税負担は一気に重くなります。

重要なのは、「何回売ったか」ではなく、実態として“儲けるための取引かどうか”で判断される点です。とはいえ、
   ・相続や贈与で取得した金を売った(相続財産の換価)
   ・昔買った金を数回にわたり売った(生活資産の整理)
といった、単発の売却や財産処分の一環であることが明らかであれば、通常は問題になりません。

税務署はどうやって知るの?  把握できる仕組みがある

金(ゴールド)は現物で保有できるため、申告されにくい資産だと見られがちです。
しかし、特に最近は、金価格の高騰等を受け、
   ・金・貴金属
   ・暗号資産
   ・株以外の投資商品
これらの「投資性のある個人取引」は重要チェック対象になっており、税務署は情報収集を精力的かつ重点的に行っております。

「個人の売買なんて、税務署に分かるのか?」という疑問は確かに多いのですが、結論としては、税務署は「全部は知らないけど」、知ろうと思えば“かなりの確率で分かる仕組み”があります。主なルートは、次の通りです。
   ・金(ゴールド)買取業者の取引記録
   ・銀行口座への入金履歴
   ・他の税務調査(相続・不動産など)からの派生
   ・第三者通報(関係者からのタレコミ)
このようなルートから金等の売買取引が把握され、疑義が生ずれば、税務署から「お尋ね」や税務調査の連絡を受けることになります。
大事なのは、隠すことではなく、聞かれた時に説明できるかどうかです。

税務調査で見られやすいポイント  買取店の取引履歴と資金移動

税務署が、金(ゴールド)の取引でチェックするのは高額取引と反復取引です。特に
  ・100万円超  ・何度も売却  ・同一人物が複数回来店  
――はチェックされます。
そして、業者記録と口座の動きが一致することが多いので、まず買取業者からの情報把握と銀行口座の入出金履歴を確認します。
買取業者は、本人確認情報や買取伝票、取引履歴(日時・金額・氏名)を保存しており、税務調査が入れば提出義務があります。つまり、税務調査が入れば“芋づる式”です。「売った記録は表に出ないはず」と考えるのは危険です。

現金で収受しても、大抵は銀行口座に入金します。そこで、税務署は過去数年分の口座履歴を丸ごと見て、資金移動を確認します。
「じゃぁ銀行に預けない。現金ならバレない」は幻想にすぎません。現金は使った瞬間から痕跡は残ります。税務署は使途不明金を徹底的に洗い出します。

税務署は、売買記録、売却代金の入金、口座の動き、高額現金の出入金、他の資産売却との整合性、生活水準・生活ぶりなどから総合的に判断するのです。
申告漏れが指摘されると、本税に加えて過少申告加算税や無申告加算税、延滞税が課される可能性があります。意図的だと判断されると重加算税のリスクもあります。

タレコミは レアであるけどゼロではない

実は、税務署が把握する情報の中で、いわゆるタレコミ(第三者通報)は少数派。圧倒的に税務申告や支払調書、資料せん(取引状況等の照会)等に基づくデータの選定、あるいは税務調査からの派生が大半です。「誰かが密告してくる世界」ではありませんし、奨励もしておりませんが、それでもそれなりの質と数があります。全体の数%レベルですが、刺さると一発で調査・追徴に発展しやすいのがタレコミの怖さです。

タレコミ(第三者通報)を無視できない理由は、下記の通りです。

理由①:ピンポイントで来る
タレコミは、だいたい「○年頃から金を何度も売っている」「○○の買取業者を使っている」「現金収入があるのに申告していない」といった具合に具体的で裏取りがしやすいものが多いのです。税務署からみれば、「調べたら(税金が)取れそう」という案件になるのです。

理由②:身近な人が多い
タレコミをしてくる人の多い順は、次の通り。
  1.元配偶者・別れたパートナー 
  2.家族や親族(特に相続絡み)
  3.共同経営者・元同僚
  4.近隣・知人トラブル
――完全な赤の他人は少ないです。

理由③:負の感情が動機
タレコミの背景には、だいたい「金銭トラブル」や「離婚・相続争い」「あいつだけが得している」「痛めに合わせたい」といった、正義感よりも負の感情に基づくもの多い。

税務署は「タレコミがあったから、即調査」ではありません。タレコミ内容の信ぴょう性や他の情報やデータとの照合により、“筋”(取れそう・多額・否認できる)が通れば調査に着手します。したがって、レアではあるけどゼロではないということです。

まとめ  金は「取得時の税」と「売却時の税」をセットで考える

金(ゴールド)は相続税・贈与税の対象になり得るだけでなく、売却時には総合譲渡所得として課税関係が生じます。特別控除枠50万円を超えると課税対象になり得るため、売却益の試算、取得費・譲渡費用の証憑整理、保有期間の判定が重要です。

  ・個人の金(ゴールド)売却は、原則「譲渡所得」(所得税・住民税)
  ・課税対象は売却額ではなく売却益(値上がり益)の額
  ・売却益から50万円控除があり、多くは非課税
  ・5年超保有ならば税負担はほぼ半分
  ・反復継続・営利目的ならば雑・事業所得に
  ・税務署は「実態」と「説明可能性」を見る

金(ゴールド)を売ること自体は特別なことではありません。通常の経済行為です。
ただ税務上においては、どういう性質の取引か、説明できるか――そこがポイントなります。落ち着いて仕組みを知り、必要な対応をする――それが一番の安心材料です。

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岡﨑正毅
専門家

岡﨑正毅(税理士)

岡﨑正毅税理士事務所 岡﨑麻美社会保険労務士事務所

経営者や個人のさまざまな悩みに応え、社会保険労務士とタッグを組み、手厚いサポートを実現。税金に関することや、経営・経理の悩みのほか人事・労務に関する諸問題や、年金の相談などにも幅広く対応。

岡﨑正毅プロは北海道テレビ放送が厳正なる審査をした登録専門家です

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